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オカルト科学"界"の僕と多次元魔法"海"の私  作者: 坂水 雨木
第一章(蒼海星)、雪の季節と海上同棲生活の変化。
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第十五話、異種族コミュニケーション。

 青い海、灰色の空。降りしきる淡雪、立ち昇る白煙。煌めく白金色の髪。そして眼下に異常な大渦。


『――いやこれはおかしいでしょ』


 ついツッコミを入れてしまった。

 しかし僕は間違っていないと思う。


 大きな渦、渦潮。大きさは目測で軽く数十メートルという代物だ。ぐるぐると回転し海の水を巻き込み、海面に穴を作っている。

 異常なのはそれだけでなく、穴の底が見えないことだ。雪雲を透過して降り注ぐ太陽光に加え、渦潮の中を照らすマリテュールの光。光の先を辿り、穴の上から真下を見つめても海底まで目が届かない。というより、煙のせいで全然見えない。


『なんで海上まで煙が上がって来てるのさ。どう考えてもおかしいでしょうよ』

『シー。ジンゴ、この渦潮は魔法術により作られています』

『あ、そうだったね』


 魔法術って、便利だね。


「さすがにこの量と勢いは私も予想外ね……」

(都市課に連絡入れようかしら……。この雲ならクゥレさんも満足してくれるでしょうし、さっさとここまでの道作った方がいいわよね)


 おっと、そういう流れか。そういえばそんなんだったかも。

 クゥレさんは十七都市上空にいるから、ここまで来てもらわなきゃいけない。海上すべてに雲があるわけでもないので、雲のかかっていないところは魔法術でどうにかしてクゥレさんが渡れるようにする必要がある。海底火山の上空に上手く海水混じりの粒子が行ったらクゥレさんを呼ぼう、という話の流れだったはず。


 問題はクゥレさんがこの雲を気に入るかどうか。まあそこは実際に聞いてみないとわからないので、とりあえずここまで来てもらおう。


「――はい、お願いします。私も今からそちらに向かうので、雲のない場所に魔法術を……はい、はい……ありがとうございます。……了解しました。はい、失礼します」


 ブレスレットで電話を一本入れ、軽く息を吐いて空中に留まる。

 風に靡く髪が相変わらず美しい。少々憂いのある表情も魅力的だった。


「ツィヤさん、聞こえていますか?」

「はい、聞こえています」

「よかった。これからクゥレさんのいる十七都市に向けて移動しますので、ジンにも付いてくるよう伝えてくださいませんか?」

「はい。伝えます。しかしジンは伝えずともシィステラ様に付いて回ると思われますよ」

「ふふ、ええ、そうでしょうね。ですがせっかくジンのことを私が知ったのですから、私からちゃんと意思を伝えておきたかったんです」

「はい。なるほど、了解しました。その旨も伝えておきましょう」

「はい、お願いしますね」


 手首のアクセサリーを揺らして微笑むリィムさん。いったいどんな話をしているのだろうか。会話に混ざれなくてもいいから聞き取りだけできるようになりたい。求む、リスニング能力。


『ジンゴ、シィステラ様があなたにお礼を言っていました。また、十七都市に向かうため付いて来てほしいとのことです』

『そっか。じゃあアンカー付けとくよ』

『シー。もう一つ、シィステラ様自身がジンゴの存在を喜ばしく思っているようです』

『……えっと?』


 どういう意味だ、それ。


『シー。シィステラ様の言葉を直接伝えましょう。"せっかくジンのことを私が知ったのですから、私からちゃんと意思を伝えておきたかったんです"、と言っていました』

『それは……ふふ、リィムさんらしいなぁ』


 言葉の意味に理解が及んでむずがゆい気持ちになる。

 船上の麗人を見やると、機嫌良さそうに束ねた髪が揺れていた。表情も普段より幾分か柔らかく見える。ご機嫌リィムさんだった。


 隣でピカピカ光っているツィヤに礼を告げ、リィムさんの傍に行く。

 アンカーをセットしこちらの準備も完了したことを伝え、船を出してもらう。


 風を切って進む短い船旅の始まりだ。

 海風に靡く白金色が眩しい。


 壁も屋根もない船は吹きさらしであり、当然船室もないので雨風を直接浴びるはめになる。ただしそこは異世界。魔法術のバリアか何かで一定以上の雨風――今は雪風だが――は防げるようになっている。通り抜けるのは涼やかな冬の風だけだ。


『――ジンゴ』

『うん、何?』

『シー。あなたの住む世界の話を聞かせてください』

『あー。いいよ、今は完全に待ち時間だからね』


 風の影響も雪の影響も一切受けない僕らは船のすぐ傍上空を飛びながら話をする。

 共星種であるツィヤから尋ねられたのは僕の世界についてだった。元々彼は僕の世界を知るために世界の狭間まで来たのだから、余剰時間があれば聞いてくるのは当然だ。彼からはレメイラについて色々と教えてもらっているし、僕程度に答えられることならいくらでも答えよう。


『シー。ありがとうございます。それではまず――』


 投げかけられる質問に考えながら答えていく。

 科学を基礎にした機械文明、歴史、宗教、文化、日本のこと。そしてオカルトについてのアレコレ。

 ツィヤが特に興味を持ったのは日本を含めた世界中の国々の歴史とオカルトについてだった。情報集めとして歴史を気にするのはわかるが、オカルトはどうしてと思ったら、今までの世界でそんな不可思議なモノは存在しなかったとか。やっぱ怪異って意味不明だわ。


 ほどほどに話も弾み、十五分ほどは時間も経ったところで上空におかしな雲を見つけた。

 船で進んでいると上空は雲が八割、青空が二割という塩梅であった。ところどころに晴れ間が見え、後はすべて分厚い雲に覆われているという状況。戻って前方上空、積乱雲――とまでは言わないが、綿菓子か崩れたソフトクリームのようにもくもくと膨れた雲があった。


『ツィヤ、リィムさんにあの雲が怪しいって伝えてもらえる?』

『シー。お任せを』

「シィステラ様、目前の雲からクゥレ様の気配を感じるとジンが言っています」

「そうです、か。私も少々不自然だとは思いましたが……やはり精霊と私とでは感知できるものが異なるようですね。ツィヤさん、どうしましょうか。私も雲の中まで行った方がよいでしょうか?」

「はい、いいえ。シィステラ様は雲の近くに船を停めてお待ちください。わたしとジンで確認してきます」

「わかりました。お気をつけください」


 ツィヤから話を聞いて雲に突入することになった。リィムさんは留守番だ。いくら魔法使いだからといって、わざわざ視界の利かない雲の中に入ることはない。大気の影響も受けない霊体の僕らが行くべきである。


 大きな雲に入って数分、都合三度目となる道案内は変わらずツィヤに任せていた。

 全方位を白い靄で囲まれた場所にて、宙を滑っていた身体を止める。


【ジンゴとツィヤか】

『こんにちは、クゥレさん』


 甘い声が耳を震わせる。

 脳に直接響くようで、鼓膜を揺らしているようでもある。高次元の生き物だと言うツィヤの言葉が正しく思えてしまうような声だった。ただし声質は少女的で舌っ足らずだが。


『クゥレさんはどうしてここに?これから呼びに行こうと思っていたのですが』

【むぅ……あれだけ美味しそうなのがひろがっていればすぐわかる。あのもくもくはおまえたちのしわざだろう。ジンゴ】

『もくもく?』

【へんなくものことだ。きゅうにひろがって大きくなったやつ】

『雲ですか。確かにそれは僕らの仕業かもしれませんね』


 クゥレさんと直接話してきたのは基本僕だったので、今回もそこは変わらない。

 声が聞こえるだけで姿形は一切見えずわからないが、それはいい。重要なのはやはり今ここにクゥレさんが来ているということ。話を聞いた感じ、僕が説得するまでもない気はする。


【どうやってあんなのつくったんだ。われにもできないぞ】

『ふむ、できないんですか?』

【嘘ついた。できる。われにできないことはないから】


 なんだろう。声のせいか話し方のせいかクゥレさんが可愛く思えてくる。この人、ちょろいぞ。


『そうですか。別になんでもいいんですけど、クゥレさんどうやってここまで来たんですか?』

【?ふつうにくもをわたってきたよ?】

『途中で雲途切れていたりしませんでした?』

【うん。してた。してたけど、迂回したりいきなりくも集まったりしたからこれた』

『……なるほど』


 雲が集まったって。それ、絶対魔法術でしょ。


『クゥレさん。急に雲出来たのって、たぶん人間たちのおかげですよ』


 まるで自分が人間じゃないかのような言い様だけど、今の僕は霊体で精霊だからよしとしよう。


【なんでにんげんが?】

『クゥレさんが街の上陣取ってたからどっか行ってほしかったんですよ』

【そうなんだ……われ、じゃまもの……】


 声がしょんぼりしてる。どうして僕が悪いこと言ってる気分にさせられるんだ。根本的に悪いのは――……いや、クゥレさんも悪くないか。この人だって自然の流れに乗ってやってきて、人がいるのなんて知らなかったんだから。今回の件に誰も悪い人なんていない。悪意なんて欠片もない、すれ違いで生まれただけの出来事なんだ。


『……いえ、邪魔者じゃないですよ』

【……でも、おまえ。われがどっかいけばいいって】

『そこまでは言ってないです。それに、僕はクゥレさんと一緒にいて話していて楽しいですよ』

【……ジンゴ】


 声音が戻った、ような気がしないこともない。


【おまえ、われのことすきなの?】

『え?うーん、まあ嫌いじゃないですよ。異世界の知らない種族と喋るのって楽しいじゃないですか』

【そうか。……われのことすきなのか……】


 この人、話聞いてるのかな。


『ねえツィヤ、もしかしてクゥレさんって結構幼い?』

『シー。どうでしょう。粒子雲霊種の年齢に関して知識はありません。しかし言葉遣いや会話の内容から類推するにジンゴの言う幼いに該当する可能性は高いかと』

『まあそうだよね。そんな雰囲気だもんね』

『シー。肯定します』


 小声でツィヤに聞いてみたらおおよその肯定が返ってきた。


『とりあえずクゥレさん、僕らが作った雲のところまで行きましょうか』

【うん、いいよ】


 いつまでもここに留まっている意味もないので、話は適当に切り上げてリィムさんの下へ戻る。

 クゥレさんとの話がまとまったことを伝え、船を反転させて例の雲があるところへ向かう。逆走にまた十五分だ。


 途中でリィムさんが電話していたが、ツィヤに聞いたら十七都市と連絡をしているとのこと。クゥレさんが街の上からいなくなったこととか、魔法術による雨雲の作成をしてくれてありがとうとか。そんなお話をしていたらしい。


 僕からは色々ありがとうと伝えさせてもらい、水人形を作って船に乗せて手を振った。そうしたら微笑んで頭を撫でてくれた。なんだ、女神か。


 平和な時間が過ぎるのは早いもので、一瞬にして三十分が過ぎた。

 クゥレさんは船より移動速度が遅く、そちらに合わせていたら二倍ほど時間がかかってしまった。問題はない。僕はリィムさんと一緒で平穏で幸せだった。


 海底火山の直上に戻ると、離れる前と変わらない光景が迎えてくれた。

 天上に広がる濃い雲と立ち昇る白煙。あと大渦。


 空を飛び雲に飛び込み、クゥレさんのところへ行く。これでもう四度目。僕も慣れたものだ。


『クゥレさん、居心地はどうですか?』

【わるくない】

『そうですか。じゃあこれからはここを新しい家にしましょう』

【……ジンゴ、われはしってるよ。あの渦はずっとそのままじゃないだろう】

『……まあ、そうでしょうね』


 痛いところを突かれた。

 リィムさんから話を聞いたからわかる。あの大渦は永続的なものじゃない。もちろん魔法術をかけ続ければ別だけど、定期的にここまで通うとなると結構な手間だ。


 魔法術のレベルもこの規模の大渦ともなれば結構高いらしく、使える人も限られてくるとか。リィムさんソベルトさんミィルクさんは、その点かなり使える側の人らしい。だからこそこの場に来ているとも言えるわけだが。

 とにもかくにも、レメイラの人が大渦を月単位、年単位で維持するのは大変だということ。じゃあどうするか。そんなの決まってる。


『――クゥレさん、知ってますか?』

【なにを?】

『僕らはですね、家は自分たちで作るんですよ』

【?うん】

『クゥレさんは自分で作れます?』

【つくれるよ】

『え、でもあの渦作ったの僕らですよ?』

【むぅ、われでもあれくらいできるよ】

『そうですか?じゃああの渦くらい簡単に維持できます?』

【ふん、そんなのよゆうだよ】

『本当ですか?クゥレさんが渦の心配してるので、もしかして一人じゃ維持できないのかと思ったんですけど』

【できるよ。かんたんにできる。ジンゴ、そとでみてて】

『え?』


 ちょろいクゥレさんを煽って渦潮の維持を任せようとしたら、何やらしてくれちゃうらしい。

 急いでツィヤと一緒に雲の外へ向かう。素早く空を飛び、渦の真上に飛び出した。


『……うわぁ』

『シー。凄まじいですね』


 何が起きてたって、大渦が超大渦になっていた。渦の回転数が跳ね上がり、なおかつ幅を広げて巻き込む海水量が爆増していた。それでも穴が埋まらず深く続いているのはやはり回転数が上がったからだろう。


 船に乗っていたリィムさんは……と探したら離れた場所に避難していた。白金色が海上によく映える。傷一つない無事な様子だった。よかった。


 渦が大きければどんな仕組みか立ち昇る白煙の量も増え、もくもくと邪魔くさいくらいに空に煙が伸びていた。


【――ジンゴ、どうだ。われもすごいだろう】

『すごいですけど……これ、ずっと維持できるんですか?』

【うん。海のながれをこうやってくるくるするようにかえたから、もうずっとこのままのはず】

『それは、すごい』


 他に言葉がなかった。素直にすごい。すごすぎる。ちょっと予想外だ。高位種族、ここまでできるものか。


『いや本当にすごいですね、クゥレさん』

【ふふ、ふふふん。ジンゴ、われ、すごい?】

『うん。超すごい。めちゃくちゃすごい』

【むふふー。ならいい】


 褒められたがってそうなクゥレさんを正直に褒め……っていや、なんでここで会話できてるんだろう。


『クゥレさん?なんで僕ら距離離れてるのに話できてるんですか?』

【われ、大きくなったから】

『……ツィヤ、わかる?』

『シー。おそらく粒子雲霊種としての肉体――取り込んだ粒子の増加により意識体とも呼べる部位が広範囲に渡るようになったのかと。海底火山上空、広範囲の雲が今はクゥレ様に直接通じていると考えてよいでしょう』

【ツィヤ、せいかい】

『なるほどなぁ。わかりました。……うん。それならリィムさんたちともスムーズに会話できますね。クゥレさん、ひとまずリィムさんを紹介するので呼んできますね』

【……】


 返事がない。

 正確にはあるんだけど、無言の息遣いのようなものだけが返ってくる。無視、してるわけじゃなさそうだから……ちょっと待つか。


【…………】


 相手が子供だと思えば待つのも楽になる。

 しかしリィムさんは遠目で見ても綺麗で見惚れてしまう。風に揺れる髪の美しさがあの人の美貌を際立たせている。僕も髪の毛白金色に染めて…………いやないわ。


【……ジンゴ】

『はい。なんでしょう』


 返事は素早くね。こういう時顔が見られたら表情の変化でわかりやすいんだけど、そこは仕方ない。異種族だし。


【……われ、じゃまものじゃない?】

『はい、邪魔者じゃないですよ』

【そのにんげんたち、怒ってない?】

『はい、全然怒ってないですよ』


 少なくともリィムさんは怒ったりするような人じゃないから。


【じゃあよんできていいよ。……ジンゴ、われまってる】

『はい。ちょっと待っててくださいね』


 子供っぽくさっきの話を気にしていたクゥレさんに頬を緩め、ツィヤと二人でリィムさんの下へ向かう。途中で一応ソベルトさんとミィルクさんについて聞いてみれば、渦の変化も気にせず平然としていたとツキさんから情報提供があった。あの人たち、やっぱすごいわ。


「シィステラ様、上空にクゥレ様をお連れしました」

「そうですか。渦の変化はクゥレさんの?」

「はい。クゥレ様が今後は渦の維持を担ってくれることになりました」

「それはありがたいですが、どうして?」

「はい。ジンが頑張りました」

「ふふ、そうですか。じゃあ褒めてあげないといけませんね。ツィヤさん、またお礼を伝えてもらえますか?私が喜んでいたことも含めて」

「はい。了解しました。伝えておきます。クゥレ様との会話はよろしくお願いします」

「それは、はい。任せてください。私の仕事ですから」


 頼もしく頷くリィムさんとピカピカ光るツィヤが何を話していたかと聞けば、リィムさんが僕を褒めてお礼を言っていたと。


 ぱぱっと海水で水人形を作ってみせれば、くすりと笑ってやんわり頭を撫でてくれた。なんだ、天使か。


 満足感に浸りながら上空に昇る白金色の天使をのろのろと追い、雲の近くまで来たところで二人のファーストコンタクトを見守る。


「――初めまして、異世海種族との外交を任されているリィム・シィステラです。クゥレさんでよろしいでしょうか?」

【……うん。われ、クゥレ】

「クゥレさん。最初に謝罪を。私たちの都合で住居を移るはめになり申し訳ありませんでした。そして、ありがとうございます」

【え、う、うん。……べつに、きにしなくていいよ。われもわるかったから】

「ふふ、はい。それじゃあ、お互いのことを話していきましょうか」

【うん。われも、リィムのことしりたい】

「はいっ」


 最初は緊張していそうだったクゥレさんも、リィムさんの笑顔と優しさに包まれて和やかな雰囲気になり話は円滑に進んでいった。


 その場を静かに離れ、誰にも声が届かない場所まで行く。

 肩の力を抜き、身体を逸らして顔を空へ、雪雲へと向ける。


『くぅー……はぁ』


 深く呼吸し、ちょうど海底から海上まで戻ってきたミィルクさん、ソベルトさん、ツキさんの三人を見つけて小さく笑う。


『これにて一件落着、なんてね』


 長い一日になったような気もするけれど、なんだかんだで綺麗に収まった。

 雪解け雨降り事件(今名付けた)は加害者も被害者もない、平和な結末でおしまいだ。


 緩く笑って、海を見渡す。ひらひらと雪を降らす雲と青い海と。立ち昇る白煙と――。


『……うん』


 視界に入り込んできた巨大な渦を見てつい真顔になってしまった。そして思い出す、クゥレさんの言っていた海流を変えたとか何とかという言葉。

 今さら見なかったこと、聞かなかったことになどできやしないので。


『まあ、大きな渦潮ができちゃったのはしょうがないってことで!』


 一件落着!世の中生きていればそういうこともあるさ。……そういうことも、あるよね?あると思う。あれば、いいなぁ。


『……はぁ』


 内心で呟き、溜め息を吐く。

 リィムさんたちのいる場所まで戻りながら思う。


 やっぱり、僕の世界でも、こちらの世界でも。なんでもかんでも綺麗に上手くいくことなんてないみたいだ。生きるのって、大変だね。


『まったく、やれやれだ』


 わざとらしく気取って肩を竦め首を振り、不思議そうな雰囲気を纏って僕の方を向くツィヤになんでもないと笑いかけた。

 現実逃避気味にリィムさんを見れば、雨粒混じりの白雪が舞う中に白金色が躍っていて一瞬で意識全部を持っていかれてしまった。


 問題解決とか、渦が残ったとか。

 この後も色々ありそうな感じはあるけれど、結局はそう、リィムさんの近くにいられるだけで僕は満足だ。異世界夢見生活――……うん、いいね!

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[良い点] クゥレかわいい!
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