美少女探偵『阿笠クリス』の、貴方のハートにチェックメイト♪
本作は、『第4回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』応募作品です。
今回の企画の二作目です。
千文字以内に收めるって難しい。
さぁ、不思議な世界にご案内~♪
「チェックメイトよ、怪盗ルブラン!」
深夜の美術館に一斉に明かりが点いた。
チェック柄のロリータ服を身に纏った少女と警官隊が入り口を塞ぐようにして立っている。
広間の中央に飾られた、ダイヤが無数に散りばめられた首飾りを手にしたタキシード姿の男の動きが止まる。
男はゆっくりと振り返った。
「あの予告状からよくここを割り出せたな、美少女探偵、阿笠クリス!」
怪盗は悠々と、首飾りを上着のポケットに収めた。
だが少女は不敵に笑った。
「それは事前にすり替えた偽物よ。本物は館長が持ってる」
「残念。すり替えのとき一緒にいた館長は俺だ。本物の館長は今もトイレに閉じ込められている」
「何ですって?」
少女の目に悔しさが滲む。
怪盗が懐から銃を取り出し天井に向けて撃つと、銃口からフック付きロープが勢いよく飛び出した。
フックが天窓近くの照明に絡み付くと、怪盗は一気に天井まで引き上げられた。
天窓から脱出するつもりか。
だが。
「割れない?」
「こんな事もあろうかと、天窓を強化ガラスに替えておいたわ!」
地上の少女が勝ち誇った声で叫ぶ。
「なに勝手な事してるんですか!」
少女の隣の警官が悲鳴をあげる。
天窓に張り付いた怪盗は、だが余裕の表情を浮かべ、強化ガラスをずらした。
封じたはずの脱出路が開いている。
「ネジがハマっていない?」
「こんな事もあろうかと、出入りの工事業者を買収しておいた。俺の方が一枚上手だったな」
怪盗が天窓から逃げようとしたそのとき、美少女探偵が涙を溢した。
「持ってっちゃ……やだ」
怪盗はロープを緩め地上に降りると、少女の首に首飾りを掛けた。
「少女の涙には勝てん。今日は勝ちを譲ろう」
言うと同時に怪盗から大量の煙が吹き出した。
煙が収まったときに、そこに怪盗の姿は無かった。
「美少女探偵、大金星だって!」
大学で彼氏の、森スバルを見つけたクリスは、得意げにネットニュースを見せた。
「凄いじゃないか。じゃあこれを」
スバルはクリスの首にネックレスを掛けた。
ネックレスには一粒だけ小さな宝石が付いていた。
「誕生日おめでとう。本物は買えないけど」
「ううん、とっても嬉しい。ありがと」
クリスはスバルの頬に熱烈なキスをした。
さて。
大学生、森スバル。またの名を、怪盗ルブランがプレゼントしたネックレスに付いていた宝石は、昨夜の首飾りから一粒だけ抜き取った本物だった。
時価数億円を下らぬ宝石は、誰に気付かれる事なく、クリスの首で静かに揺れていた。
如何だったでしょうか。
この企画、難しいけど小説を書く楽しさを感じられて、何気に結構好きです。
さぁさぁ、期日までにあと何作書けるかな~♪