ゆいこのトライアングルレッスンH 〜ブラックバックハグ〜
ゆいこのトライアングルレッスンHに応募した作品です。
残念ながら採用はされませんでしたが、お好きな声で脳内再生して楽しんでいただければ幸いです。
待ちに待ったバレンタインデー。今年も例年同様ひろしとともに呼び出され、ゆいこから手作りのチョコを貰った。
逸る気持ちを抑え、そっと箱を開けると、中身はケーキだった。甘い香りが部屋に充満する。
ふと、ケーキの上にプレートが乗っているのに気付く。
「ん?Dearひろし…?」
恐らくゆいこが間違えたのだろう。毎年同じものを同じ袋に入れて貰っているから、仕方ない。
袋の中を見ると、カードが入っているのに気付く。
『ひろしへ。伝えたいことがあるから、明日線路沿いの公園に、18時に来て下さい。たくみには内緒で!』
絶句したまま暫くそのまま硬直していると、電話が鳴った。相手はひろしだ。
「もしもし?ゆいこに貰ったクッキー、チョコペンで『Dearたくみ』って書いてあったんだけど、これ入れ替わってるよな」
「ああ、でも中身は同じだし、問題無いんじゃね?気にしたら可哀想だからゆいこにも黙ってようぜ。」
「ああ、そうだな。」
「あのさ」
「何?」
「入ってたの、クッキーだけだよな?」
「うん、そうだけど。」
「だよな、じゃあ、また明日。」
翌朝、ひろしと一緒にゆいこにお礼を言いに行った。
「美味しかったよ、ありがとう。」
「本当?よかった!」
何も知らないとは言え暢気に微笑んでいるひろしを見ていると、無性に腹が立ってきた。
気付くと、ゆいこを後ろから抱きしめていた。ゆいこの体温が伝わってくる。耳元で囁く。
「俺も、美味しかったよ。『本物の愛』が詰まってるなって思った。」
「な、なによもう!まあ美味しかったならよかった!」
焦るゆいこと、唖然とするひろしを見るのはなかなかに滑稽だ。
真実は、俺だけが知っていればいい。
さて、今晩は何を着ていこうかな。