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1話 異世界に行くことが出来る道具

俺には姉と妹がいる。小説や漫画やアニメではよく妹と姉が主人公のことが好きになって……というようなエチエチな事になるようなのが沢山あるが、そんなのは一切ない。むしろ有り得ない。姉は俺を毎日のようにパシリに使い、妹は超がつくほど生意気。しかも、俺が逆らった日は姉の彼氏が殴り込みに来る。そんな毎日に呆れていた俺も、今となってはそれが当たり前となっている。……わけがねぇだろぉ!!生意気なアイツらはいつも課題をさせてくるし、自分でやった事も全部俺に押し付けてくる!しかも俺がやったいい事は全て自分のものにして親の信頼はゼロだ!おかげで俺への対応は厳しすぎる……出かけてて1分遅れたからって殴るなよ……帰ってくる時間教えろよ……どーやって教育したらこうなるんだっててめぇの娘に言えよ……

そんなことを考える度に出てくる姉妹の悪行。ついにこの怒りは頂点まで達した。


「こんちくしょうがァ!今に見てろよ!あの女どもめぇ!あ〜やめだやめだ!こんなもん破り捨ててやるぜ!」


俺はやらされていた宿題のプリントをビリビリに引きちぎり、妹のランドセルに思い切り突っ込んだ。そのまま俺は財布を手に取り、玄関の扉を勢いよく開き、出ていく。


「コンビニに行ってくるぜ!」


「おーう、帰ってくるなよ〜」


「……チッ!」


大きな舌打ちをし、ポッケに手を突っ込んでまるでヤンキーのように歩く。その途中……


「君、どこの子だい?」


「え、警察?」


「はい。○○町○△区の者です」


「マジっすか?」


「マジです」


まさか職質されるとは……身長には自信があるがまさか中学で人生初の職質されるとはな……

その時は、サイフの中に入れていた生徒証明書を渡して何とかなった。


「職質までしなくてもいいだろ……」


そんなことを呟きながら道を歩いていると、全く人の通らない道にやって来た。そこをブツブツと悪態をつきながら歩いていると、1人の杖を付いて歩く老人に声をかけられる。


「ちょいとそこのおにぃさん……お時間よろしいかのぉ……」


「時間?それなら有り余ってるぜ」


「そうかそうか。そういう事ならひとつ話しを聞いてもらいたいんだが……よろしいかのぉ?」


「むかしむかしのお話じゃないならいいぜ?」


「ホッホッホ、そんなつまらんものじゃあない。そこでいいだろう。あの土管の上にでも座って話をしよう」


「おう」


シワシワの指で指した方向には○ラ○モンに出てきそうな空き地があった。白髪と、立派な白髭を生やした老人に連れられ、土管の上に座る。


「よぉぃしょっとぉ……わしも歳じゃなぁ……腰が痛いわい」


「歳いくつなんだ?」


「うん?歳か……いくつじゃろうな……忘れてしもうたわい。ハッハッハ」


「……」


ケラケラと笑う爺さんの隣で、俺はズコっと膝の上に乗せていた肘を滑らせる。そんな俺をよそに、爺さんはまた別の話をし始める。


「ところでお兄さん、異世界に行ってみたいとは思わないかい?」


「異世界に?ハハッ!そんなもんあるわけねぇだろ?でも……」


俺は笑顔だった顔を素の顔に戻して下を向く。そして思い出す。まるで俺を奴隷のように扱う姉と妹。俺が年下なのにも関わらず、容赦なく殴り倒す姉の彼氏。ボコボコにされる俺を見て、憎たらしい笑みを浮かべる2人。こんな奴らがいる世界に、俺がいたってどうもならないだろう。こんな世界にいるぐらいなら……ぐらいなら……!


「もしも異世界があるのなら、そこまで逃げてやりてぇよ」


俺がそう呟いた途端、俺を見ていた爺さんは口元を耳辺りまで持ってきて笑っていた。その姿はまるで、悪魔のようだった。


「異世界、あるぞ?」


「え?」


「あるぞ?行けるぞ?逃げれるぞ?」


「行ける……のか?でも、どうすれば……?」


「コレを使えばいい」


「コレは……?」


爺さんが(ふところ)から出したのはひとつの鉄の物質でできたような1本の太い棒だった。それは結構な重さがあり、それを片手で持っていた爺さんの筋力を疑ってしまえほどだった。棒の両端(りょうはし)にはオレンジ色の半球が付いていて、その間の棒の部分には半球から続くオレンジ色の線。そしてその中心に、開けられるフタが付いていた。その蓋を開けると、そこには5つのボタンがあった。


「ほう。もうそれを見つけてしもぅたか」


「コレは……?」


「異世界の行き方を選べるボタンじゃよ」


「行き方を……?」


「そうじゃ。まず、1番左は転移。それを選んだ時、莫大(ばくだい)な力を得られる。そして左から2つ目は転生。転生する時、自分のスキルを2つ選べて、1つ作れる。3つ目はランダムじゃ」


「ラ、ランダム……?って、あとの2つはなんなんだ?」


「あぁ、どうせ選ばんと思うがいいか?今までのやつも聞いてきたがけっきょく選ばんのが多かったが……」


「選択肢は多い方がいい」


「そうか」


そしてまた爺さんは口角を上げ、悪魔のような笑みを浮かべる。


「左から4つ目は巻き込み転移じゃ。誰か好きなやつを2人まで選べ、異世界に巻き込み転移できる。それと同時に、自分と選んだヤツは莫大な力を得る。そして、1番右のやつは……」


爺さんはわざとらしく間を開けて言う。それと同時に、ただでさえ人間離れに釣り上げられた口角をさらに上げて言う。


「巻き込み転生じゃ。巻き込み転移同様、誰か好きなやつを2人まで選べ、異世界に巻き込み転生できる。そして、自分は2つのスキルを選べ、1つ作れるが、残りの選んだヤツはそれが出来ず、凡人のようにしかスキルを獲得できない。さぁ、お前さんはどれを選ぶ?」


それを聞いていた時、俺は笑っていた。なぜ笑っていたかは分からない。でも、何故か笑っていた。その時の爺さんのようには口角を釣り上げていなかったが、爺さんのように笑っていた。全部のボタンについて聞いた後、俺はもうなんのボタンを押すかは決まっていた。すぐに押した。

その時、俺の手足体が光の粒子になってその棒に吸い込まれた。気づけば俺は周りが近未来のような世界に浮かんでいて、辺りからは、音声が聞こえてくる。


「巻き込み転生の準備を開始します。巻き込む人を、1人以上2人以下、選んで下さい。」


と。

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