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Chapter.4

「引っ越し業者どうしよっかー。荷物多いっけ?」

「そんなにはないけど、少なくはないかなぁ……。家具は持ってこないほうがいいよね?」

「どうしてものものがあるなら置けるようにするけど……」

「ただいま~」

 一緑と華鈴が相談を続けていると、玄関のほうから声が聞こえ、足音がリビングへ近付いてきた。

「おかえり~」

 一緑と橙山が声の方を向き、足音の主を迎え入れた。

「ただいま~。あ、やっぱお客さんやった。いらっしゃい」

 おっとりした口調の男性はバッグを下ろしながら笑顔を見せた。小柄で細身の体形に、派手めなオーバーサイズの服が似合っている。

「誰のお客さん?」

 一緑が答えるより先に、「塚森のオンナ」赤菜が答えた。

「なんちゅう言い方すんねん」

「事実なんやからええやろ」

 一緑の反論に赤菜が反発する。

「彼女サン? 初めまして~、青砥(アオト)柊冬(シュウト)って言います~」

 華鈴が立ち上がって自己紹介をすると、青砥が「よろしく~」と手を差し伸べた。華鈴はそれに応えて、握手を交わす。

 一緑は二人の行動をにこやかに眺めている。

「ちょっと! なんでアオは止めないの!?」

 華鈴と青砥を指差し、不服を申し立てる橙山。

「橙山くんはアオちゃうやろ」当たり前という顔で一緑が答える。

「なにソレ、哲学?」

「違う人種ってことや」

 橙山の疑問に、眉根を寄せて赤菜が答える。

「差別や」橙山の嘆きに、

「「区別や」」赤菜と一緑の声が重なった。

「ヘコむわ……」うなだれる橙山に、

「メンタル弱すぎるやろ」一緑が言い放つ。

 そのやりとりをニコニコしながら聞いていた青砥がソファの空きスペースに座る。

 脇の床に座っていた橙山が正座していた足を崩して、三角座りをした。

 そんなんどうでもええねんっ、と小さく言い放った一緑が華鈴に向き直り、話を戻した。

「部屋はなるべく片付けとくけど、荷物はちょっと整理してもらわんとあかんかも」

 申し訳なさそうに言う一緑に、華鈴が優しくうなずいた。

「それは大丈夫だし、大変なようならいまからでも他に探すとか……」

「塚森んとこだけじゃ狭いなら、オーディオ室空けてええよ」

 一緑と華鈴の打ち合わせを眺めながら、赤菜が提案する。

「いえ! そこまでお世話になるわけには……!」

 恐縮する華鈴に、

「ええねんええねん、好きなよーにしたらええねん」

 橙山が目を細め、赤菜の提案を後押しする。

「ん? サクラさん、ここに住むの?」

 青砥が首をかしげて問うた。

「うん。急に引っ越すことになって、どうせやったら一緒に住もか~って」

 華鈴の代わりに一緑が答える。

「そうなんや~」青砥が目尻を下げる。「オレらもけっこー好き勝手やってるよ。一応、ルールはあるけど、そんな気にせんでええんやないかな~」

「ルールいうほどのもんでもないけどな」赤菜の言葉に、

「そもそもアレ、誰が決めたん?」一緑が疑問を投げかける。

「オレとクロとシエン」

「うそやん」

 満面の笑みで、その答えに食いつく一緑に、

「なんで嬉しそうやねん」赤菜が若干嫌そうな顔を見せた。

「いや、俺がここ来る前の話ってあんまり聞いたことないからさ」

「ほんまや!」今度は橙山までもが満面の笑みを見せる。

「なぁ」一緑は満面の笑みのまま、橙山に同意を投げかけた。

「いまはええやろ」赤菜は眉根を寄せて、その話をはぐらかそうとする。

「話したげたらええやん。言いたくない話でもないやろ?」と青砥。

「そうやけど」赤菜はまだ眉根を寄せている。

「えっ? アオは知ってんのん?」

 青砥の言葉に驚いて橙山が問うと、

「んー、まぁ、みんなよりは長いこと住んでるからねぇ」

 なんてこともないような素振りで青砥はおっとり言葉をつむぐ。

「なんで教えてくれへんのん」

 ソファに座る青砥に甘えるように、床に座ったまま橙山がしなだれかかった。

「聞かれんかったから」

 青砥の答えを聞くや

「シンプルー!」

 橙山が急に大声をあげ、笑う。

 急な大声に華鈴はビクリと身体を縮こまらせ、

(これが『急に叫びよる』ということ?)

 少々怯えた顔で、一緑と赤菜に目で問うと、二人はゆっくりうなずいた。

「だいじょぶそう?」

 一緑が小声で華鈴に耳打ちをした。一緒に住むことへの確認だと認識した華鈴は、一緑が心配しないようにと微笑んで頷く。

「なにを人前でイチャイチャしてくれてんねん」

 その流れをすべて見ていた赤菜が憮然と言うが、言葉とは裏腹に顔にはニヤニヤとした笑顔が浮かんでいる。

 橙山と青砥は、微笑ましそうに二人を見守っている。

 注目されていることに気付き、一緑は頭を振って、スマホに目を戻した。

 少し苦笑いを浮かべているが、それでもどこか嬉しそうで、気持ちが浮き立っているような瞳をしていた。

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