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突き付けられた現実


 著名な博士の住居に住所不定無職の男が不法侵入するという事件が起こってから十年の歳月が経った――


 薄暗い部屋の片隅で丸々と肥えたどぶ鼠がか細い声で鳴いた。

 ベッドの下へと隠れたゴキブリに反応したのだ。

 サイドボードにのせられたトレイの上の干からびたパンと野菜屑を煮たスープは、既にすえた臭いを放っており、何匹もの蝿が渦を巻きながら飛び交っていた。

 それは博士の住居にある地下牢ダンジョンだった。

「う……あ……ああ……う」

 鉄格子の向こうで男は語り続ける。しかし、その言葉はもう言語の体裁を成していなかった。

 更に男の目は血走っており、肌は立ち枯れた松のようにカサカサしていた。

 延び放題になった白い髭は、涎と食いカスにまみれてべちゃべちゃに汚れている。

 ストゥールに腰をおろした彼の足元には、アンモニア臭を放つ水溜まりができていた。

「う……あ……うう……あ……」

 今、彼は脳内でテレビ番組の収録の真っ最中だった。

 目映いスポットライトの中、大勢の観客に拍手喝采を浴びるという妄想にひたった彼は、世界の誰よりも幸せだった。

「うう……ああっ。うっ……」

 そんな彼を鉄格子の向こうから眺めながら、博士は溜め息を吐いた。

 その物憂げな横顔を見て、十六才の少女は言葉を発する。

「もう、良いんじゃありませんか?」

 彼女はあの十年前の事件で、教授の人質となった幼女であった。

 その元幼女の少女の言葉に博士は答える。

「何をだい?」

 少女は再び鉄格子の向こうで、電源の入っていないテレビカメラに向かって必死に語り続ける男に目線を向ける。

「もう、この人を楽にしてあげましょう。見ているだけで、悲しくなるわ」

 しかし、博士は静かに首を横に振る。

「いや。彼のような人間の病理を解明する事は、きっとこの国の将来の為になる。これは彼からの僕たちへの、身をていした贈り物だよ。この国の将来を憂いた愛国の士である彼からのね……」

「そうですか……ならば、もう何も言いませんけれど」

 少女がそう言って、鉄格子の向こうの男から目をそらすと、博士は彼女の肩に優しく手をおいた。その指にはプラチナのエンゲージリングが輝いている。

「さあ。ここは冷える。上の部屋に戻ろう」

「そうですね。お腹の子にも障りますし」

 少女はそう言って、大きくなった自らのお腹をそっと撫でた。

 その彼女の指にも博士の物と同じ指輪があった。






『The System Of Doctor Harem And Master Cheart. Happy End』


ブクマと評価ください!(ダイレクトクレクレ)


……いや、やっぱいらないんで、拙作の『ゆるコワ! ~無敵の女子高生二人がただひたすら心霊スポットに凸しまくる!~』


https://ncode.syosetu.com/n2367fs/

を読んでいただけたらうれしいです。

こっちは真面目に書いています。

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