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一目惚れ

「委員長なのね。よろしくお願いします」


「・・・もう学級委員長じゃ無いわよ。それより、2人でどうしたの?街を案内してあげているとか・・・?」


「いや・・・その、ちょっと事情があってな。今日は明菜の所に泊めてもらう事にしたんだ」


まさか、妹が暴れたからとか、言えるはずも無く。


「えっ、ちょ、女の子の家にいきなり泊まるとか、駄目に決まってるでしょ?!」


急にスイッチが入る委員長。


「大丈夫よ。さっき食材たっぷり買ったもの」


明菜が苦笑して告げるが、


「急に来たら食材が足りなくなるとか、そういう心配してるんじゃないのよ?!」


・・・他に何かあるのか?

明菜も困惑した様な表情を浮かべる。


「・・・食材たっぷりって、それにしては手ぶらね?」


委員長が小首を傾げる。


「ああ、邪魔だからポケットに入れたぞ」


「・・・ポケットに入る量の食材って何よ・・・」


委員長が半眼で呻く。

逆に、ポケットに入らない量の食材が必要な状況が分からない。

相撲部屋の炊き出しでもする気か?


「じゃあ、委員長、また明日」


そろそろ明菜のマンションに行こうと、委員長に別れを告げるが、


「待ちなさい?!今私、止めなさいって言ったわよね?!」


・・・?


俺と明菜が、困惑して顔を見合わせる。


「え、何で?」


明菜が困った様に委員長に問いかけると、


「こんな夜に、男を部屋に入れるなんて、駄目に決まってるでしょ?!間違いがあったらどうするの?!」


委員長が明菜に詰め寄る。


「・・・?大丈夫だよ、龍生だし」


明菜が苦笑して告げる。


「・・・あれ、白谷くんと黒森さんって、ひょっとして以前から知り合い?幼馴染みとか・・・?」


「いや、昨日初めて会ったよ」


何故幼馴染みと思うのか。


「・・・その割に名前呼びなのね・・・まあ、恋人でも無いんだから、とにかく今日はやめておきなさい」


「でも、私と龍生は付き合ってるのよ?」


「昨日あったところなのよね?!」


委員長が叫ぶ。

夜に声が大きいって。


・・・怪しまれてはいけないな。

言い訳をするか。


「「一目惚れしたんだ(たのよ)」」


被った。


がくり・・・


何故か膝をつく委員長。


「・・・大丈夫ですか・・・?委員長さん・・・?」


明菜が肩を貸して、委員長を支える。


「・・・大丈夫・・・とにかく・・・駄目だから・・・」


ふらふらした足取りで、委員長が去って行く。

・・・大丈夫かなあ?


明菜が、困った様な顔で言う。


「・・・龍生、多分、彼女、貴方の事が好きなんじゃないの?」


ああ。

それでだったのかな。

でも。


「そんな気はしてたんだが・・・俺、女性と付き合う気にはならないんだよな・・・昔から」


「あら・・・龍生は顔も良いし、運動もできるから、随分モテそうだけど・・・泣いている女の子も多いんでしょうね」


「明菜こそ、凄くモテそうだけどな」


黒森が半眼で、


「そんな訳が無いでしょ。まあ、家の財産目的に近付いてくる人は居たけどね・・・」


そう言うと、溜息をついた。

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