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私達は結ばれる運命なのですから

「どうしました?」


雪華が首を傾げてこちらを見る。

目が蒼く光るのが幻視される。

背中に汗が滴り落ち・・・


「お身体に異常は無い様ですが、発汗と悪寒、激しい動悸が見られますね。今日は早く休まれますか?」


俺の両肩に細く美しい手を置いていた雪華が、手を引っ込める。


「・・・ああ、今日は早目に寝るよ」


夕食・・・多分美味しいのだけど、あまり味は分からない・・・というか、雪華、料理なんてできたっけ?


いや、考え過ぎだ。

雪華はふざけてるだけ、ふざけてるだけ・・・


「こら、有り難いけど、今は駄目でしょ」


雪華が、何も無い虚空に話しかけている。

大丈夫、大丈夫。


カラン


お皿がテーブルの上に落ちる。

何処からだよ。


「ご飯食べたら、御背中を流しますね」


「1人で入るよ?!」


一緒に入らねえよ。


ぷくう


雪華が頬を膨らます。


「お兄様が、約束をお忘れになったのは理解しました。それは良いんです。私達は縁が結ばれているのですから、必ず一緒になれます」


なれねえよ。

まず、兄妹だよ。


雪華が嬉しそうに言う。


「何せ、たった2人の兄妹ですからね」


何せ、じゃねえ。

まずそこが問題だよ。

法的云々以前に、俺が妹を恋愛対象や伴侶として見れねえよ。


「いや・・・だからな、雪華。俺はお前を恋愛対象には見れない。お前は妹としか見れないんだよ」


雪華は嬉しそうに、


「はい、私もです。恋人、というより夫婦ですよね。何せ、兄妹ですから」


も、じゃねえ。

全然通じない。

古今東西、兄妹は夫婦の代名詞ではない。


「お兄様!」


雪華が抱きついてくる・・・この当たるものは・・・?!

こいつ・・・つけてない。


思わず離れる。


「馬鹿、やめろ」


雪華が心外そうに言う。


「何故ですか?私達、兄妹ですよ?」


「兄妹でも、何でも、駄目だ」


何処の世界に、高校生にもなって抱きつく兄妹がいるのか。


「まあ良いです。お兄様が思い出して下さるまで、ずっと待ちます。私達は結ばれる運命なのですから」


雪華が微笑む。

あのなあ・・・


「いや、雪華・・・俺、彼女いるからな」


偽装彼女だけど。


「嘘ですね」


微笑んで否定する。

何でだよ。

嘘だけど。


「お兄様は、私以外とは縁ができない筈です」


ドヤ顔で言う雪華。


いや、そりゃ、俺非モテ人生だけどさ。

人を好きになった事は無いし、好かれた事は・・・無いとは言わないけど、告白された事は無い。

頭の出来は中の上、顔はそこまで悪く無く、スポーツは全国区なのだけど。


・・・スペック、低くないよな?


「いや、彼女がいるのは本当だからな」


「ふふ、そういう事にしておきますね」


雪華が苦笑する。


「分かりました。彼女がいるお兄様のお風呂に侵入したりはしませんよ」


引き下がってくれた。


「私も明日は入学式ですしね。早寝します」


明日だった。

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