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神の定めたもう伴侶

「離し・・・離して下さい!」


「雪華!」


呼びかける。


「龍生・・・見ないで!」


別に、雪華が裸とかそういう訳では無い。

何時もと変わらない姿だ。


「私・・・私・・・」


「巫女様、どうされたのですか?」


明菜が懇願するような声で問う。


「魔女・・・魔女め・・・私に・・・あの様な・・・」


明菜が渡した物・・・火巫女が・・・明菜のお菓子を食べた途端・・・と言っていたな。

お菓子に何かが?

いや、そんな事は考えられないが・・・


「あの様なお菓子、生まれて初めて食べた。今のままでは・・・あの様なお菓子は私には作れぬ!」


・・・


「・・・巫女様・・・まさか・・・その様な理由で・・・?」


明菜が呆然と問う。


「そうだ!私が岩戸の行で霊力を高めれば・・・きっと私にも、美味なるお菓子や美麗な細工が・・・!」


出来るようになる訳が無かろう。


「・・・巫女様・・・あのお菓子は・・・材料が特殊なのです・・・」


黄泉比良坂産の物を使ってるからなあ。


「特殊・・・卑怯な・・・!」


雪華が唸る。


「ですが、あの材料を簡単に入手できるよう、慣らしております」


豊寿に頼んでやった事だ。

大神実命(オオカムヅミ)の量産、といった事は凄まじい時間を要したが、お菓子の材料を地上で栽培出来るようにする、くらいなら簡単だったようだ。

既に量産に入っていて、収穫も始まっている。

まだ貴重で、人気も高いが・・・雪華の立場であれば、優先的に入手するのは容易い。


「勿論、作り方もお教えさせて頂きます・・・ですから、どうか地上に戻って下さい。地上の民には、巫女様が必要なのです」


明菜の懇願。


「でも・・・でも・・・龍生は・・・私より魔女、貴方を!」


・・・?


「私を、どうかなさいましたか?」


明菜も困惑した様に問う。


「龍生は・・・私より、魔女、貴方に惹かれている。私は・・・愛しい人の気持ちが誰に向いているかくらい・・・分かります・・・」


「・・・お兄様の気持ちは、巫女様に向いておりますが・・・」


明菜が困惑した声で言う。


「そもそも雪華はいつ求婚してくれるんだ・・・?もう俺から求婚すれば良いのか・・・?」


俺も雪華に問いかける。


「なんで・・・?!妹がそんなに大事なの?!神の定めたもう伴侶・・・妹・・・でも・・・それでも、私は選ばれたい!私の方が・・・ずっと・・・龍生の傍にいたのに・・・!」


「・・・聞いてくれよ」


俺はがっくりと膝をつく。


「巫女様、お兄様を信じて下さい」


・・・ああ、もう・・・


俺は雪華に歩み寄ると、雪華を抱きしめ。

そっと、唇を奪った。


「雪華、俺が大切なのは・・・お前だ。俺と・・・一緒になって欲しい」


本来、天上の存在たる雪華にやって良い事では無いのだが。

話が進まない。


雪華を抱きしめたまま・・・そっと、勾玉のペンダントを握らせる。

もしもの時の為に用意しておいた物だ。

明菜に貰った虹水晶を加工して作ってある。

神儀式を用いず、霊脈のみで編んだ術紋。

氏神に関係無く、ある程度の防護術式が発動する筈だ。


「龍生・・・」


雪華が、潤んだ目で俺を見上げ・・・

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