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世界よりお前の方が大切だ

降りる。


魔物の密度は、激減した。

──格の低い魔物では、生きる事ができないのだ。


ゴブ・・・


百目百足。

聖獣級の魔物。


ガッ


八幡と禍鹿が連携、そこに美海と無垢が援護・・・


容易く倒すが、これは数の暴力だ。

1対1では相当苦戦するだろう。


その後も、押し切られそうになりながら・・・なんとか、魔窟核に辿り着く。


ガッ


八幡が牙をたて・・・


ギギギ・・・バギィ


溢れ出る瘴気・・・そして・・・


ボウッ


壁が、光り始める。

地脈の脈動・・・


「出るぞ!」


魔窟で無くなった空洞も、地脈の流れを乱す。

その為、地脈が魔窟に侵された地形を、戻そうとするのだ。


魔物は既に、大半が闇となって消えている。

邪魔するものの居ない道を、速歩の術で走り抜ける。


ズン・・・


間に合った。

俺が走り出た直後、入り口が崩れた。

・・・まあ、美海と無垢がいるので、最悪、結界を張って土砂を避けるだけなんだけどね。


「お疲れ、助けてくれて有り難うな」


御礼と共に、頭を撫でていく。

・・・豊樹の頭って何処だろうな?


--


一夜明けて。


陽の巫女様が、魔窟を単独解放された。

そんな喜ばしい話題で、賑わっていた。

しかも、地脈の乱れから、惨界相(さんかいそう)に届いていた可能性があるという・・・


ごくり


俺は、我知らず、生唾を飲み込んだ。


新たなる偉業の追加。

しかも、とびきりの。


尚、別に俺が雪華より強い、という訳ではない。

数の暴力もあるが、そもそも、瘴気の中で普通以上に戦える、魔物を使役している事こそが異常なのだ。


祝福の中、陽の巫女様は、婚約者との逢瀬を希望。

休日でもないのに、俺は雪華と2人の時間が持てた。


俺は、笑顔で雪華に称賛の──


「何してくれるんですかあああああああああああああああああ」


2人きりになるなり、雪華は俺に馬乗りになってきた。

これは・・・


「待て、雪華。まだ日が高い。それに、こういうのはちゃんと式を挙げてから」


「わざとですよね?!龍生、いい加減私を隠れ蓑にするのは限界なんですけど!」


「待て・・・一体何の事だ、さっぱり・・・」


さて・・・シラを切り通せるか・・・


「もしもの為に、私の寝所には、強力な結界が張られてたんですけど?!強力な結界に一切感知されずに、見張りに誰にも気付かれないまま出征、魔窟を解放して、また人知れず帰還・・・行動も不可解だし、実現可能性も不可能なんですけど?!」


「いやあ・・・流石巫女様だなあ」


ぷくー


雪華が頬を膨らます。

あ、結構怒ってる。


「雪華・・・今日も可愛いね。愛してるよ」


「それ言っておけばごまかせると思っていませんか?!」


緩む頬を抑えつつ、怒った顔を維持しようとする雪華。

やばい、可愛い。


そっと雪華を抱き寄せ、


「おかえり、雪華。無事で良かった。もう・・・無茶はしないでくれ。俺は・・・世界よりお前の方が大切だ。だから・・・いざという時は、俺を頼って欲しい」


雪華は、ほうっと息を吐くと、俺の胸に顔を埋め──


「え、待って、今の私の台──」


そっと、雪華の唇を塞いだ。

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