不倶戴天
バタンッ
「お兄様!帰っているのですか!」
扉が開き、雪華が帰ってきた。
ドタドタ
「・・・?!魔女がいる事もおかしいですが、何故魔物が居るのですか???どう言う状況ですか???」
雪華があ然とした様子で、叫ぶ。
「魔物め、お兄様から離れなさい。調伏しますよ!」
シャンッ
雪華が身の丈程ある矛を構える。
「落ち着いて、雪華ちゃん──」
「魔女は黙ってて!」
明菜を、雪華が遮る。
なら・・・
「あのな・・・雪華──」
「お兄様は黙ってて下さい!」
俺も駄目なの?!
「それでしたら、私めが──」
「何で魔物に発言権があると思ったの??!」
犬まで、雪華に封殺される。
詰んだ。
「いや、雪華、話し合おう。今日は、その為に来たんだ」
「お兄様の家は此処ですよ?!来たとか、おかしいです!」
ぬう・・・話が進まない。
「とりあえず、落ち着け。その、雪華の厨ニを──」
「私は高校1年です!」
雪華が距離を取り、構えると、
「招来、白蛇よ!汝、万難を排する存在!」
ボウッ
しめ縄を巻いた白蛇が、頭をもたげた状態で現れる。
「白蛇、魔物と魔女を抑えて!」
カッ
白蛇の目が光る・・・
ぞわっ
昨日、夜の蜘蛛を見た時のような・・・寒気が体を支配する。
やばい・・・
ひたり・・・
犬が、ゆっくり進み出る。
犬が低く、告げる。
「導く存在よ。我は主命により、小さき命を護る。此処は引け。さもなくば、我ら、相対するは逃れられぬ」
蛇が告げる。
「八方を護る存在よ。そなたこそ、引け。我が主に慈悲は無い。その魔に手を染めし娘は、生かしてはおけぬ」
ん・・・?
犬が、苦しそうに呻く・・・
「そなた・・・分かっているのか・・・?我らが戦えば・・・この星は焦土と化すは必定。彼等が護りしこの地、失うは望むまい・・・?」
んん・・・?
蛇が応える。
「ぬう・・・もはや、問答は無用。我が主が大願と、ヌシが宿命、もはや相容れぬ。ゆくぞ・・・」
蛇が大口を開け──
「「「良い訳無いだろ(でしょ)(わ)」」」
俺、明菜、雪華の叫びがハモる。
「「ですよね」」
犬と蛇が頷いた。
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話がややこしくなったので、仕切り直し。
とりあえず休戦となった。
「・・・何故魔物、と思ったら、まさか八幡が来るなんて・・・暇なの?」
雪華がぶつぶつ言っている。
「それより雪華。今後の話だ。俺には明菜と言う彼女がいるし、お前は妹だ。だからその・・・お前と俺が結婚する事は有り得ない分かって・・・くれるな?」
雪華は溜息をつくと、
「魔女が、私を遠ざける為の偽装彼女、というのは分かっています。そうですね・・・分かりました。お兄様が記憶さえ取り戻せば、きっと上手くいくんです」
何故そう自信満々なのか。
偽装彼女のくだりとか、正解なんだけど。
「ん・・・解決した、のかな?」
明菜がほっとした様に言う。
「魔女、お兄様に陰陽を教えたのですね?」
雪華が、明菜に言う。
陰陽?
確か、明菜の父親も似た事を言ってたな。
「ええ、教えたわよ?」
明菜が小首を傾げる。




