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神降し

うろ覚えだが・・・確か・・・


かしこみかしこみ(オン)我が氏神(ウジラ)月読尊よ(ラルラツクヨミ)一片なる炎(テライラエン)賜わせ給え(ハダラ)!」


ボッ


俺の手の平に、サッカーボールほどの炎の塊が現われる。


ふよふよ・・・


消えろ、と念じると、炎がかき消えた。


あ、明菜とお父さんの目がこっちに釘付け。


こほん


お父さんが咳をすると、


「それで、龍生君、だったかな。娘と結婚して、うちの家を継いでくれる話だったかね?」


その話では無かったよね。


「・・・俺、白谷神社の跡取りなんですが・・・」


俺の言葉に、お父さんががっくりと膝を着いた。


--


「ふむ・・・白谷神社の事は分からないが・・・人格が変わったのであれば、狐憑きが考えられるな」


お父さんに一部ぼかして事情を話し、相談に乗ってもらう。


「狐・・・そうなると、除霊。龍生の家の専門分野よね」


明菜がう~んと、考える様に言う。


「除霊・・・俺、苦手なんだよな。霊感全く無いしな」


もふ?


服を着た白兎が、小首を傾げる。

うん、可愛いよ。


「一般的には狐憑きだが・・・白谷神社の家系であれば、別の可能性が有る」


お父さんがそこで一旦言葉を切る。

そして、声を低めて言う。


「すなわち・・・神降し」


「俺の事を兄と認識してるから、それは無いかな」


「うん、違うと思う」


お父さんの意見を、俺と明菜が否定する。


「でも、龍生の実家に行ってみるのはアリかも?何か分かるかも知れないよ?」


「・・・確かに」


実家の蔵とか調べれば・・・?


「これから、白谷神社で資料を調べてみます」


お父さんにそう伝えると、明菜と一緒に白谷神社へと向かった。


--


「うちの周囲程は雰囲気出てないね」


明菜が言う。

黒の森で歩きにくそうにしていたが、うちの神社の階段は普段と変わらず歩けている。

うちはただの田舎の地元の小さな神社、祀られている神も伝承が消失していて・・・そもそも──


「初めて来たけど、綺麗な神社だね」


明菜が驚いたように言う。

が。


「物は言いようだよな。歴史が無い、とも言う。何度か消失して、建て直してるからな。・・・正直、蔵の中にも古い書物はない」


ボッ


赤く長い髪の、巫女の女の子達が歩いて来る。

火巫女、と言う役目?の女の子達で、顔も声もあまり見分けがつかない。

多分、近所の子供が働いているんだけど、名前を未だに聞けてない、というか、多分代替わりしてる。


「お久しゅう。坊っちゃん、今日はどうしたかえ?」


火巫女の一人が尋ねる。


「お久しぶり、火巫女。実は、うちの歴史とか、そういうのを調べたくて・・・ちょっと困った事になっていてね」


火巫女が小首を傾げ、


「うちは定期的に燃えはるから、古い資料は有りませんえ?」


ですよね。


「そちらのお嬢さんは、坊っちゃんの彼女さんかえ?」


別の火巫女が尋ねる。


「ああそうだ」


肯定しておく。

明菜も空気を読んでくれ、顔を赤くして微笑み、こくり、と頷く。


・・・可愛いなっ。

演技達者ですね!

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