お兄様、ごはんにしますか?お風呂にしますか?それとも私ですか?
「お兄様、ごはんにしますか?お風呂にしますか?それとも私ですか?」
別れて暮らしていた妹と、共同生活。
その初日。
俺を出迎えた妹は、そう尋ねた。
おかしい。
「・・・雪華・・・?何を言っているんだ・・・?」
冗談・・・という顔にも見えない。
というか、俺に抱きついてきているのが、おかしい。
俺は高校3年、妹は高校1年。
決して、抱きついて良い年齢ではない筈だ。
俺の戸惑った様子を見て、妹が可愛らしい様子で小首を傾げ、
「お風呂、御背中をお流しすれば宜しいでしょうか?」
よろしくない。
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俺と妹は、2年程離れて暮らしていた。
別に、深い事情が有る訳ではない。
高校進学の際に1人暮らし、妹も近所の高校にしたので同じ部屋に住む事に。
俺と妹は、別に普通の関係だった。
決して仲が悪くは無いが、良すぎる事は無い。
なのに・・・
「お兄様?!お兄様、何故開けて頂けないのですか?お部屋に鍵が掛かっていては、子をなせませんよ?!」
「なさねえよ?!」
しん・・・
1呼吸置いて、
「お兄様、申し訳有りません・・・そうですよね・・・高校卒業までは避妊はしますよね!」
「そういう問題じゃ無い!」
何故こうなった・・・?
繰り返すが、俺の妹は別に、お兄ちゃんだ~い好き、とかそういう人種じゃない。
いや、なかった。
少なくとも、正月に実家に帰った時には。
「何が・・・どうなったんだ・・・?良いか、雪華。俺達は兄妹だぞ?」
「そうですよ?だから結婚するんですよね」
何でだよ。
本気で何でだよ。
おかしいだろう。
「あのな・・・俺は、お前とは、結婚しない」
しん・・・
静寂。
ややあって。
「そんな?!お兄様と私は結婚する運命なのですよ?!」
「何でだよ!」
おかしい。
・・・どうすれば・・・そうだ・・・
「雪華、俺はお前とは結婚出来ない。俺には彼女がいるからな」
「・・・?!約束はどうしたのですか?!」
約束?!
断言しよう。
繰り返すが、俺と妹は、別に凄く仲が良いとかではない。
俺が約束を忘れていて、実は子供の頃に書いた婚姻届が出てきて・・・という事もない。
「約束なんて、していないぞ。いつ俺が約束したんだ?」
子供の頃とか言うんだろうけど。
「え、前世ですけど?」
さも当然といった様子で、雪華が言う。
・・・
そういう事かああああ。
俺は全てを悟った。
妹は・・・
厨ニ病を発症していたのだ。
しかも重度の。




