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帰路  作者: キタムラカメラ
2/6

座敷牢

「ザシキ…ロウ?なにそれ」

女は知らないようだった。

「知ってるか?」

「知らない。」

「ああそう。」

やはり知らなかったようだ。

「座敷牢っていうのは、家の中に牢屋を作るんだよ。」

「え、なんで。」

「まぁ、家の人が頭オカシクなっちゃたりして、そのままにしたら暴れるから、家に作った座敷牢を作ってとじこめておくんだよ。まぁ昔の話だけどね。」

「なにそれヤバそう。」

いつものような何も考えていないような返事をした。女は私の大学の友人である。まぁはねっ返りではあるがいいヤツである。そんな彼女が「座敷牢」なんて言葉を発することになったのは、私の相談が故である。私は彼女に二日続けてみている夢について相談したのだ。

その夢の中で、私は広い和室の真ん中に立っている。今まで、見たことのないような古い日本家屋であった。その和室の縁側の傍であり、襖は空いている。夕方のように赤い日が差し込んできている。私は歩き出し、縁側に出た。庭はそこまで広くなく、ブロック塀が見えるだけである。しかし、小さな建物が立っている。木でできたみすぼらしい小屋である。その扉は微妙に開いていて、中に赤い太陽光線が差し込んでいる。そのわずかの隙間から日差しに照らされた鉄格子が覘いている。

そこで目覚める。やはり夢の小屋は座敷牢なのだろうと思う。だから彼女には、座敷牢のある見知らぬ日本家屋に夕方ごろ、冴えない男子大学生が出現する夢を二日続けて見たんだけど、という相談をしたわけだ。

そもそも、二日続けて同じ夢を見るだろうかとうい点が疑問である。そういう話はよくある怪談ぐらいでしか聞かないが。

「なんか怖い夢だね。呪われてるのかもよ?」

「呪われる理由がないんだよなぁ。」

とは言ったものの、こんな不気味な夢を二回も見るのだから呪われていると考えてもおかしくはない。しかし、先述の通り呪われるようなことは今まで20年一切したことがない。

その日も同じ夢を見た。なんだか気味が悪い。ビビりなので一人暮らし用の狭い部屋でもびくびくするようになった。

その日の夜はオールしようかと考えていた。あんな夢は見たくないし、次の日は深い眠りについて夢を見ずに済む。そこでエナジードリンクを二本買ってきた。しかし、午前二時を過ぎた辺りからものすごい眠気が襲ってきた。眠りまいとウトウトしながら目を閉じたり開けたりを繰り返しているうちに、椅子に座ったまま眠りに落ちてしまった。

気が付くと、あの和室にいた。私は例によって縁側に歩き出し、庭のみすぼらしい小屋を発見し、中に鉄格子があるので座敷牢だと推測した。すると、もと居た和室からバタリと何かが倒れた音がした。振り返って和室を見ると、めちゃくちゃになった長い髪の白い長襦袢を着た女性が倒れていた。その女性はその態勢のままこちらを見上げた。長いボサボサの髪の間から、怒りの表情が覘いていた。しかし、その目は虚ろで、精気が宿っていなかった。その女は「アァ。ウゥ」とか唸っていた。狂人が出てしまっては座敷牢はある意味がないではないか。と思った。

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