表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

第一話「轟 拳」

そこは夕暮れの世界。空は暗く、うっすらと星が見えるその世界のとある森、その中心に少年がいた。


「ここは……」


少年は辺りを見渡した。辺りを見渡しても特に何も無い普通の森。


少年は何も考えずに歩く。

少年が歩いていると、森の奥から悲鳴に似た声が聞こえた。声は少し高めで若い女の声のように聞こえ、少年はその声がなんとなく気になり、声のした方向へ足を向ける。


「やめてっ!離してっ!!」


少年が見たのは、コートを着た男とフードを被った男の二人組が、少女を捕まえて乱暴しようとしているところだった。


「……」


少年は関わらないでおこうと思い、その場から立ち去ろうとした。


少年が逃げようとした時、足元にあった木の枝を踏み、『パキッ』と音を鳴らしてしまう。コートの男はそれに気づき、少年に手のひらを向け光の弾を放った。


「ーーッ!」


少年の本能がそうさせたのだろうか、間一髪で光の弾を避け、木の影に隠れながらその場から走り去る。少年の背後にあった木は爆発と同時に、粉々に砕ける。

少年は驚き、軽度のパニック状態に陥る。


なんだあれは、何も無いところから何を出した?


「チッ、外したか。女を離すんじゃねぇぞ!」


コートを着た男は、もう一人のフードを被った男に命令して少年を追う。


「はぁ、はぁ」


少年は息を切らして木に凭れ掛かる。


どうすれば逃げ切れるのか。どうすれば助かるのか。

少年はそればかり考えていた。その時……


「あの女、どうなるんだろうな」


自分のことしか考えてなかった少年はふと、捕まっていた少女を思い浮かべた。


「出てこいクソガキッ!!」


コートの男が光の弾をばら撒くように、四方八方に放ってくる。爆発音と、木々の砕ける破砕音が森の中に木霊する。

少年は更にパニックに陥る。

本当に助かるのか。そもそも逃げ切れるのか。そう考えていた時、突然爆発音と破砕音が止み、森の中に静寂が訪れる。

少年はゆっくりと立ち上がり、その場から逃げ出そうとした。


「見つけたぞクソガキッ!!」

「ーーッ!」


コートの男は少年の目の前に立ち塞がり、少年の頭を両手で掴もうとしてきた。少年は咄嗟に右ストレートをコートの男に顔を食らわせる。男は一瞬宙を舞ってから落下し、衝撃で気絶した。目の前で起きた出来事に、少年は困惑した。


「……っ」


暫くして我に返り、少年は逃げ出そうとした。

しかし、少年が逃げ出そうとすると、何故か少女のことを思い出す。


「ーーっ」


少年は数秒その場で立ち止まったが、すぐに来た道を戻り始めた。

少年が戻ると、少女の服は引き裂かれ、フードの男に押さえつけられていた。


「いい声で泣いてくれよ?イヒヒヒッ」

「やめて!触らないで!!」


少女は押さえつけられながらも、必死に踠いていた。しかしフードの男は少女を更に強く押さえつけ、下心丸出しな手付きで少女に触れようとしている。


「ーーッ!」


少年は咄嗟に、足元に落ちていた手のひらサイズの石を拾い、フードの男に投石する。投げられた石は一直線にフードの男に飛んでいき、男の顔に直撃する。


「痛ッ!?」


フードの男が石が飛んできた方を向くと、男は少年を視界に捉える。


「あ、貴方は……どうして!」

「あの野郎しくじったな……仕方ねぇ!テメェから相手してやるよッ!」


フードの男が少年に紅い弾を放つ、少年は横ステップしてそれを回避した。赤い弾は少年に当たることなく背後の木に当たり、直撃した木が燃え上がる。


ーーやはり!こいつらが撃つ弾は、直線にしか飛ばない!

少年は一気に距離を詰める。フードを被った男はありえないと想定外の事態に目を白黒にしながらも、即座に土を操り、即席の土壁を作って身を守ろうとする。


「ッ!!」


しかし少年の右ストレートが即席の土壁を容易く貫き、フード男を殴り飛ばす。男は背後にあった木に体を強く打ち付けて気絶する。


「土の壁を、まるで無かったかのように……貴方、一体何者?どうして私を助けたの?」


少年は、不思議そうな表情で答える。


「何故かは俺もよくわからない。でも、少なくとも助けたくてこんなことをしたわけじゃない。」

「じゃあ、どうして……」

「ムカついたから殴った、それだけだ。」


少女は納得がいかなかった。なにか理由があるのではないかと思い、更に質問を投げ掛ける。


「そんなことないわ、何が目的なの。なんで助けたの。」

「助けたわけじゃない、殴りたいから殴ったそれ以外に理由はない。」


少年はそう言い、その場から立ち去ろうとした。


「待ちなさい……貴方、名前は?」

「……」

「……」


少年は少し立ち止まってから深いため息をつき、少女の方を振り向いて、重たい口を開く。


(とどろき)……轟 (けん)。」

「轟……拳……私は、サクラ。」

「……」


拳は無言で、その場から歩き去る。

サクラと名乗る少女は、拳の後を追う事にした。轟 拳という男が何者なのかを知るために。

サクラは、拳の言うことを聞かずに勝手について来る。


拳は、面倒なことになった。と思った……しかし、彼はまだ知らない。これがまだ、始まりだということに。


ーーこれは、黄昏の世界という異世界で繰り広げられる。轟 拳という少年の、物語である。

協力者

心優しい友人から

黒鳶

葉雪

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ