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第9話 二人でお風呂(前)

今回は、TSにありがちな女性化した身体と。

残った男の精神との、葛藤(かっとう)の話です。



 「(ユサユサ)」


 「ねえ、ケンちゃん。

 そろそろ、お風呂に入ろ〜」


 「……ふぁあ〜」




 健二は、姉の太ももの感触の良さを、感じている内に寝てしまい。

優が気持ち良さそうに寝ている弟を、ニコニコしながら膝枕をしていると。

思い出した様に、そう言いながら健二を揺さぶった。


 その揺れを受けた健二が、アクビをしながら起きだす。




 「それじゃあ、着替えを持って来てね」


 「……うん」




 姉からそう言われた健二が、寝ぼけ眼で返事をした後。

自分の部屋へと向かった。




 **********




 「着替え持ってきたよぉ〜」


 「じゃあ、入ろうね」




 スッカリ目が覚めた健二が、着替えを持ってきた所で。

先に待っていた優が、そう言って二人一緒に脱衣所へと入る。


 そもそも、健二は小学校に入る頃には、一人で風呂に入る様になっていたのだが。

ただし、それは、優の手を(わずら)わせたくなかったからであり。

それ以前は、一緒に入っていたのである。


 しかし、優が女性化して、健二が幼児退行した時。

健二の世話をするために、一緒に入り出して以降。

再び、一緒に入るようになったのだ。


 それ以降、二人は、何となく一緒に入っていたのだが。

健二は優と一緒に入ると、記憶に朧気(おぼろげ)ながらある、母親を思い出し。

優も幼い健二と、一緒に入っていた頃を思い出していたのもあった。




 「は〜い〜、ケンちゃん、バンザイ〜」


 「(スルッ)」


 「今度は、片足上げてね〜」




 脱衣所に入ると、優は次々と弟の服を脱がせ。

その姉の言葉に、健二は素直に従う。


 幼児退行していた時のように、優は健二を(あつ)っていたのだ。


 幼児退行から覚めた現在。

普通、この年頃ながら、幼児のようにされる事に反発するものだが。

思いやりのある健二は、自分の事を思ってくれている優に、反発するのが(もう)(わけ)なく。

また、女性的な優しさに甘えたくて、()すがままになっていたのである。




 「はい、先に湯船に入ってなさい」


 「は〜い〜」


 「入る時、かけ湯をしてからね〜」


 「もお〜、それくらい分かるよ〜」




 優は、健二を服を脱がせ、先に風呂場へと送った。




 ・・・




 「(はあ〜。

 また、これを見るのかあ〜)」




 弟を先に風呂場に送ってから、優は心の中で溜め息を付く。


 健二が風呂場に入ったのを確認してから、自分の服を脱ぎ始める。




 「(うっ!)」




 優が、着ているワンピースの後ろのジッパー下ろし。

そこから現れた姿を見て、絶句する。


 姿見の鏡から見える、優自身は。

まるで、雑誌のカラーページに乗るほどのスタイルで。

その肢体(したい)には、純白でレースの縁取(ふちど)りがされた。

可愛らしいデザインの下着を身に付けいている。


 優はまだ、女性用の下着を着けた自分の姿に、慣れ切っていなかった。


 自分が身に着けている物にも関わらず。

それを見ると、何だか落ち着かなくなる。


 自分のでもそうだから。

学校で、同級生たちと一緒に着替えをする時など。

必死で意識を()らせないと、いけない位である。


 なので、自分で下着を買わないといけない時は。

ネット通販で、出来るだけ抵抗感が少ないデザインの物を選んでいた。



 「(早く、脱がないと……)」




 気を取り直して、優は下着を脱ぎ出す。




 「(はあ〜、大きいなあ……)」




 ブラジャーを脱ぐと、同年代に比べ大きな乳房が現れた。


 それを見て優は、相変わらずの大きさに、再び溜め息を付く。


 意外な事に自分の身体の方は、多少、慣れたようだ。


 しかし、女性化した最初の頃は、その魅力的な身体に興奮し。

誰も居ないのを見計(みはか)らい、密かにイケナイ事をしていた時もあった。


 逆に、それもあってか。

自分の身体に関しては、ある程度は慣れてしまったみたいだが。


 ちなみに、その大きな乳房は同級生女子の格好の標的で。

隙を見せると、後ろから揉まれ、その度に優は(もだ)えていた。




 「(ドキドキドキ)」




 それからショーツを脚から抜き、それを見ていると鼓動が激しくなる。


 高校生男子のままなら。

普通は手に取るどころか、偶然(パンチラ)でも無ければ、生で見ることすら叶わない。

女物のパンツを手にしているからである。


 優は男だった時も、多少奥手だが。

やはり健康な男子だけあって、女性の身体への関心はそれなりにあった。


 身体が女性化し、精神的にもだいぶん女性化としているとは言え。

そういった、性的な意味での男の部分も(わず)かにだが、それなりに残っているので。

女物のパンツを手にして、ドキドキしていたのだ。




 「(はっ! 早くケンちゃんの所に行かないと)」




 気を取り直した優が、脱いだ下着を慌てて洗濯機に放り込むと。

急いで、風呂場へと向かったのだった。



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