第9話 二人でお風呂(前)
今回は、TSにありがちな女性化した身体と。
残った男の精神との、葛藤の話です。
「(ユサユサ)」
「ねえ、ケンちゃん。
そろそろ、お風呂に入ろ〜」
「……ふぁあ〜」
健二は、姉の太ももの感触の良さを、感じている内に寝てしまい。
優が気持ち良さそうに寝ている弟を、ニコニコしながら膝枕をしていると。
思い出した様に、そう言いながら健二を揺さぶった。
その揺れを受けた健二が、アクビをしながら起きだす。
「それじゃあ、着替えを持って来てね」
「……うん」
姉からそう言われた健二が、寝ぼけ眼で返事をした後。
自分の部屋へと向かった。
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「着替え持ってきたよぉ〜」
「じゃあ、入ろうね」
スッカリ目が覚めた健二が、着替えを持ってきた所で。
先に待っていた優が、そう言って二人一緒に脱衣所へと入る。
そもそも、健二は小学校に入る頃には、一人で風呂に入る様になっていたのだが。
ただし、それは、優の手を煩わせたくなかったからであり。
それ以前は、一緒に入っていたのである。
しかし、優が女性化して、健二が幼児退行した時。
健二の世話をするために、一緒に入り出して以降。
再び、一緒に入るようになったのだ。
それ以降、二人は、何となく一緒に入っていたのだが。
健二は優と一緒に入ると、記憶に朧気ながらある、母親を思い出し。
優も幼い健二と、一緒に入っていた頃を思い出していたのもあった。
「は〜い〜、ケンちゃん、バンザイ〜」
「(スルッ)」
「今度は、片足上げてね〜」
脱衣所に入ると、優は次々と弟の服を脱がせ。
その姉の言葉に、健二は素直に従う。
幼児退行していた時のように、優は健二を扱っていたのだ。
幼児退行から覚めた現在。
普通、この年頃ながら、幼児のようにされる事に反発するものだが。
思いやりのある健二は、自分の事を思ってくれている優に、反発するのが申し訳なく。
また、女性的な優しさに甘えたくて、為すがままになっていたのである。
「はい、先に湯船に入ってなさい」
「は〜い〜」
「入る時、かけ湯をしてからね〜」
「もお〜、それくらい分かるよ〜」
優は、健二を服を脱がせ、先に風呂場へと送った。
・・・
「(はあ〜。
また、これを見るのかあ〜)」
弟を先に風呂場に送ってから、優は心の中で溜め息を付く。
健二が風呂場に入ったのを確認してから、自分の服を脱ぎ始める。
「(うっ!)」
優が、着ているワンピースの後ろのジッパー下ろし。
そこから現れた姿を見て、絶句する。
姿見の鏡から見える、優自身は。
まるで、雑誌のカラーページに乗るほどのスタイルで。
その肢体には、純白でレースの縁取りがされた。
可愛らしいデザインの下着を身に付けいている。
優はまだ、女性用の下着を着けた自分の姿に、慣れ切っていなかった。
自分が身に着けている物にも関わらず。
それを見ると、何だか落ち着かなくなる。
自分のでもそうだから。
学校で、同級生たちと一緒に着替えをする時など。
必死で意識を逸らせないと、いけない位である。
なので、自分で下着を買わないといけない時は。
ネット通販で、出来るだけ抵抗感が少ないデザインの物を選んでいた。
「(早く、脱がないと……)」
気を取り直して、優は下着を脱ぎ出す。
「(はあ〜、大きいなあ……)」
ブラジャーを脱ぐと、同年代に比べ大きな乳房が現れた。
それを見て優は、相変わらずの大きさに、再び溜め息を付く。
意外な事に自分の身体の方は、多少、慣れたようだ。
しかし、女性化した最初の頃は、その魅力的な身体に興奮し。
誰も居ないのを見計らい、密かにイケナイ事をしていた時もあった。
逆に、それもあってか。
自分の身体に関しては、ある程度は慣れてしまったみたいだが。
ちなみに、その大きな乳房は同級生女子の格好の標的で。
隙を見せると、後ろから揉まれ、その度に優は悶えていた。
「(ドキドキドキ)」
それからショーツを脚から抜き、それを見ていると鼓動が激しくなる。
高校生男子のままなら。
普通は手に取るどころか、偶然でも無ければ、生で見ることすら叶わない。
女物のパンツを手にしているからである。
優は男だった時も、多少奥手だが。
やはり健康な男子だけあって、女性の身体への関心はそれなりにあった。
身体が女性化し、精神的にもだいぶん女性化としているとは言え。
そういった、性的な意味での男の部分も僅かにだが、それなりに残っているので。
女物のパンツを手にして、ドキドキしていたのだ。
「(はっ! 早くケンちゃんの所に行かないと)」
気を取り直した優が、脱いだ下着を慌てて洗濯機に放り込むと。
急いで、風呂場へと向かったのだった。