第8話 弟の耳掃除
「(ゴシゴシゴシ)」
「〜〜♪」
夕食が終わり。
優は流しで、御機嫌で食器を洗っていた。
それは多分、弟が美味しそうに食べてくれたからだろう。
「(ガチャガチャ)」
「はい、おねえちゃん」
「ケンちゃん、ありがとう〜」
もちろん健二も、後片付けを手伝っていた。
手伝っている弟に、優は笑顔でお礼を言う。
ただ甘えるだけでなく、何気に姉を手伝ってくれている。
もっとも、手伝うと褒めてくれると言うのも、あるのだが。
しかし、それでも姉の手伝いを積極的にしてくれる、良い子であった。
「(シャーー)」
「〜〜♪」
優は、自分の手伝いをしてくれる良い子の弟に、気分を良くし。
ますます御機嫌な様子で、食器を洗っていくのだった。
**********
「(アハハハ〜)」
「……」
「……」
夕食後。
二人はTVが点いた居間で、ソファーに座ってリラックスしている。
TVから流れているのは、お笑い番組らしいが。
二人は、TVの騒がしい画面を、見てはいなかった。
「(……なで、……なで)」
優は、隣に座る弟を抱き寄せ。
胸に抱き締めながら、ひたすら頭を撫で続け。
健二は、姉の同年代に比べ豊かな胸に頬を寄せ。
黙って、為すがままになっていた
つまり二人は、お互いの感触に集中していたのである。
「ねえ、ケンちゃん」
「……なあにぃ〜」
本当だったら、弟を膝の上に載せて愛でたいのだけど。
流石に、もう苦しいので、残念に思っていた優が。
おもむろに、健二に問いかけると。
柔らかく温かい感触と、良い匂いに包まれた健二が。
ウットリとした口調で、返事をした。
「久しぶりに、耳掃除しよっ」
「……うん…」
優が続いて、そう言ったのだが。
健二は夢見心地のままだったので、生返事を返すだけだった。
「チョット待っててね」
「……あっ」
すると、すぐに優がソファーから立ち上がり、どこかに行き。
そこでようやく、健二が正気になった。
「はい、お姉ちゃんの太ももに頭を乘せて」
「(ポンポン)」
しばらくして、右手に耳かきを持った優が戻り。
再び健二の隣に座り、自分の太ももを叩いて乗せるように促す。
その言葉に、健二がソファー上に体を横にして横たわり。
頭を、姉の太ももに乗せる。
「痛かったら、言ってね」
「……うん」
優がそう言うが、姉の柔らかくて暖かな太ももに頭を乘せたので。
健二が、再びウットリとした口調で返事をした。
・・・
「はい、終わったよ」
途中、健二の肩を叩いて、頭の向きを変えさせながら。
ようやく、優は弟の耳掃除を終える。
ティシュに集めた、取った物をゴミ箱に捨てた後も。
優はまだ、健二の頭を太ももに乗せたままにしていた。
「どお、気持ち良かった〜?」
「……うん、きもちいいよぉ…」
優が健二に聞いてみると、健二が相変わらずの口調で答えるが。
気持ち良いのは、恐らく、柔らかくて温かい姉の太ももの感触の所為だろう。
「くすくすくす」
健二の答えの、本当の理由を理解した優が、軽く笑う。
「もう少し、このまま寝ていなさい」
「……うん」
「(……なで、……なで)」
しかし、それでも、弟が満足している事を分かった優が。
今度は、仰向けに寝ている健二の、頭を撫で始める。
「(……ポン、……ポン)」
優は頭を撫でるだけでなく、頬を撫でたり耳の裏をくすぐったり。
あるいは、胸を指先で軽く叩いたりして健二を可愛がる
優は、自分の膝で寝ている弟を愛で。
健二は、姉にされるがままになって、可愛がられていた。
こうして二人は、居間でしばらくマッタリと過ごしていたのである。