表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/11

第3話 可哀想(かわいそう)な弟


 それから2ヶ月ほど、健二は毎日、沈んだ表情のままで。

夜になると、母を恋しがり泣くようになった。




 「おかあ〜さ〜ん〜! どこにいるのぉ〜!」


 「……ケンちゃん」





 その度に優は、健二を(なぐさ)めようとするが。

なかなか泣き止まず、優は困り果ててしまっていた。




 **********




 時が立つに従い。

そうやって泣いても、母親が帰ることが無いのを、(いや)が上でも悟ったのか。

泣くことを止め、表面上は平常通りに戻った。


 しかし時折、夜中に。




 「(……グスン、……グスン)」




 寝ながら(すす)り泣く事もあった。


 どうやら、母親の夢を見ているようだ。




 「(……ぎゅっ…、……なでなで…)」




 母親が居なくなり、父親も仕事で家を空ける事が多いので。

代わりに一緒に寝ていた優が、その声に驚き目を覚まし。

寝ている弟を、抱き締めながら慰める事もあったのである。




 ・・・




 それから,しばらく()っても。

健二が、まだ影のある表情をすることが時々あり。




 「ケンちゃん、大丈夫?」


 「うんん、大丈夫だよ、おにいちゃん」




 そんな、健二の心の寂しさを(さっ)し。

優は、何とか弟を慰めようとするが。

健二の方も、自分の面倒を見てくれている兄を心配させないようにと、無理をしていた。


 そう言った、思いやりのある部分では、似ている二人である。


 そんな微妙な関係が何年も続いた、ある日の朝。




 「ケンちゃん、ほらっ、行こう」


 「うん!」




 優が健二を連れて、幼稚園へと向かう。


 父親が仕事で忙しいので、家の事はもちろん。

健二の世話すべて、優が行っていた。


 中学になった優が、学生服を着て。

スモッグと黄色い帽子を被った健二と、手を繋いで歩いている。


 そうやって、しばらく歩いていると。




 「どうしたの? ケンちゃん」


 「ううん、何でも無いよ。おにいちゃん」




 急に、健二の歩くスピードが遅くなったので。

優が、弟の顔を(のぞ)き込むようにして聞いてみる。


 健二が、慌てて前を向き直すが。

その見ていた方向を見ていると、一組の親子が、歩いているのが見えた。


 子供の方は、同じ幼稚園の園児らしく。

スモッグと帽子は同じだが、お下げ髪な上、スカートを穿()いているので。

離れていても、女の子だと分かる。


 その女の子は、母親に連れられていた。




 「(キャッキャッ)」




 女の子は母親にしがみつき、楽しそうにハシャいでいて。

母親も、微笑みながら女の子に相槌(あいづち)を打っている


 その親子を見ていた、健二の顔は。

一瞬だったが、とても(うらや)ましそうな顔をしていた。




 ・・・




 この様に、街角やテレビなどで。

子供が甘えている、母子(おやこ)連れを見るたび。

健二が羨ましい、あるいは寂しそうな表情をする時があり。


 七夕の短冊に、”おかあさんにあいたい”と書いたと、幼稚園の先生から聞いた時には。

優の胸に、痛みが走った。


 どんなに優が、母親代わりになろうとしても、弟が満たされる事は無かったのだ。


 少なくとも女性的な優しさや温かさを、健二に与える事がどうしても出来ない。


 男の自分では、それらを与えれる事を出来ないと痛感する。




 「(……僕が少なくとも女の子なら、少しは違うのかもしれないけど)」




 そんな事を考えてしまう、優であった。


 しかし、それから二年ほど経った頃。

その優の身に、予想外の事が起きてしまうのである。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男として生きる事に疲れた少年が、ある日、美少女に精神が転移し。
その美少女の弟と、ほのぼのとしながらイチャイチャする物語。
・優しいお姉ちゃんと可愛い弟
TSじゃ有りませんが、美少年ショタがお姉様方のオモチャ・・・、いや可愛がられる物語。
・涼くんの甘い受難
姉弟物の短編を取り揃えていますので、どうかご覧ください。
・星空プロフィール

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ