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第2話 全ての始まりと誓(ちか)い



 「ケンちゃん…」


 「おねえちゃん…」




 こうして玄関先で、少女と男の子はお互い抱き合っていた。


 少女は弟の頭を撫でて、(いつく)しむように可愛がり。

男の子は姉の豊かな胸に顔を埋め、全てを(ゆだ)ね甘えているが。

しかし元々、二人は()弟ではなく、()弟であったのだ。




 ************




 少女は名前を渋山優(しぶやまゆう)と言い、現在16歳の高校一年生である。


 彼女は、学校では。

その同年代離れした人目を引く外見とは相反する、居心地が良い、穏やかで安心できる性格のため。

男女問わず人気を(はく)していた。


 そして、その弟である健二(けんじ)は、小学四年生で9歳である。


 家族は姉弟のほかは、父親だけであり。

母親は、6年ほど前に亡くなっていた。




 ・・・ 




 話は(さかのぼ)り、6年ほど前のある日。


 その訃報(ふほう)は、急にもたらされた。


 母親が外出先で、横断歩道を渡っていた所。

脇見運転のトラックに(はね)ねられたのである。


 ほぼ、即死状態であったのだと言う。


 優は最初、小学校の授業中、それを聞いた時。

余りの事に思考が追いつかず、頭が真っ白になった。


 とりあえず、迎えに来た父親に、そのままの状態で家に帰るが。

信じられない事態と、慌ただしく動く周囲に翻弄(ほんろう)され、優が呆然(ぼうぜん)としていたら。

いつの間にか、自分の周りが黒い物で囲まれていた事に、気付く。


 自分が知らない、大きな座敷の様なところに居て。

部屋の奥の方には、花が飾られた階段の最上段には母親の写真。

下段には、大きくて長方形の木の箱があり。




 「(ポクポクポク……)」


 「観自在、菩薩〜〜〜〜〜〜〜…」




 その木の箱の前には。

髪の無いおじさんが何かを叩きながら、良く通る大きな声で何かを言っているのが聞こえる。


 部屋の壁に沿って。

左右一列には、黒い服を着た人達が、静かに座っており。


 隣には。

普段、余り一緒に居る事がない父親が。

何かに耐えるような顔をしているのが見える。



 目の前の光景を見て優は、TVでよく見る葬式の光景である事が分かり。

それにより、自分の母親が、もうこの世には居ないことを、ようやく理解した。




 ・・・




 「(……本当に、お母さんは死んでしまったの……)」




 その事に気付き。

やっと、母親がこの居ないことを、心から理解すると。

押し潰されそうな悲しみに、襲われになった。




 「…ウッ……、…ウッウッウッ……」




 しかし、部屋の隅から、すすり泣くような声が聞こえ。

優が、そちらの方を見てみたら。

親戚のおばさん達が、何人か集まり。

弟の健二が、その中の一人に、膝枕をされた状態で寝ているが見える。




 「可哀想(かわいそう)に…」


 「ほんと。

 もうすぐ四歳になろうとしている時に、急に母親が死んでしまうなんて…」


 「そうよね、これから一番必要な時に。

 母親の愛情を受けられないまま、育って行かなければならないって…」




 健二は、黒のショートパンツに白いシャツと、黒いネクタイと言う。

この場に合った、格好をしていたが。

泣き疲れたのか、目の周りを赤く腫らしたままで寝ていた。



 その、おばさん達の会話を聞いて、優はショックを受ける。





 「(そうだ! 僕だけじゃないんだ!)」


 「(僕には、まだ、お母さんとの。

 昔の楽しかった思い出があるかもしれないけど。

 ケンちゃんには、その楽しい思い出も(わず)かしかないし。

 その思い出も大きくなるに従い、多分だんだん忘れてしまう……)」




 それと同時に、そんな事も思い始める。




 「(出来るかどうか分からないけど。

 これからは、僕がケンちゃんのお母さんの代わりになろう……)」 




 そう思うと。

押し潰されそうな悲しみに、かろじて耐えられそうな気がした。


 こうして優は、口をキツく閉めてながら。

泣き疲れている、健二を見詰めていたのであった。



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