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サボタージュ

 ハンナとの待ち合わせをすっぽかした僕は、特にやることもないので剣と盾と酒とナイフを持って町の外れの林に魔物を狩りに来ていた。


 魔物狩りはギルドを介すと報酬が貰えるのだが、今回は町のギルドに行くとハンナと会ってしまう可能性が高いので、仕方なく個人でやることにした。


 魔物から得られる毛皮や牙等の素材や、肉などの食料を売り払うのも割と良い金になるからいいのだ。


 そんなこんなでブラブラしていると唐突に背後に視線を感じた。素早く振り替えると、木々の奥、10メートル程離れた所にある草の茂みからこちらを睨む獣系の魔物を確認できた。


 魔物は動物とは比べ物にならないとんでもない潜在能力を持っている。


 隙を見せぬ様、おもむろに剣を抜き盾を構えた。前の世界では殆ど得ることが無かった、命をかけた戦いの緊張感に僕は既に魅せられている。


 魔物は人間を見かけると自分が死ぬか相手を殺すまで逃げることはない。戦闘能力が無い一般人にとっては脅威的な存在だが、僕にはこの世界で備わった勇者としての力がある。しかし、油断をすれば命は無い。そのギリギリの匙加減が僕を魔物狩りの虜にする。

 

 ジリジリとこちらを窺う魔物、構える僕。緊張により加速する呼吸と鼓動。僕は奴を誘いこむ為に構えを少し緩める。


 瞬間、魔物が駆ける。

 デカイ、早い。ベージュ色。

 熊の様な体に少し人間の様な顔。


 勝負は一瞬。


 突進しながら首筋を狙う口に僕は剣を突き立てる。剣は魔物の喉奥をとらえ、首の後ろを貫通した。

 

 やった!!


 しかし魔物の突進の勢いを殺せず、僕は3メートル程ぶっとばされてしまった。


 「ぐはぁ!!」


 よく漫画で「ぐはぁ」と言う言葉を見かけたが、まさか自分が言うことになるとは思わなかった。

 全身がズキズキと痛むが、なんとか骨は折れてない様だ。勇者パワー様々だ。 


 すかさず体制を立て直し魔物を確認する。


 喉に剣が刺さりながらも、こちらへの追撃を狙っている。なんという生命力。だが、激しい出血をしていて動きも鈍い。動物ならば逃げ出しているかもしれないが、魔物が人間相手に逃げることはない。こうなれば後は簡単、ひたすら攻撃を避けて出血による絶命を待てばいい。


 口に剣が縦に刺さったヤツは噛みつく事が殆どできない。よって必然的に腕での攻撃か突進に頼る。僕はその攻撃をマタドールさながらに避ける、勇者的な動体視力と身のこなしを持つ僕にその攻撃が当たる事はない。


 そこから程なくして魔物は倒れて動かなくなった。


 僕は念のため、動かなくなった魔物に慎重に近づき、ナイフを首に数回突き刺して完全な絶命を確認すると、その死体に腰掛け酒瓶に口をつけた。


 「っかぁ~!うまい!」


 命のやりとりの後の酒は世界で一番うまいと断言できる。惜しむらくはこれがヒルデさんの入れた一杯じゃないことだけだ。ヒルデさんが出す一杯は、なんの変哲もないロックでも何故か一味違う。僕が真似してやってみても出せないあの味こそ、プロの仕事なのだろう。

 

 しかし、今更ながらに思ったが、こんな町からそう離れてもない場所にこんな素早い大型のモンスターが現れるのは相当危険なんじゃないだろうか。


 たまたま狩りに出かけてたのが僕だったからよかったものの、大抵の者はあの素早い動きとパワーに対応できなく、今頃魔物の美味しいごはんになっちゃってた筈だ。


 「このことは早くギルドに報告に行かなければな…」


 そう思った僕はハンナさんに見つからない様に気をつけてながら家路につき、風呂もままならないままベッドに横になり寝てしまったのだった!(魔物の死体は放置した)

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