22話目
今回もちょっと長めです。
&ちょっとだけえっちぃ?話です。
ネィルがカッツに話を始めた頃、クーネ達はほら穴の奥へと到着し湧き水を桶へ汲み始めていた。
「さぁクーネさん、着てる物を脱いでください。脱いだらこの布を濡らして身体拭いちゃってくださいね。」
「あ、あのエルミス?私一人でも大丈夫だからっ・・・て、なんでエルミス服脱ぎ始めるの!?」
「え?何でって・・・、私の服も汚れていますし一緒に洗ってしまおうかと。何故そのようなことを?」
不思議そうにクーネをみると、手で顔を覆ってエルミスが見えないようにしていた。
「待って、落ち着いて!?エルミス忘れてない?私中身は男だよ?そんな普通に服脱いじゃ・・・。」
「もう、クーネさん?いまさら何言っているんですか。今は『クーネさん』なのでしょう?女の子同士恥ずかしがること無いじゃないですか。」
「いや、そうだけど!そうじゃなくて!エルミスが平気でも私が恥ずかしいと言うか無理と言うか・・・!」
目を背け、見ないようにしているクーネを見つめるエルミス。
「無理って・・・。まさか女性の裸が苦手、とかじゃないですよね?それは無いですよねぇ、お風呂・・・にも入っていましたし。」
「あ、えっと・・・。うん、今までどうしようもない時以外は基本的に目を閉じてました・・・。」
クーネの答えに思わずびっくりしつつ今までのことを思い返すと、確かに宿での着替えなどの時、いつもクーネはその場にいないか、あるいはシーツに包まり寝ているかだった。
「あの、クーネさん・・・、いえ、セイジ様?不躾で申し訳ないのですがもしかして女性経験は・・・」
「ばっ・・・!や、やだなぁそんなわけ無いじゃない。人間40年も生きてればそれくらいは・・・。」
目をそらしながら呟くもののエルミスに顔をつかまれ、お互いの目を見つめ合う。訴えかけるような眼差しにクーネはついに観念し、
「あーもう!どうせ経験ないですよ!!仕事一辺倒でそんな余裕無かったんですよ!笑いたければ笑えばいいじゃない!」
「え?いえ、笑うようなことはしませんけど・・・。」
思わず「え?」と聞き返してしまうクーネに、エルミスはゆっくりと口を開き、
「何故笑われることがあるのです?お仕事をわき目も振らずに打ち込むほど集中されていたと言うことでしょう?
そんな素晴らしいことに対して尊敬こそしますけど、そのせいで何かを成し遂げられなかったとして笑われることなど無いと思います。」
「あ、えっと、その・・・ありがとう?」
笑われるものと思っていたクーネは、尊敬するなどと言われて逆に照れてしまい、どうしていいかわからずにとりあえずお礼だけを言っておいた。
「さて、そうなると少し問題ですね。この先クーネさんとして生きていく以上女性同士の付き合いの中で着替える場面や、他の女性の裸を見るという場面などに遭遇しないとも限りません。
まさか毎回逃げるわけにも行きませんし・・・。やはり少しは慣れていただかないといけませんね。どうしましょうか・・・。」
悩み始めたエルミスからそっと離れ、汚れた服を素早く脱ぐと桶に溜まった水で洗い流し、水を取り替え、洗った服を桶の中につけておく。
一緒に持ってきたマントを羽織り、肌を隠すとそのマントの中でもぞもぞと身体を拭き始め、ふとカッツとネィルの二人にして大丈夫かな、などと考えていたら
「クーネさん、ちょっと酷いじゃないですか!私だけじゃなく、あなたも考えてください。」
「いやぁ、考えるも何もゆっくりと慣れていくしかないのかな?と思って・・・。
心配しなくても大丈夫!女性の裸を見たことが無いわけじゃないし、間近で見る機会が無かっただけで、そのうち慣れるって!」
「え、それってもしかして・・・。あの、お仕事に一生懸命とのことでしたが、その・・・、女性の裸を覗いたりすることはされていたんですか・・・?」
そんな結論に至ったエルミスは少し引き気味になり、慌てるクーネ。
「ち、違う違う!えっと、この世界では何て言えばいいのかな。
姿を記録して、それを別のところで見れるようなものが元の世界にあったのよ。それで見たことがあるってだけで覗きなんて決して・・・、わっ!」
「きゃっ!」
説明しようと詰め寄った際にクーネが躓き、その勢いでエルミスを押し倒してしまった。
狙ったかのようにクーネの右手はエルミスの左胸をしっかりと掴んでおり、それに気付いて急いで手をどかそうとするクーネだが、エルミス本人の手によって動きを止められてしまう。
訳がわからずエルミスを見下ろしていると、少し照れくさそうに
「せっかくですから、私の裸を見て・・・少し慣れてください。」
「え、エルミスさん!?」
エルミスは掴まれていない右胸に当てている布をずらし、そのふくらみを露わにする。そして掴んでいた手を離し、左胸も続けて露わにする。
その動作につい見入ってしまい、エルミスの胸が全て露わになったとき、しばし視線が釘付けになった。だがすぐに我に返り、目を背け
「ちょっと、エルミス!落ち着こう!」
慌てて立ち上がろうとするが、再びエルミスに手を取られ、バランスを崩してエルミスの横に倒れてしまう。その隙にエルミスはクーネにまたがり、
「逃がしませんよ、これはクーネさんの為なんです。あの・・・そんなに私の裸はお嫌いですか・・・?」
「そ、そんなこと無いよ!というかエルミス、どうしたの!?なんかさっきから変だよ!?」
よく見るとエルミスの頬はうっすらと赤く上気させ、表情は妖しい笑みを浮かべている。
「そうですか?そんなこと無いですよ。私はクーネさんの為に何かしてあげたいだけです。いっそのこと女性に慣れてもらうために私のことを好きにしてくれても構いませんよ?」
「なっ!?まって!おかしい、絶対おかしいから!本当にどうした、の・・・って、あ、あれ・・・?」
地面に押さえつけられ必死にもがき、エルミスを説得するが、クーネ自身も意識がぼんやりとし始めていた。
(あれ、エルミスってこんなに・・・?じゃなくて、何とかしないと・・・、でもこのまま流れに任せても・・・、いや何を考えているんだ俺は!・・・あぁそうか、今は女なんだし未知の世界を知る機会・・・なのか?)
いろいろ考え始めるものの、どんどん思考能力が落ちて行き、そのうち考えることさえ面倒になってしまった。
「ふふ、クーネさん、いえ、セイジ様・・・。そうですよね、セイジ様は元々男性なんですよね。このように受け入れる側として相手を見上げるなんて考えもしませんでしたか?
えぇ、そうですね、男性の方だったんですよね。私をいたぶった人達と同じ男性なんですよね・・・!」
先ほどまでの妖しい笑みから一変して、同じ上気させた顔でも今度は明らかに怒りを表しており、クーネを殺気を込めて見下ろし、ゆっくりと首を絞め始めた。
「え?エ・・・エルミス・・・、く、苦し・・・。」
「よくも・・・私をあのような目に・・・!あなたも同じ目に合わせて差し上げ・・・、っ!?そう、そうですね、同じ目に合わせて・・・ふふふ・・・。」
首の戒めが解かれ咳き込むクーネだが、その瞬間にマントの結び目を解きそのまま広げ、一糸纏わぬ姿をエルミスの前に露出してしまう。
小さな悲鳴と共に胸を隠そうとするが、それはエルミスによって遮られ叶うことはなかった。
「や、ちょっと・・・。恥ずかし・・・。」
「ダメですよ、今からセイジ様にはどのような気持ちになるか知っていただくんですから。いいじゃないですか、男性の知らない女性の受ける恐怖を味わってください。」
「っ!?い、嫌!やだやめて!知ってる!その恐怖はすでに知ってる!!やだ、お願い!エルミスやめて!!」
エルミスの言葉を理解した時、クーネが野盗たちによって行われた記憶が蘇り、必死に抵抗するがまったく敵わない。だが、嫌がったこと自体は功を奏したようで、
「あ・・・。そうですよね。クーネさんは・・・。私は何と言うことを・・・。ごめんなさい、申し訳ありません・・・。クーネさん、許してください・・。」
涙を流し謝るエルミス。そんな様子を見てクーネはエルミスを引き寄せしっかりと抱き合い、
「エルミス、いいよ。怒ってないから。そうだよね、お互い酷い目に遭わされてるんだよね。元男といってもあの時の記憶を引き継いでるからどれだけの恐怖かも理解できてる。」
「クーネさん、お願いがあるんです。あの記憶を消したい、だから・・・、はしたない事とわかっているのですが、その・・・、私のことを・・・。」
「待って。それは出来ないよ・・・。出来ないけど・・・、一緒になら・・・。」
一瞬拒まれたと思ったが、その後に続く言葉にエルミスは安堵し、そしてしばらくお互い見つめあった後、どちらからとも無く唇を重ねた。
お互いを大事そうに舌を絡ませ、何度かのキスの後ゆっくりと顔を離す。クーネは深く息を吐き、
「エルミス、さっきも言ったけど私は知識だけで経験は無いんだ。だから、その・・・。」
「うふふ、いいんですよ。私がゆっくり教えてあげます。だから一緒に慰めあいましょう。」
お互いの手を絡ませ、もう一度キスをすると、今度はクーネの首筋、鎖骨あたりとキスをしていく。
「ふぁ・・・、エルミス・・・。」
「クーネさん、可愛い・・・。もっと素直に声を出してくれてもいいですよ。」
「そ、そんな・・・。」
「いや、さすがにそれ以上は止めてくれんか。それを聞かせられるこっちの事も考えてくれ。」
恥ずかしくて顔を真っ赤にするクーネだが、突然の乱入者に驚き、二人は声のほうを向くと呆れ顔のネィルが立っていた。
「ネィル!?」
「ネィルさん!?」
「クーネ、腕輪のおかげで会話が筒抜けになっておったぞ、まったく・・・。以前も言ったが扱いには気をつけろ。とりあえず腕輪に触れながら対象者のことは考えるな。」
愚痴るネィルだが、同時に会話を聞いていて何か違和感を感じていたために赴いてきたのだが、
「ネィルさん、愚痴るくらいならこちらに来てください。」
「そうだよ、せっかくネィルも今は女の子なんだし私達と一緒に、ね?」
「ふむ、確かに興味はあるから吝かではないが・・・、まぁ今のお前達とは遠慮させてもらおう。」
やはりおかしい、そう思ったネィルは二人の下に近寄り、手をパンッ叩く。
ネィルの手を叩く動作。過去にクーネを正気に戻したそれは、手に魔力を込め、対象者の近くで手を叩くことによって込めた魔力を弾けさせ、人の五感を刺激し精神的な異常を正す効果があった。
だが今回は今までと違い、それに驚く二人だったがそれだけだった。
「精神的なものではないのか。ならばしばらく眠っているといい。・・・スリープミスト!」
ネィルが手をかざすと二人を青い霧が包み込み、数秒後には霧の消えた場所で寝息を立てていた。
「まったく。別に情事にふけること自体は構わんのだがな?しかし、わが娘のそんな声を聞かされる親の身にもなってくれ。」
苦笑するネィルは寝ている二人を調べ始める。程なくしてエルミスの首筋とクーネの手の甲に小さな傷を見つけ、
「これは・・・、あの時の傷か?そういえばカッツが毒を含んだトゲのある植物がどうのと言っていたな。少し聞いてみるか。」
寝ている二人にシーツを掛け、カッツの元へと戻る。二人の状況を簡単に説明し毒が関係あるか尋ねて見たところ、どうやら正解のようだった。
その毒は感情の抑えを効かなくする効果があるようで精製すれば薬にもなるが、そのままだと感情の起伏が激しくなりすぎて情緒不安定になるという。
毒といってもそのものには致死性は無いのだが、その行き過ぎた感情で場合によっては人を殺したり、逆に自殺までしてしまうこともあるらしい。
対処としてはすぐに洗い流すか、毒の効果が現れても数時間で消えるので暴れたりしないように最悪拘束しておけばいいとの事だった。
致死性は無いと聞いて安心したネィルは、再び二人の元へと様子を見に行くと、当分起きそうも無いことを確認し、
「やれやれ、子供の世話をするのも親の務めか。とりあずは脱ぎ捨ててあるエルミスの服の洗濯と、二人の拭き取りか。」
文句を言いつつも、懐かしさを思い出しながら服を拾い始めるのだった。
裸描写はあるけど、ヤッてないしイッてないし邪魔されてるからセーフ、だよね?