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12話目

 日が昇り始め、まだ少しひんやりとした森林の中を3人の女性が茂みを掻き分けながら進んでいく。

 30分ほどすると林を抜け、目の前には草原が広がっていた。太陽の位置から方角を確認し、草原に出た3人は北西へと進む。

 まず最初に向かったのは、ソーグ草原の北西、ソーグ湿原を抜け、天高くそびえるブロディオン山のふもとにある、ブロディ山岳都市。

 途中の草原と湿原手前には宿場があり、そこで休憩を取りつつ向かう予定である。


「疲れたー・・・。」

「だから街道に出るまでは一気に行ってしまったほうがいいと言ったのに。」

「いや、それではクーネのためにならない。これもまた修行の一環と言うことで二人とも頑張るのだな。」


 二人の愚痴にネィルはピシャリと言い放つ。クーネは早くも自分の決めたルールに挫け始めていた。




 事の発端は出発直後のクーネの自分を鍛えたい、という提案だった。

 無敵モードと言う反則的な能力は、いざと言うときまで使用しない方がいいと思ったからである。


「普段から無敵モードを使わないというのは構わないが、いいのか?ただの村娘が旅をするとなると道中大変だと思うぞ。」

「もちろん覚悟の上よ。そもそも、私、と言うかクーネはその覚悟をして旅に出たのだし。そこで、ネィルにお願いがあるのだけど、冒険者として私の護衛と、私が冒険者としてある程度戦えるように鍛えて欲しいの。」

「ほう、冒険者か。なるほど、ギルドに登録しておけばいろいろと融通が利くと言うものか。」

「そういうこと。もともと私はギルドで冒険者を雇うつもりだったけど、ネィルたちが護衛してくれるなら節約できるでしょ?」

「あの、私は冒険者と言うのがまだよくわからないのですが、どういった職業なのでしょうか?」

「そうだな、簡単に言うと・・・」



 この世界における冒険者と言う意味は広い。

 主に一般的なモンスター退治や、場合によっては戦争に参加することもある戦闘系。

 各地を飛び回り、薬や武具の材料集めたり、あらゆる情報を集めて回る採取系。

 材料や資材で薬や武具、集まった情報をまとめ、それを広める生産系。

 当然、それぞれの系統にはさらに細かい職に分かれるし、掛け持ちも認められる。

 つまり何かの職についていれば、例外もあるが、全て冒険者足りえる。

 そしてそれぞれにレベルがあり、レベルに応じて受けられる依頼も当然変わる。


「冒険者としてのレベルは高いに越したことは無いけど、登録だけしてあればあとはわりと自由で、レベルアップもするしないは個人の自由。だから最高のレベル5より強い最低のレベル1がいる可能性もゼロじゃないのよ。」

「つまり我々が登録だけして後は自由に行動してもよい、と言うことだ。」

「ごく稀にだけど、ギルドからの緊急依頼なんていうのもあるけど、これを受ける受けないも自由。ただ報酬は破格だけどね。最近ので言えば魔王討伐?」

「ふん、まったく鬱陶しい連中だったわ。」


 その時の事を思い出し、おもわず愚痴る。そんなネィルを見つつ


「なるほど、便利なものなんですね・・・。しかし冒険者になれる年齢などは大丈夫なのですか?」

「あぁ、一応最低年齢は決まっているけど、あってないようなものよ。そもそもが見た目で判断するような冒険者は大した事ないと言うのが相場だしね。」

「ネィルさんのような容姿でも大丈夫、ということですか。安心しました」

「余計なお世話だ。」


 そっぽを向き頬を膨らませる。クーネはそんなしぐさも可愛いと思いつつ


「で、どうかな。受けてくれる?」

「うむ、いいだろう。ならばここより無敵モード無しでいくぞ。」

「え、ネィルさん。せめて街道に出てからでも・・・。」

「いや、この森林を抜けるだけでもいい運動になる。クーネを先頭にエルミス、そして私が一番後ろにいよう。ではさっさといくぞ!」」

「おー!」

「は、はい・・・」




 そして今に至る。

 モンスターや野盗の類に遭遇することは無かったが、道無き森林を掻き分けて進むのは思った以上に体力を消費した。

 クーネは草原を見渡しながら歩き、その後にネィルを背負ったエルミス。背負っているのはいわゆるハンデである。


「ところで、クーネさん。せっかくなのでお聞きしたいのですが、無敵モード時のあなたの強さとはどれくらいなのでしょう?」

「うーん・・・、文字通り敵無し。わかりやすく言うなら・・・、とりあえずこの世界最強とされる勇者ジグラッドと同等の力を持った人間が数万で来ても軽くあしらえる程度、かな?」

「「はあっ??」」


 圧倒的な戦力差に、思わず驚きの声を上げる2人。


「だよねぇ。そうなるよねぇ。いや、ちょっと悪乗りしすぎたかなー?とは思ったんだけど修正するの面倒だったし、このままでいいかー、なんてね?」

「いいわけあるか!どんな化け物だそれは!ふざけるにも程がある!」

「そのままでいれば私たちなんて必要ないじゃないですか!さすがにそれは呆れるしかありません!」

「馬鹿らしい!鍛える必要も護衛もまったくいらないではないか。エルミスよ、このような馬鹿は捨てて我らだけで旅をしよう。」

「そうですね。申し訳ないですがクーネさん、さすがにそれは酷すぎます。あなたには感謝していますが、残念ながらここでお別れのようです。祈るだけ無駄だと思いますが旅の成功を祈っています!」


 あまりの加減の無さに呆れと怒りの二人は、クーネとは違う方向を向き始める。


「わぁぁぁ、まった!!ごめんごめん。今いじるから!ちゃんと常識の範囲にするから見捨てないでー!!」


 エルミスの足にしがみつくクーネ。そんなクーネを二人は呆れ顔で見下ろし。


「具体的には、どのような強さにするつもりなのですか?」

「せめて無敵モードと言えるレベルは残してもいいよね?ほら、一応神様なんだし?」

「えぇ、まぁ・・・。」

「そうだな、ジグラッドひとりを軽くあしらえる、と言ったくらいが人としての限度ではないか?それ以上となるとどういい繕っても化け物、あるいは神をも超えた存在となるだろうよ。」

「えー、一応私はこの世界を作った、この世界にいる神より上の存在なんだけど・・・。」


 無言で踵を返し、クーネから離れようとする。


「嘘ですごめんなさい。待って、お願い。一人にしないでー!」

「ふん・・・。なら、とっとと設定とやらを済ませろ。」


 仕方ない、と言った表情でその場に座り込み打ち込み始める。2人がしばらくその様子を見ていると様子がおかしいことに気付き


「どうしたクーネ、終わったのか?」

「い、いいえ、ちょっとまずいかもしれない・・・。」

「まずい、とは?何があったんですか?」


 顔を覗き込むと少し焦り顔を見せている。


「・・・変更できない。どうしよう!変更してもなんかエラーがでる!!」

「エラー、だと・・・?」

「何回やっても失敗しちゃう!なんで!?」


 ひとまずステータスの設定を止め、違うことを打ち込んでみる。簡単に1本の短剣を出してみると、それは問題なく目の前に出現する。

 それを確認したうえで、再びステータスの数値を再設定し実行すると、やっぱり画面にはエラーの文字。


「どうしよう、どうしよう!!ねぇ、直らない!ネィル、エルミス!なんで!?」


 本気で困った表情のクーネ。初めてみる表情に二人は困惑するが事態は進んでいく。


「やだ!どうしよう、このままじゃ・・・。ネィルもエルミスもいなくなっちゃう。やだ、やだよぉ・・・。一人になっちゃう・・・。お父さん、お母さん、お願い・・・。一人にしないで!」


 困惑からおびえの表情、がたがた震えるクーネに対し、ネィルは「ふむ」と呟き洞窟の時と同じようにクーネの前で自分の手を打つと、音とともにクーネの目に落ち着きが戻ってきた。


「落ち着いたか?」

「え、う、うん。私、一体・・・?そうだ、なんかエラーで変更が出来なかったんだ。」

「つまりあのふざけた状態のまま変えられない、と言うことか。ならば仕方ない、その辺は宿場についてから考えるとしよう。とりあえず確認だな。無敵モードにはなれるか?」

「や、やってみる・・・。」


 目を閉じスイッチをオンにする。ネィルの目に微量だったオーラがはじけて消える様子が見え、問題が無いことを確認し、声をかけ走り出す。

 それを追うように走りだし、クーネは不安を抱えたま宿場を目指すのであった。


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