千夏編1
それはオタクの生活をはじめてからしばらくたったある日、
妹の千夏がいきなり家に帰ってきた。
千夏はテレビの前では完全に猫をかぶっている。
家に帰ってきたとたん性格がテレビの前の姿とは比べ物にならないくらい
豹変する。
千夏は玄関から家に入って最初に言った言葉が、
「おいバカ兄貴いるか?」である。
テレビの前ではあんなに
「私はこの会場まで来てくれたみんなやテレビの前で応援してくれている
みんなが大好きです!!!」と言っているのに兄である
俺に対してはそのかけらもない。
まあいつものことだし返事をすると、
俺の部屋に入ってきて、
「兄貴、こんなのまだみてるの?きしょ」と言ってきた。
俺は腹が立ち、「俺の嫁をバカにするな!」といった。
するとやはりキショの繰り返しだった。
しばらくして千夏が、
「アニキ、暇なんだろ!暇なんだったらこれ書いてみたら?」と言って
ある紙を見せてきた。
その紙には、「創作した小説募集!小説が本誌にのった方には5万円贈呈!!」
と書いてあった。
正直5万か...と思っていたら妹がきりだした。
「これに選ばれるとドラマ化したり、漫画化したりするわよ。
そうなったら私の仕事少しは増えるじゃん?
だから私のためにしなさいよ!」と言ってきた。
俺は断ろうと思ったが、もし小説が雑誌に載ることができたら、
なんでも好きなことをしてくれるというので俺は引き受けることにした。