第2話 中二病とは!
俺は白木竜斗。平凡な男子高校生だ!
ちょっと目付きが鋭くて怖いって言われる時があるくらいで、特にこれといった特徴もない。
普通に普通で普通な人生を送ってきた、普通の人間である!
え? なんでそんなにテンション高いんだって?
――ファンタジーの権化、妖精が出現したからに決まってんだろ!
「うおおおおおおおおやっべぇ妖精だ! どこからどう見ても俺のイメージ通りの妖精だ! うわすっげこれ信じて良いんだよな!? 人を上げて上げて落とすこの世の原理を無視して信じて良いんだよな!?」
「え、あ、うん」
まじかぁああ!
おい会話しちゃったよ! 今あの伝説の妖精と会話しちゃったよ俺!
「いや待て。ここで落ち着かなければ、この現象に遭遇したことで世界の主軸を担う者になれるかもしれないという可能性を、闇に葬り去ってしまうかもしれないな。うむ、我は冷静沈着なり」
自身への戒めは必須だ。俺は深く深呼吸をする。
「え、ええっと……。まず、その不安定な性格についていろいろと聞きたいかな……?」
心なしかちょっと俺との距離が遠くなった妖精が、控えめに訊ねてきた。
そうだな。妖精は知らないかもしれん。俺は少しだけ落ち着きを取り戻して咳払いをする。
「説明しよう! 俺のこのテンションは、『中二病』によるものだ!」
中二病。
おおまかに説明するなら「思春期にありがちな、自分を大人に見せようと背伸びした行動や言動をしてしまう痛い人」と言えば良いのだろうか。そこら辺の認識は俺も曖昧なので、自分で調べてくれ。
俺に近いのは邪気眼系と言って、「不思議な力に憧れ、自分には特別な力や能力がある、という設定を作ってしまう人」という感じの系統だ。
俺も中学生の一時期は、その邪気眼系に当てはまるゲームにかなりハマってしまい、完全に邪気眼系中二病になったことがある。
どんなことをしたかと言うと……いや、黒歴史なので言わせないでくれ。
だが今は高校生になり、現実を見て、ちゃんと分をわきまえていると思っている。
特別な能力はないし、魔法のような現象はそうそう起きないし、地球は毎日いつも通りに回る。それが世界の真実であると知っている。
それでも、中学生の時に変わった好みは今でも適用されてしまっている。それが現在の俺というわけだ。
長ったらしい説明で大分話が逸れてしまったが、結局は「よく二次元に出てくる妖精が現実にいて、中二病だった俺歓喜!」ってことなのである。
「ただ、あくまで好みが引き継がれてるだけで普段の行動には何一つ影響はないからな? 言ってみればただの後遺症だ」
「今初めて中二病とやらの説明を聞いたけど、何故だかとてもそうとは思えないなぁ……。ま、すぐに信じてもらえるなら何でもいいや」
誤解されているような気がするけど、とりあえずこれでこっちの説明は終わりだ。
次は聞く方に回ろう。
「で、あんたはなんで俺の前に現れたんだ? 何か大きなわけがあるんじゃないのか?」
俺が妖精を目の当たりにして喜んだ理由は、2つある。
1つは、元・中二病として、妖精の存在を認めることができたから。
もう1つは、それによって発生するファンタジーなイベントが俺の身に降りかかるだろうと思ったからだ。
妖精が接してきて何も起こらなかった物語は少ない。たとえ架空と現実の違いがあっても、それは踏襲されるべきだ。
というか、そうであってほしい!
「よく分かったね。私は、君に頼みたいことがあってこうして会いに来たの。これから話すのは、世界の根幹にも関わる重大な事実……心して聞いてね」
引き気味だった妖精も表情を引き締めて、真剣な眼差しを向けてきた。




