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スキルホルダー  作者: 角地かよ。(旧:VIX)
第2章 日常と非日常
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第22話 宮野さんといっしょ

 時は飛んで放課後。

 みんなは揃って向かう中、俺だけ一度家に帰り、フェアルに出かけてくると伝えてから商店街に来た。



 この町の中心地とも言えるよこしま商店街は、大人から子供まで、多くの人々に親しまれている。


 地元の商店街とバカにするなかれ。食料品から雑貨、本に文房具、家電などの販売店や、食堂、カフェ、ゲーセンやカラオケといった娯楽施設、etc……。

 とにかく様々な店があり、特に用がなくても充分楽しめる。学生の暇潰しの場所としてはうってつけなのだ。


 もちろん、本当に用事がないわけではない。


 発案者の鈴音は欲しい服があるとか昼休みに言っていた。琴音はその付き添い。

 渋々ついてきた形になっているが、俺は俺で、食料を買い溜めしなければならなかった。今日は魚の特売日だ。

 奏介は、ゲーセンでの「賭けゲー」で俺への積年の恨みを晴らしたがっている。

 宮野……宮野も商店街に用があると言っていたが、それが何なのかは教えてくれなかった。俺らが解散した後に済ませるらしい。奏介は「特ダネの匂い……!」とか言ってストーキングする気満々だったが。



 今日のメンバーの目的に思いを巡らせていると、そのメンバーが全員集まっているところが見えた。商店街の入り口にある大きな噴水だ。俺も急いで合流する。


「あっシロ! 遅いよもう!」

「ああ、ちと妖せ……ゲフンゲフン! れ、冷蔵庫の中身を確認してたら時間がかかってな」

「そういえば白木君は一人暮らしなんですよね。大変でしょう?」

「ま、まぁな」


 ふぅ、危ねぇ危ねぇ。もう少しで「妖精を説得するのに」って言いそうになったぜ。


 メンバーは鈴音、琴音、奏介、宮野。朝話していた通りの面子だ。


「何とも不思議な気分ですね。こう、学校帰りにクラスメイトと遊びに来るのは」

「ソワソワしてるねぇ~。今日はめいっぱい楽しも!」


 商店街にいるだけでテンションの上がる鈴音は、鼻息を荒げて宮野に飛びついた。


「きゃっ!? もう大月さん!」

「ねぇねぇ聞いた!? 今「きゃっ」って言ったよ! 可愛いねぇ」

「か、かわっ……!? やめてくださいよ全く!」

「あとさ、これからは私のこと、鈴音って呼んでもらわないと!」


 そう言いつつ視線を送った先には、はにかむ琴音の姿が。


「あっ。ふふ、そうでしたね。大月は2人いますものね」

「え、えへへ。よろしくお願いします、宮野先輩」


 互いにニコニコと、良い雰囲気である。


「初対面だから心配してたが、杞憂だったみたいだな」

「もっちろん! 女の子ってのはすぐ仲良くなれちゃうものだからね!」


 女子同士というのもあるだろうが、2人の性格が幸いしたな。


 厳しいイメージが強いも、きまりを守る生徒にはとても優しい宮野。最初こそ上手く切り出せないが、いざ話し始めると温和で親しみやすさが伝わってくる琴音。

 この組み合わせで仲良くなれない方がおかしいからな。


「ほい、パシャリと」


 すると奏介が、スマホで2人の笑顔を撮った。今までやけに静かだと思っていたら、シャッターチャンスを狙っていたのか。


「あーっ! そーちゃんまた新聞部に流すつもりでしょ!」

「やだなぁ、俺も全部の情報をスクープにするわけじゃないって。これもただ美しい友情の芽生えを記録しただけだよ。はっはっは」


 ……と言いつつ、いざとなったら利用するのがこいつなんだよなぁ。


「琴音さんはこんなに礼儀正しく優しい人なのに、その姉と幼馴染があんなにも騒がしいというのは……」

「「うっ」」


 宮野のジト目に、心当たりのある2人は明後日の方向を向く。


「これほど優秀な後輩が身内で入ってくれば、少しは改善されると思いたいところですね。第一――」

「まっ、待ちたまえ宮野ちゃん! 高校生というのはね、遊びに来ている時に説教などしていると、空気を読まない不心得者として排他されてしまうのだよー!」


 嫌な予感がしたらしい奏介は、咄嗟に出任せを言った。

 口が達者な奏介でも、流石にそれは――


「な、なんですってー!?」


 通用したーー!?


 宮野は、思いっきり「ガーン」って効果音がつきそうなほどショックな表情になった。


「そうだったのですか……。確かに、楽しむ場で雰囲気を壊すようなことをすれば、煙たがられて当然ですね。すみません。あまりこういう状況に慣れていなくて」

「え、あ、いや、気にしないで」


 言い訳した当人も予想外だったようだ。鈴音、琴音も思わず苦笑いである。

 宮野は良くも悪くも、全てに真剣なんだ……な?


「じゃ、じゃあそろそろ行こっか!」


 変な空気を元に戻したのは鈴音だった。先頭に立ち、商店街を歩き始める。


 放課後とは往々にして早く時が過ぎるものである。この時点でもう日が暮れているので、駄弁っている暇はない。

 俺達はすぐに最初の目的地へと向かった。

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