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スキルホルダー  作者: 角地かよ。(旧:VIX)
第2章 日常と非日常
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第21話 風紀委員会の有名人

「白木君、上条君。何やら怪しげな会話が聞こえてきたのですが……?」

「「げっ!」」


 昂った中二心を急速冷凍したのは、仁王立ちで俺らを見つめるこの学校の名物風紀委員、宮野(みやの)愛華(あいか)だ。


 スレンダーな体型に腰まで伸びた黒髪ストレート、おまけに黒縁眼鏡と、第一印象からしてビシッとしている宮野。性格はというと、見た目以上に真面目だ。


 去年も風紀委員で、校則やルール、マナーには人一倍厳しい。多分教師の桜田先生よりもだ。

 そのおかげか、俺ら幼馴染組──俺は大体が奏介と鈴音のとばっちりだが──はちょくちょく宮野のお世話になっており、以前からの知り合いである。


 宮野は自分なりの正義と信念を持ち、規律を守らない相手には少々キツく接してしまう。それで敵を作ってしまいがちなのだが、根は優しく、いつも誰かを思っての行動なので、慕っている人は多い。

 良くも悪くも、北高の中では有名人なのである。


「今の話では、賭け事をしようとしている風に聞こえましたが」

「い、いやいやいやそんなわけねぇだろ。なぁ?」


 平静を装う。宮野の視線が冷ややかなので目は背けた。


「お、おうよ! なんなら鈴音にも聞いてみるといいぜ」

「ああ! あいつなら俺らの無実を証明してくれる!」


 何を隠そう鈴音もグルだからである。


「正直、大月さんも信用があるわけではないのですが……。まぁいいでしょう。法にだけは触れないでくださいよ上条君」

「あれ? 俺だけ犯罪者予備軍扱い?」

「当然です。あなたは常習犯ですから! 2年生になってもまだ不埒なことをしているようでは、後輩達に示しがつきませんよ。部活での活躍には目を見張るものがありますが、それ以外の学校生活にはいろいろと堕落した面が見られ――」

「なぁもうその辺でいいだろ? お小言には飽きました~。あーあー聞こえなーい」

「なっ、なんですかその態度は! 私はあなたのためを思ってですねぇ……!」


 奏介の悪行を一番叱っているのが宮野なので、この親子みたいな会話は、もう恒例になった。


 だらしない人には限りなく厳しい宮野相手に、ここまで軽口を叩ける生徒というのは少ない。

 なので、2人が一緒にいるところを見たことがないクラスメイト達は、物珍しそうにこの風景を見ていた。


「宮野ちゃんは俺のオカンかよってな! はっはっはっは」

「~っ……!」


 宮野はぐっと眉間を寄せたかと思うと、急に落ち着きを取り戻し、声のトーンを落とした。


「……時に上条君。つい最近、あなたが女子更衣室の盗撮を企てているとの噂を耳にしましたが……?」

「へっ!? み、宮野ちゃんも知ってたの!? あ、あはは。いやぁ~、秘密裏に実行するから盗撮なのになぁ~。あは、あはははは……」


 宮野の両目が据わっている。無論冗談が通じるタイプではないので、今のおふざけは逆効果だった。

 お説教は無言の圧力に変わり、ただ絶対零度の冷たさで奏介を睨み付ける。稀に見るスーパーお怒りタイムだ。


「賭博疑惑に盗撮疑惑とは。……上、条、君?」

「ひぃっ!」


 ガタガタと震え出す奏介。何度も味わっているからこその恐怖だった。


 しょうがない。このままだと土下座お説教コースに突入しそうだから、ここらで助け船でも出すか。


「と、ところで宮野。放課後、俺らと商店街にでも行かねぇか?」

「……え?」


 ぽかんとする宮野。奏介も驚いていた。


「ええぇっ!? わっ、私が、皆さんとお出かけですか!?」

「おう。鈴音も来るし、あいつの妹も参加予定だ」

「大月さんも……? えぇっ、と……」


 前々から知り合いではあったが、友人としては接点がなかった。ちょうどいい機会なので、ここらで仲良くなろうという魂胆だ。

 遊びや行事は決まるまでがだるいが、決まってからは動く。これが俺である。


 誘われた宮野はついさっきとは打って変わって、赤面して予想以上にあわあわと狼狽えていた。

 友達ともそうそう遊びには行かないタイプなんだろうとは思っていたが、声をかけられるだけで嬉しそうにするんだなぁ。


「宮野ちゃん、慣れてないみたいだねぇ」

「あ、あまり誘われることがないのです。だからどうしたら良いか分からなくて……」


 不安そうなことを言ってはいるが、照れ照れとしているのがバレバレだ。こりゃあ行きたくて仕方がないみたいだな。


「んじゃ行くか。もうすぐHR始まるから、詳細は昼休みにでも話し合おうぜ。また後でな」

「は、はい」


 そこは浮かれていても優等生。すぐさま自席に向かって着席し、毎日遅刻気味な桜田先生を待つことにしたようだ。


 あんなに楽しみにしてくれるなんて、誘った甲斐があったというもんだぜ!


「……サンキュー竜斗。助かったぜ」

「いや、奏介のついでで俺らの賭けゲーもバレてたらと思うとゾッとする」


 それがただの「逃げ」であったことは、絶対に知られてなるものか。

奏介「あれ? でもゲーセンまで宮野ちゃんがついてきたら、普通にバレるんじゃ……」

竜斗「あっ(察し)」

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