表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキルホルダー  作者: 角地かよ。(旧:VIX)
第2章 日常と非日常
15/40

第14話 いざ特訓

「はっ! ふっ!」


 俺は、変わってしまった町を駆け抜けていた。

 右手には、命を刈り取る刃が握られている。時々、柄の感触を確かめながら、少ない隙で振り回す。


 奴ら(・・)の姿はない。が、現れた時の為の今だ。一部たりとも力を抜く気はない。


 変わってしまったと言えど、見覚えのある風景だ。次第に慣れてきた俺は次の段階(ステップ)へいく。

 足場を地面から石塀、屋根へと移していく。


「フッ。素晴らしい景色だ」


 視界が開ける。直にこの感覚も必須になるだろう。

 町の家屋を渡って走ることで、この異空間の風も感じやすくなった。少々身体のバランスが悪くなるも、ダガーの扱いには幅が生まれる。


「さぁ、まだまだ――」

「ちょっとリュウトー、いろいろ暴走してきてない~?」


 空気を読まない妖精である。


「……全く。せっかく楽しくなってきたのに」


 俺は溜め息をつき、屋根の上から飛び下りた。

 着地し、身体の調子を軽く確認する。問題はないみたいなので、もう少し自分の限界に挑戦してみたいものだ。


「はぁ。帰ってくるなり突然『反世界(アンチワールド)』を出してなんて言ってきた時は、どうしたのかと思ったよ」


 ここは反物質で作られた与孤島町。俺が帰宅してからフェアルに頼んだものだ。

 そしてダガーナイフを召喚し、向上した身体能力で町中を飛び回っている。


 理由は簡単。特訓だ。


「図書室に『戦コーナー』ってのがあったんだよ。期間限定で、戦争や近接格闘についての専門書を置いておくコーナー。そこを利用したんだよ」

「なかなか危ない本を紹介するんだね学校は……」


 仕事の後、俺はそこに置いてあった『武器大全集』、『世界の剣術』他、様々な『武器召喚(サモンウェポン)』に役立ちそうなものを借りておいた。

 そして周りに被害を与えないよう、こうして『反世界(アンチワールド)』の中で試しているのである。


「短剣のイメトレはこんなもんか。『消滅』」


 唱えるだけでアラ不思議。握っていた武器が一瞬にして消えました。

 これが召喚系統の武器に共通する召()方法らしい。便利だ。


 続いて俺は懐から、ハンドブックの『武器大全集』を取り出し、パラパラとめくる。


「長剣、短剣とくれば、次は当然……大剣!」


 俺は最初から目をつけていたページを開き、その両手剣のデザインを記憶する。

 『武器大全集』をしまい、胸の前に腕を出し、あの有名な大剣を幻視する。


「フフフ、ではゆこうではないか。……『武器召喚(サモンウェポン)』、『クレイモア』!」


 大量の光の粒が現れ、手の中に集まる。ゆっくりと象られていく刀身はこれまでで最も強い存在感を放つ。


 ブロードソードより遥かに長い刃。斜め上に伸びた鍔。その両端に生まれる、4つずつ、計8つの小さなリング。

 やがて召喚されたクレイモアは、ずしりと両手に収まった。


「おおお、これがクレイモア! 何という圧倒感……!」

「……テンション高いね」


 やはりブロードソードに比べると、召喚に少々時間がかかり、重くて振り回すスピードも遅くなる。

 しかし一撃の威力がかなり上がるだろうということも、ただ持っているだけで伝わってきた。


「……試してみてぇな」


 好奇心のまま、俺は傍にあった街路樹に狙いを定めた。反物質で作られた灰色の模造品だが、中身はきちんと詰まっている。


 軽くクレイモアを構え、振り抜く。

 ズバンと刃が通った。


「わっ!?」

「おおっ」


 クレイモアの通過に一拍遅れて、切断された街路樹が、派手な音を上げて地面に落下する。

 真っ二つだ。もちろん剣に抵抗はあったが、案外簡単に斬れるものだな。


「……すごいね。まさかこんな業物を召喚できるなんて」


 フェアルがぽかんと口を開けている。

 俺としてはそれほど偉業を成したようには思えないのだが、妖精の反応が一番正しいのだろう。


 しかしそれならば、俺には結構才能があるということではなかろうか……!?


「フフフ、怖いか? 世界水準軽く超えてる俺のクレイモアにかかりゃ、斬れねぇものは何一つねぇッ!」


 『反世界(アンチワールド)』に壊しちゃダメなものなんてない。俺は町を駆け回り、たまに飛び上がりながら、街路樹や石塀、木造家屋などを次々と試し斬りしていく。

 何という破壊力……感動だ! 木製のものならほとんどが斬れるし、石塀も壊せる!


「フハハハハハ! 見よこの剣術! この身体能力! これこそが選ばれし者の真の実力……天才(ジーニアス)の覚醒せし力だッ!」

「リ、リュウトサーン!? その破壊衝動は大分危険ですよぉ~っ!?」


 実際にある・あった武器ならば、全てを使うことができる。

 その有能性に、改めて喜びを感じる俺であった。


「あああああスキル楽しいいいいい!」

「誰か止めてこの中二病~~っ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ