父さんが死んであんたが狂って俺は独り
黄泉side
「久しぶりだね。お母さん?」
「黄泉、やめなさい!!こんなこと!」
「こんなこと?何言ってるの?」
「間違ってるのよ!何してきたかわかってるの!」
わかってるよ、そんなこと。殺人。でもそれは、”仕方がない”だろ?
「やっぱり、あの時言った咲人の言うとおり。大人って汚いね。」
「な、」
「大人は自分を正当化するんだ。なかったことにするんだ。そして、叱るんだ。」
幼い頃、まだ幸せと感じていた頃。それは父さんが生きていた頃。
俺が生まれて2年しか続かなかった一瞬のこと。
「覚えてる?父さんが死んであんたが狂って、俺は独りだった。」
「黄泉...ごめんなさい!」
「謝罪なんて求めてない。昔話もおしまいさ。過去なんて戻れないからね。」
始めようか。最後を飾るとびっきりの残虐劇を。
「簡単に殺しはしない。痛みと、恐怖と、孤独を知りながら死ねばいい!!」
「黄泉、や、やめてぇぇ!」
痛みに苦しみ漏れる声、涙を流して哀願する顔。
「アハハハハ、ねぇ、痛いの好き?そんなわけないか!アハハ」
わかってる。自分でも”堕ちた”って感じる。
初めて殺したあの日つぶやいた「変なの」っていうのはきっと、
堕ちる感覚に違和感を覚えて言ったのだろう。




