一日目:広島市内でのオフ会
朝陽真夜(以下私):スカイプ内におけるマイペース&カオス担当。この話は私の視点からお送りいたします。
穂田宗さん(以下ホダさん):休みを利用して広島へ観光にやってきた、スカイプ内におけるイラスト名人。
銀鷹 (シルバーホーク)さん(以下銀さん):スカイプ内における私とは別ベクトルのカオス&イラスト担当。
十月一日。天気、晴れ。時刻、〇八四〇。
私――朝陽真夜は今、電車の中にいる。
今日はホダさん、銀さんと一緒に広島でオフ会をするのだ。
凄く楽しみだ。先日のオフ会といい、最近はオフ会運に恵まれているのかという思いを巡らせながら電車に揺られる私。
発端は、数日前のスカイプでの事。
「今度広島行くんでよかったら会いませんか?」
というホダさんの提案に即座に乗った私。そして、同じく広島県在住の銀さんも誘って話はトントン拍子に決まりました。
地元の駅から電車に乗る。すぐ隣の駅で銀さんと合流。
それから途中の駅でいったん電車を乗り換え、広島駅へ向かう電車に乗る。
銀さんは電車が発車するとすぐに携帯ゲーム機でゲームを始めた。
一方の私は相棒のワープロでうろな町のプロットを打ち込み始める。
前回のオフ会で得られた情報と、昨日得られた情報を元にプロットを打ち込んでいく。うーん、楽しい。
一〇〇〇、広島駅へ到着。
それからしばらく近くの本屋を覗く。するとホダさんからのメールが届く。
「広島駅前に向かっております。もうすぐ到着できると思います」
との事。それに対して私は、
「了解です。銀さんともども駐車場へ向かいます」
と返す。銀さんに声をかけ、待ち合わせの駐車場へ向かって出発。
駐車場へは歩いて向かったのだが、暑い。
十月に入ったというのに、いかんせん残暑が厳しい。汗が噴き出る。世間は秋ではなく、まだ夏の後半ではないのか? と思ったほど、広島市内は暑かった。
途中でコンビニエンスストアに寄り、ATMにて今日の軍資金を下ろす。
一方銀さんは缶コーヒーを買って飲んでいた。銀さんよ、コーヒーじゃ水分補給はできないよ?
一〇四〇。
それからしばらく歩き、駐車場へ到着した。
待ち合わせ場所である一階待合室に入り、私と銀さんはジュースを買って喉を潤した。
しばらくすると、一人の男性が入ってきた。彼は自販機でジュースを買うと、すぐに立ち去っていった。
一〇五〇、ホダさんにメール。
「待合室に着きました」
メールを送信した直後、誰かが待合室に入ってきた。見ると、先程ここでジュースを買った男性だった。
そして彼は私達に声をかけた。
「えーと、穂田宗です」
これが、ホダさんとの直接的ファーストコンタクト……いや、セカンドコンタクトだった。
「銀鷹です。よろしくお願いいたします」
「朝陽真夜です。よろしくお願いします」
自己紹介をし、ホダさんと握手する私達。
まさかあの人がホダさんだったとは。彼曰く、メールが迷惑フォルダに入っていたので気付かなかったとの事。
……すみません。最初見た時、「この人は違うなー」って勝手に決めつけてしまって本当にすみません。
まあ、何はともあれ全員集合です。
「どこに行きます?」
ホダさんが嬉しそうに言う。
「とりあえず、某メロンとか行ってみます?」
笑いながら提案する私。行き先も決まった所で私達は駐車場を出た。
「名古屋と変わらないですねー。いや、広島の方が都会かな?」
そう言って笑うホダさん。
「都会と田舎のバランスがとれていて、広島はいい所だと思いますよ」
私はそう答えた。やっぱり、都会の中にも緑がないといけないと思うんだ、私は。遠くに山が見えるだけでも違うし。
それからとりとめのない話をしながらアーケード街へ入り、道なりに進む。
その後、某同人ショップで買い物をし、ふとその側にあるカードショップへ。
するとそこでホダさんから思いもよらぬ提案が。
なんと、押し入れから引っ張りだしてきたという遊戯王カードのデッキを持ってきたのでデュエルしないかというサプライズ!
くふふふ、よござんす。現役プレイヤーの力をお見せしましょう。
――結果、私の二連敗。
マジですかい、HEROデッキ強いなオイ。あっという間に強力なモンスターをどんどん召喚され、あっさり負け……いや、完敗。ホダさんのライフポイントに100ダメージすら入っていないんですけど?
戦術の幅が広い事に定評のあるHEROデッキ。見せてもらったデッキには、限定版のカードがゴロゴロ。うわ、このカードって雑誌の定期購読でしか手に入らないプレミアもののカードだし!
どこが数年前のデッキですか? 禁止カードや制限カードを他のカードに置き換えれば今でも通じるじゃないですか。いや、マジで。
私のマドルチェデッキ、エクストラデッキにすら触れられずに負けたんですけど。
うーん、HEROデッキへの対策した方がいいのかな?
そんな事を考えているとホダさんから一言。
「名古屋はカードの強豪が多いんですよ。自分なんて底辺ですよ」
世間って広いのね……名古屋、恐るべし。
それから、同じ階にある中古物のホビーショップへ。マンガ、CDなどが並ぶ店内を探索していると、ホダさんがショーケースの前で足を止めた。
するとそこには、「○の境界」の作者さんが描いたという、プレミアものの同人誌が。4000円なり。
するとホダさん、すぐに店員さんを呼んで即座に購入しましたよ。
ホダさん曰く、ほとんど生産されなかった同人誌だそうで。
「もう今日の買い物はしなくてもいいと思います」
会計を終え、満足そうな表情で語るホダさん。
……そ、そこまでいいものだったのか、アレ。うーむ、オフ会でなんたる偶然。でも、実に面白い。
それから、他のホビーショップを数件回った後、腹も減ったのでランチ探し。
とは言っても、何を食べるかは決まっていなかった。
しかしホダさんは旅先でのランチに妥協しない御方だった。まずいぞ、非常にまずい。
何せ自分がこの辺で食べるとしたら、カレーや定食チェーン、ミ○ド、最悪の場合コンビニ飯という有様。
だって自分のモットーが、
「安くて美味いならなんでもよし」
なんだもん。
するとここで、私はこの近くにある休みになると行列ができるラーメン屋が近くにある事を思い出した!
二人にそこへ行く事を提案すると、二人とも快諾。
店に入り、券売機でラーメン+替え玉を注文。950円なり。いいお値段じゃないの。
中に入ると、どうやら三人は座れるカウンター付きの個室みたいな所に入って、そこにある用紙にスープの辛さや麺の固さといった項目を記入。それを書き終えてボタンを押すと店員さんがそれを回収、すぐにラーメンが来ましたよ。
しかもカウンターは簾みたいになっていて、店員さんが凄く丁寧な挨拶をした後、それが降ろされて気兼ねなく食事を楽しめるようになっている! これには驚いた!
うーん、最近のラーメン屋って凄いのね。
ラーメンを食べつつ、他のなろう作家さんの話をする。自分は前にオフ会をしたある作家さんの話もしたよ。
それにしても、話せば話すほど意外な一面が見えてくるもんだ。オフ会ってやはり面白い。
しばらくぶりに、本当に美味いラーメンを食べたという実感があった。お二人も満足していたみたいだし、よかったよかった。
また食べに行きたいな。
一三〇〇。
昼食を終えた私達はいったんアストラムラインの駅がある地下道に降りた。
銀さん、「地下道だけにちかみち」って……誰が上手い事を言えと。山田君、座布団全部持っていきなさい。
そして、その一角にあるミックスジュース屋に立ち寄る。
ここは新鮮なフルーツをジュースにしてくれる美味しい店だ。まあ、私も友人の紹介で知ったんだけどね。
おお、今日はサイズ増量サービスデーか。ラッキー♪ ちなみに三人が頼んだのはミックスジュース。フルーツたっぷりで牛乳も入っていて飲みやすいんだな、これが。
一杯二〇〇円で、しかも今日はサイズ増量がタダ!
バナナジュースやイチゴジュースなど美味しいジュースが色々あるよ! さらにフルーツ自体も売ってるよ!
広島に来た人、よかったら飲んでいってね! 味は保証するからさ!
一三三〇。
アーケード街に戻った私達は一角にある喫茶店に入った。
コーヒーを飲みながら雑談をしようというオフ会の醍醐味の時間ですよ。
三人ともコーヒーを注文。銀さんはブラックで、ホダさんはそれなりに砂糖を入れる。
しかし私は甘党だ。ミルクも砂糖も入れないとコーヒーは飲めないのだ。
そして、一口コーヒーを啜って一言。
コーヒー熱い!
カップを両手で持って、まるでリスが水を手ですくって飲むかの如く、ゆっくりちびちびと飲む私。しょうがないでしょ、結構猫舌なんだからさ。
それから他のなろう作家さんの話などをしていると、話題はイラストの話へ。
すると銀さん、おもむろにスケッチセット取り出したし! 流石だぜ、銀さんよ。
それからホダさんと銀さんはイラスト談義に。ホダさんによる実際に紙に描きながらの実践式説明。そして完全に置いてけぼりの私。
なるほど、わからん。
それから銀さんが持ってきたラフスケッチを拝見。おお、「あくてん」の子達だ♪
下着姿とかセクシーじゃないのって思ってたら、最後の一枚! なんで統哉にランジェリー着せてるの!?
やりやがった! 銀さん、やりやがったな!?
しかしこうして見ると、銀さんって本当にイメージを描き起こす力に優れてるよね。実際凄い。
そしてコーヒーはまだ熱い。
ふと下を見ると、外ではローカルテレビの撮影をやっていた。
うん、今日も平和だねぇ。
するとそこでホダさんから「神戸ブラウニーミニバー」なるお土産が。しかし都合上一つしかない!
そこで銀さんとお土産の争奪ジャンケンに! ……って待て待て銀さん。その手は反則だろうに。グーチョキパーが混ざった手はさ。
結果、グー対チョキで私の勝ち。やったね♪
その後、ホダさんが持ってきた一般向け同人誌(最近流行りの○これ本)を読んでいると、銀さんがメモに描いたラフイラストを差し出してきた。
見ると、そこには女子の姿が。
「あれ、これってエルゼ?」
「さー、何でしょうねー」
尋ねる私に銀さんは悪戯っぽく笑うだけ。何だよ、教えてくれたっていいじゃん。
すると、ある事に気付いた。ボサボサ気味の頭、そして目元の眼鏡。これって、まさか…………?
――女体化させた私かい!?
いや、以外と胸でけーなオイ。
しかし、女版の朝陽真夜って案外こんな感じなのかもしれないなーって案外納得がいったり。
それから、私の執筆のきっかけや「あくてん」の裏話、そしてホダさんのイラストを描き始めたきっかけを話し合った。
私の場合は、大学時代の友人が小説を書いていて、それに触発されたのがきっかけ。
それが大きくなったのは、なろう作家さん達との交流の中で「物語を書くのが楽しい」事に気付き、「将来は作家になりたい」とはっきり自覚した事。
ホダさんは、高校の時に絵が上手い友人がいて(なんとその人、後に某有名少年誌で連載したって聞いてビックリ)、その人を中心に集まったのが始まり。
それからコミケへ行って、仲間から「イラスト描いて」って頼まれたのがきっかけで描き始めたとの事。
今みたいに喫茶店みたいな場所へ集まって、話し合って、部活のような感覚で楽しみながらやっていたんだって。
いいね、そういうアットホームな空気って。
それから、ホダさんのスマートフォンにあった画像を見て過ごしていると、いきなりホダさんから第一印象について尋ねられた。
私は以前スカイプでデフォルメされたイメージイラストを見ていたから、「大体こんな感じかな」っていうイメージはあったんだ。実際、その通りだったしね。
では、ホダさんから見た私のイメージは?
「えっ?」
との事。いや、私の方が「えっ?」って答えたくなりますよ。反応に困りますって。
ホダさん曰く、ネットやスカイプでのイメージと違うとの事。
初対面は銀さんが私だと思っていたようで。
やだなあホダさん。私は歴とした紳士ですよ?
次に、銀さんのイメージは。
「大きいなぁ」
……あー、確かに銀さん大きいもんね。私なんてドチビもいいところだもん。
さらに話を聞いていくと、ホダさんが私や銀さんよりも年下だった事にビックリ。イメージ的には私より一つか二つ下ぐらいのイメージがあったんだけどなあ。
それから色々と別の街の写真やコミケの写真を見せてもらって。
ホダさんも言っていたけど、オフ会だとたくさんの情報がすぐに交換・共有できるのがいい。
確かに、うろな町でのコラボで作家さんとメッセージでやりとりしてるけど、やはり実際に会って話をした方がいいと思う。
オフ会、やってみるものだね。
その後、ホダさんから「あくてん」やこれから書くであろう作品へのアドバイスをいただきました。
どうも自分の作品はネットや同人向けの作品らしく、商業用には向かないんじゃないかって言われました。
……耳が痛い。だけど、逃げたらいけない。
それから、ホダさんなりの解釈や世間の風潮、ニーズなど、大切な事をたくさん教わりました。
商業作家になるなら、障害や課題は乗り越えなければいけない。
「作家になる」という、やっと見つけた夢のためにも。絶対、乗り越えてもっといい作品を書いてみせる。
少しずつでもいい。変えられる所は変えていこう。
色々と、決意が改まった私だった。
一五〇〇。
それからホダさんは今日のうちに広島城や原爆ドームといった観光名所を見て回りたいそうで、じゃあ今日はこの辺でお開きにしましょうという流れに。
駐車場へ戻ってホダさんの車に乗り、駅前の宿を案内しつつ、駅前で降ろしてもらいました。
ホダさんにお礼を言って、そこでお別れです。
それから電車に乗り、帰宅。
とても面白く、色々と勉強になった一日だった。
そして今、私はこうして今日の出来事をワープロで打ち込んでいる。
これが終わったら、スカイプへ顔を出そう。そして、やる事やったら早く寝よう。
明日も、楽しそうだしね。
二日目、呉編へ続く。