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第二話 生【しょう】

 あたしの名前は森本由里、21歳――。


 地味であまり目立たないあたしは幼い頃から、いわゆるその他大勢の位置で生きてきた。可もなく不可もなく。友達も特別多いわけではないがいないわけでもなく。彼氏がいないわけでもなく、振られた経験もある。


 そんなあたしは今まさに天にも昇るような気分だ。まるで自分がこの世の全ての幸運を掴んだような気持ち。人生で最も幸せな瞬間とはこのことだろう。なぜあたしがこんなに幸せなのかそれにはある理由がある。



「今日は楽しかったね。お疲れ」


 あたしに話しかけてきているのは、あたしの彼氏である井上隆二。同い年の彼で、いつも元気で明るくて前向きでしっかりしていて頼りになる。あたしは彼のことが大好きだ。彼も特別かっこいいわけではないのだが、とてもやさしくいい人だ。彼といるといつも楽しい。今日も彼とのデートでとても楽しかった。


 そんなあたしはある願いを持っていた。いつか実現したら最高だろうなといつも思っている願い。それは誰もが抱く願い。結婚したい。ずっとこれから一生彼と一緒にいたい。いつの日からかあたしはそんなことを願うようになっていた。


 告白してきたのは彼だった。それまでもあたし達は友達として付き合ってきたのだが、彼の突然の告白により付き合うことになった。


 とは言ってもあたしも実は彼のことが好きだった。彼のことで友達に相談したり、悩んだりしていた。どうしたら振り向いてくれるのだろう。いつもそんなことを考えながら。今思えば友達の存在が彼と付き合うきっかけになったのかも知れない。あたしの恋のためにいろいろ協力してくれたりしてくれたし。


 あたしは恵まれているのだろう。信頼できる友達もいるし、別に貧乏なわけでもない。大学にも行ってるし、サークル活動にも勤しんでいる。別に忙しいわけじゃないけど普通に充実した人生だと思う。


 今の世の中自殺をする人がたくさんいるけど一体なにが気に入らないのだろう。あたしの人生も特別華やかではなかった。でもそれなりに楽しい人生で充実している。生きていればきっと楽しいこともあるはずなのに。簡単に死を選ぶ人の気持ちはあたしには理解できない。簡単に選んだわけではなくとも理解できない。


 あたしは死ぬなんて絶対に嫌だ。今のこの瞬間の幸せ。そしてこれから訪れる幸せ。それらのこれからの人生が楽しみで仕方がない。彼は本気であたしのことを想ってくれている。今日それが分かった。デートが終わっての帰り道。彼から言われた言葉は人生最高の幸せの瞬間だった。


 それは彼からのプロポーズ――。


 あたしの願いが叶った瞬間だった。彼との結婚。これから待っているであろう幸せな生活。それを想像するだけであたしは幸せな気分になれた。


 そんなあたしは、彼と別れての帰り道。一人、周りから見ても分かるくらいの幸せの雰囲気を醸し出し歩いていた。ふと足元を見ると、スニーカーの靴がほどけている。あたしはそれを結いなおすためにその場にしゃがみこんだ。




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