始まり
ーーー再び資料室。白石を待っている。
来なかったら許さないとか言ってたくせに自分が遅いって。
そんなことはどうでもいい。
二時間、久しぶりに頭フル回転させて頑張ったけど結局わからず。
まあ、わかる方がすごいのはわかっているけど。
やっぱ最有力候補は山田詩織ちゃんかな。一番白石に言い寄ってるし白石もそれに受け答えてるし。
今日も腕を絡ませてキャッキャッ言ってた。付き合ってるようなもんでしょ。
クラスのアイドル。モデル並の真っ白な肌にぱっちりお目々&アヒル口の最強なお顔の持ち主。
なーんか、そう考えるとお似合いだよな。あの二人。
頭の中で二人が手を繋いでるシュミレーションをしてみる。
手を繋いで街を歩く二人。行く人行く人が美男美女カップルに振り返っていく。
「はあー。似合ってる。」
思わず口に出る。
「何がですか?」
…
えっ?
「僕の事を心待ちにしていると思ったら妄想中だったとは。残念です。」
ふうー。
白石が大袈裟にため息をついてムカつく。
「で、わかりましたか?」
全然残念そうじゃないし。もう立ち直ってるし。
「わかりましたよーだ!山田さんでしょ?詩
織ちゃん。二人がよく話ししてるからすぐわかりましたー!!」
ふんっ。
さっきまでのシュミレーションにより自分の答えに自信がついた。
…
…
「お手伝い決定ですね。お疲れ様です。」
そう言うなり、ドアのそばにいた白石がずんずん近づいてきた。
「えっ!?だって、超イチャイチャしてるじゃん!」
必死で理由を述べる。
「顔もタイプじゃないし性格もダメ。勝手にアプローチして来るから適当に流してる。以上。」
ひどっ。
可哀想だな。山田さん。
そんなこと考えていたら白石があっと言う間に私の目の前に来ていた。
黒縁メガネの奥にある大きな瞳に見据えられた私は動けなくなった。
「約束通り、“手伝い”してもらいましょうか。」
耳元で白石が囁く。
“手伝い”
私には何故か、それがとんでもない事の始まりに聞こえた。