勝負
「入ってください。」
半ば強引に資料室に入れられる。室内は沢山の古い本とそれに囲まれて茶色い大きなソファが置いてあるだけ。
「座って下さい。僕は貴方のこと歓迎しますよ。」
「……」
なんなのこいつ。さっきまでウンともスンとも言わなかったくせに、急に喋り出して。
「何でうつむいているのですか?もしかして、僕の態度でしょうか?急に喋り出してムカつく。とか?」
白石が窓側のカーテンを閉める。
えっ。なんでわかるの?気持ち悪っ!
「なんでわかるのかって?あなたの顔に全て書いてあります。」
そう言って振り返ると私の顔を人差し指で指した。
「まだまだ休み時間まで暇です。何をしましょうか。黙っているだけではわかりません。」
いつのまにか私の隣に腰掛けている白石。こっちを見てるのがわかるけど、なんだか怖くて目を合わせられない。
くるっ。
白石を背にするように向きを変える。
何話せばいいかな。会話続かなそうだし…
そうだ。
「ねえ。なんでいつも無表情なの?」
ずっと気になっていた事だ。
「やっと話し出すと思ったらそんなことですか。僕は貴方と違ってなかなか表情が変わらないんですよ。」
依然として白石に背を向けたまま。
「好きな人の前でも?敬語も変わらず?」
ついつい聞きたかったことを口に出してしまう。そもそも女たらしに本命はいるのだろうか?
「そうですね。変わらないでしょうね。時々、敬語は変わると思いますが。」
「好きな人いるんだ。思いますってことは片想い?意外。白石でも落とせない人いるんだ。」
なんか新しい白石を見つけたようでちょっと面白い。可愛いところもあるんだ。
「……」
「ごめん。変なこと言っちゃたかも。」
「……」
ヤバイヤバイヤバイ。背中がチクチクしてるし。絶対睨んでる!
「……」
どうしよう。怒らせたよね?ただでさえ無表情で怖いのに~!!
「…ねえ。こっちを向いて下さい。」
「はい。」
ゆっくりと振り返る。予想通りいつもより少し鋭い目元になっている。なにをするのだろうと思いきや
「勝負、しません?」
ほへ?
なんの話?
怒られると思ってたからちょっと安心。だからか口から出たのは、
「うん。いいよ。」
と素直に従う言葉。
「僕の好きな人を今日の放課後までに当てる事が出来たら君の勝ち。当てられなかったら君の負け。負けたら僕の手伝いしてもらいます。。」
はあ?無理に決まってるでしょ!?無理無理無理!だいたい手伝いってなによ?
「いいですね。明日の放課後、待ってるからここに来て答えを聞かせて下さい。逃げたら、タダじゃ許しませんから。」
…白石ならとんでもない事もやりかねない。クラス全員が私の敵になることだって十分あり得る。
「わかった。わかった、やるよ!」
仕方なく承知する。なんとかなるだろう。最悪、手伝いをやればいいんだ。
「あと、二時間頑張ってください。では。」
バタンっ。
あいつーーーーー!!!