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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

あいるせいぶゆう

作者: 人修羅

古のUSBメモリから発掘したものを、少々修正した後にうp


少々、残酷な表現あり。


主人公の異常性を表現しようとわざと読みにくい文章にしたのだが、今読み返すと少々しつこいかな、とか思ったり・・・

 レンタルビデオ店の前には3台の乗用車と18台の自転車が停まっていた。午後1時45分頃に家を出たから今は午後1時53分だろう。僕は入り口から見て12台目の自転車と13台目の自転車の間に323日使っている自分の自転車を停めた。レンタルビデオ店に入ってすぐの棚は新作DVDコーナーで、ゾンビが大きな口を開けているパッケージが並んでいる。その映画は人気タイトルなのか13本も同じDVDが並んでいて、13匹も大口を開けたゾンビが並んでいる様子はなんだか滑稽で、それなりに面白かったけれど周りにその面白さを共有できる人間がいない状況ではあまり意味が無い。

 アクション、韓流、ホラー、サスペンスと書かれてある棚を早足で通り過ぎ、一番奥のアダルトコーナーには入り口から数えて36歩で到達した。品揃え地域ナンバー1、新作ぞくぞく入荷とそんな文字が書かれた張り紙が二枚、期待の新人、元芸能人ついにデビューとそんな文句が書かれたポスターが三枚僕に見える範囲で壁に貼ってある。

 ざっと見渡した限りアダルトコーナーにいる人間は僕を除いて二人だ。一人はスーツ姿の腹が突き出たサラリーマンで、もう一人はとび職風の若い男。若い男は紫色のブカブカのズボンを履いていてそのために僕は彼をとび職風だと思ったけれど、もしかしたら違うかもしれない。彼の本当の職業を確かめるためには彼に話しかける必要があるが、もちろんそんなことをするつもりはない。そんなことを考えているととび職風の男と目が合いそうになった。他人と目を合わせるということは僕の中では六番目に恐ろしいことなので慌てて目線をそらす。視界が女の裸で埋まっている。これほどまでに多くの女が世間様に対して自らの裸を晒しているという事実は僕を少しだけ不快にしたけれど自分はその状況を変える力を持っていない。

 高校の時の同級生にHさんという女子がいた。その時の女子たちはクラスの中で五段階くらいのレベルで住み分けがきっちりなされていて、当時のHさんの真ん中のレベルだったと思う。行事とかで中心になる最上位のレベルでも、無視されるか都合のいいように利用されるかというような最底辺のレベルでもなく、本当に真ん中だったけれど68日前に行われた地元の成人式でHさんがAV女優になったという噂を聞いた。といっても直接誰かと会話をしたわけではなく、顔はなんとなく覚えているけれど名前は思い出せない元同級生の女の子二人が話しているのを立ち聞きしたのだ。その時はまるで僕なんかこの世に存在しないみたいに成人式の会場の人間すべてに無視された。それは小学校の時からのことなのでそのこと自体は全く気にならなかったけれどHさんのことは気になった。

 アダルトコーナーに男女の二人組が入ってきた。男は178センチくらいの比較的長身の若い男で僕にはどこで売っているか検討もつかないようなオシャレな服をそつなく着こなしている。女の方もかなり若い。身長は147センチくらいだろうと見積もった。若い女の子は完全にこの場から浮き上がっていてというのもそんな若い女の子がアダルトコーナーに入ってくるのは珍しいし、さらにその女の子の右目の上あたりには紫色の大きなアザがあったからだ。いつもの癖で僕はその右目の上あたりに大きなアザがある女の子とのセックスを想像した。想像の中でその右目の上のあたりに大きなアザのある女の子はとても積極的で猛烈に勃起した。二人は僕がいる棚の反対側に回った。

 63日前にHさんの芸名とゆうか偽名をインターネットの検索エンジンで打ち込むとすぐに大量のヒットがあり61日前に僕はこのレンタルビデオ店に来てHさんが出演しているAVを探すと5分43秒で見つかった。8分21秒かけて自宅に戻ってからそのAVを見てみると当然のようにHさんは男のモノをくわえこみその後挿入されていたけど僕にはどうもHさんがその仕事を嫌々やっているように見えてそんなHさんを救えるのは自分しかいないと思ったからわざわざ実家に帰り高校の時の連絡網を36分間かけて探しだしHさんの実家に電話した。三回のコールの後に恐らくHさんの祖母だと思われるお年寄りの声が聞こえたのでHさんにお金を貸していて一向に返してくれなくて困っているのでHさんの携帯電話の番号を教えてもらえませんか? という適当な虚言を吐くとそのおばあさんは何やらごにょごにょと訳の分からないことを言った後にHさんの携帯電話の番号らしき11ケタの番号を教えてくれた。58日前に僕は教えてもらった番号に公衆電話からかけると四回のコールの後に恐らくHさんだと思われる女の子が、もしもし、とひどく不機嫌そうな声で出てそんな不機嫌そうな声を聴いた瞬間自分が何を話すつもりだったのか完全に忘れてしまったから何も言わずに緑色の重い受話器を戻してしまいすぐにひどい自己嫌悪に襲われた。Hさんを救うと決めたばかりなのにこんなこともできないのかと自分のことを4回叱咤した後に別の公衆電話からもう一度Hさんの携帯電話に電話すると今度は7回のコール後にまた、もしもし、と不機嫌なHさんらしき声が聞こえた。

 ヤマダですけど、

 は? 誰?

 T高校の2年5組で同じクラスだったヤマダですけど、

 いやいや、誰だし、

 AVを見ました、

 は?

 だから、君が出ているAVを、観ました、

 へえ、それが?

 君が辛いのは僕が一番分かってる、

 何それ?

 君はあの仕事を嫌々やっているってことはわかってるよ画面の中の君を観ていたら僕にはすぐにわかったんだ何故なら僕は今までにのべ946本のAVを観ているからそういう女の子の数的には1000人くらい見ているわけでだからその女の子が好きでそういう仕事をしているのかそれとも嫌々やっているのかすぐにわかるんだ、正確なデータを出すためにはまず必要なのは十分なサンプルの数で僕は統計学を独学で327日間勉強したことがあるからそういう重要なことをよく知っているんだよ、それで話を戻すと君はあの仕事を嫌々やっているんだろう、僕には全て分かっているから正直になっていいんだよ、それで何を言いたいかってゆうと僕は君を助けたいと思っているってことさ、お金か? どうしてもお金が必要な事情があってあんな仕事をしているの? 残念ながら僕の貯金は今54万8708円しかなくて当然僕の生活費とかも必要になってくるから全ては渡せないけ三分の一つまり18万2902円くらいなら何とか渡せるんだけどそれで君はあんな仕事を止めて新しい生活を始めればいいじゃないか、何を黙ってるんだい? ああそうか僕があまりにも親切だから何か見返りを求めてるんじゃないって疑っているんだね、いやいや僕は善意から君を助けたいと思っているだけなんだよ、何の見返りもいらないよ、あえて欲しいものがあるとすれば君から感謝されたいってことがあるけどとにかく分かってほしいのは君を救えるのは僕だけなんだってことなんだよ、Hさんよく聞いてください、あなたは今とても良くない状態にいるんだよそのことは自分でも分かっているだろう?自分自身にウソをつくなんてそんなことは絶対にやっちゃいけないことだと思うし何より君らしくないよ、確かに中学生の時に僕とHさんが交わした会話はHさんが、ちょっとそこどいて、って僕に言って僕が、うん、って言っただけだけどでも僕は前にも言ったようにHさんのことはよくわかるし何よりとても心配しているし救いたいって思ってるしそのことだけはどうしても分かってもらいたいんだ、

 僕はHさんを助けたいと本気で思っていたからその気持ちを必死に伝えようしたけれど何故か受話器からはツーツーという音が聞こえるだけだったから一度受話器を戻しもう一度Hさんの携帯電話にかけてみると何回コールした後にも出なくてどうして僕はこんなにもHさんのことを考えてあげているのにどうして出てくれないのかどうしてもわからなかった。

 54日前に僕は自分の携帯電話からHさんの携帯電話にかけてみると8回のコールの後に、もしもし、と58日前と同じような不機嫌な声でHさんが出た。

 ヤマダですけど、

 そう言っただけで電話は切れた。僕は電波状況が悪いのだろうと思いもう一度かけてみることにした。今度は5回のコールの後に電話は繋がったけれどHさんは何も言わなかったので僕は、ヤマダですけど、と名乗った後でもう一度僕がHさんのことをどれほど心配しそして救おうと思っているかを話そうとするとHさんは僕が言葉を発しようとした0.32秒前に言葉を発した。

 あのさあ、これ以上やるんなら、警察とか相談するよ、

 警察? 

 だからあ、これ以上電話とかしくんならさ、あれ、ストーカー規制法だっけ? そんなんもあるわけだし、マジで警察に相談したりするよ、マジで、

 僕はHさんの言った言葉が分からなくて日本語であるからその言葉自体はわかるけどその意味が全く頭の中に入ってこなくて気付くと、ふざけんじゃねえぞクソ女こっちがせっかくてめえのことを救ってやろうと思って下手に出てりゃあ調子に乗りやがってこっちはてめえの家から何から全部知ってんだから部屋の中で何時間でも待つしそうじゃなくてもとりあえず部屋中を探して盗聴器が無いかチェックしたほうがいいぜまあ多分全部見つけられるわけないけどな、とホントはHさんの住所も知らないし盗聴器なんて一つも仕掛けてないのにそんな虚言をものすごい勢いで吐いて電話を切ってしまった。自分がHさんにひどいことを言ってしまったことを後悔したけれど845秒後には、Hさんは救うに値しない人間だったのだ、というふうに結論つけた。別にかまわない、僕が本当に救うべき人間はこの世の中に絶対にいる。何故なら僕ほど他人の気持ちを理解し他人の問題を把握しそれを処理する能力に長けた人間は存在しないからだ。今までに何人か、この人は絶対確実に僕の手で救わなければならないと思う人間だ、と思う人間がいたが彼らは全員僕からの救いを拒否した。たぶん彼らは僕が本当に僕が救うべき人間ではなかったのだろう。そう思いながら53日間を過ごしてきたのに僕が救うべき人間を発見できていない。


 すぐ近くで暴力の音が聞こえた。柔らかいものが強い力で損なわれる音とくぐもった声。その声が助けを呼ぶときの悲鳴のようなものではなくて痛みとか苦痛とかそういったものから出るうめき声のようなものだと気付いて背筋がぞくぞくした。通路を挟んで反対側の棚に回ると床に右目の上あたりに大きなアザがある女が床に倒れていた。自分が救うべき人間を見つけた嬉しさのあまり泣きそうになった。僕は0.4秒で彼女を救う、という決心を固めたが、まず右目の上あたりに大きなアザのある女の横に立っている男の顔を見た。男は面倒くさそうな表情を浮かべながら床に転がる右目のあたりに大きなアザのある女を見下ろしていた。男は一度深い溜息をついた後に右目のあたりに大きなアザのある女の腹に自分のつま先をめり込ませた。くぐもった声が床から聞こえる。男はようやく僕に気付いたのか顔を僕の方に向け口を開いた。

「何?」

 覇気が全く感じられない声だ。

「僕は」

 その後の言葉が出てこない。

「ん、何?」

「…僕は、僕が、その子を救う、んだ、と思っている」

「へえ」

 男は、まるでこの世で一番面倒な動作をしている、というような表情で右目の上あたりに大きなアザのある女の顔を先端の尖った黒い靴の底でぐりぐりと踏みつけ始めた。

「それだったら」

 男は靴を女の顔に押し付けたまま僕の方を向いた。

「俺がもうやってるから必要ないよ、ほら見ろよ、こいつ、笑ってるだろ?」

 僕には、右目のあたりに大きなアザがある女は泣いているようにしか見えない。

「こいつがただ泣いているように見えるのか? よく見てみろよ、泣きながら笑ってるんだよ」

 僕は、もう一度男の靴の下で涙でぐちゃぐちゃになっている女の顔を見た。やはり、泣いているようにしか見えない。

「泣いているだけにしか見えないのは、お前がこいつを知らないからだ、こいつのこれは、笑ってる顔なの」

 男は憂鬱そうな表情で続けた。

「たぶん、お前は誰も救えない」

 たぶん、と言うわりには断定的な口調で男は言った。

「いや、誰も、誰のことも救うことができない、そう、確かに俺のおかげでこいつは救われてる、でも、俺が直接救ってるわけじゃない、全てはこいつの中の問題で、それを俺は手助けしているにすぎない、だから、結果的にこいつが救われたとしても、俺が救ったとは思わない、いや、思ってはいけない」

男の言っていることは僕には全く分からない。

「分からないのか? 分からないから黙っているのか? 分からないから黙っているなら分からないから黙っているって言わないと分からないから黙っているのか分からないじゃないか」

「わからな」

「そうか、分からないのか、分からないから黙っていたのか、そうか、今俺はお前が分からないから黙っていたということが分かったよ、なら、お前もやってみればいい、お前もこいつの顔を踏みつけてみればいい、そうしたら、分かるかもしれない」

 男はそう言って、今まで右目のあたりに大きなアザのある女の上に乗せていた足を離した。さんざん踏みつけられていた右目のあたりに大きなアザのある女の顔は涙か鼻水かは分からないがとにかく色々な体液でぐちゃぐちゃで、見方によっては笑っているようにも見えた。

「遠慮はいらないんだ、こいつは確かに俺を必要としているが別にそれは必ずしも俺である必要は無いわけだから、それが俺ではなくてお前であっても問題は無い、ん?なんだ?」

 床の上の右目のあたりに大きなアザのある女が何か言っている。男は、床にかがんで耳を右目のあたりに大きなアザのある女の口元に持って行った。

「そうか、そうか、うん、こいつは嫌らしい、こいつは俺以外では嫌らしい、今こいつはそうはっきりと言葉にした、言葉にしなければ伝わらないこともある、いや言ってしまえば世の中の事柄のほとんどは言葉にしなければ伝わらないことばかりなのに、空気とか雰囲気とかそういうゴミみたいな得体の知れないものが重宝される今の世の中の状況が俺は大嫌いだから今俺は素直に嬉しいんだけどそれをお前と共有できたことのほうが嬉しいよ」

 男はに倒れている右目のあたりに大きなアザのある女の子を立たせ、服についた汚れを払ってやりながら、独り言のように呟いた。本当にこの男の話し方は奇妙だ。熱を込めて話しているように見えるのに僕のほうは全く見ないために、まるで自分以外の、自分には見えない誰かに語りかけているのを見せつけられているような気分になる。本当にいらいらする話し方だ。右目の上あたりに大きなアザのある女の子が僕を見ている。その目にはっきりと軽蔑の色が浮かんでいることに僕は驚いた。何故だ? 何故僕が軽蔑されなければならないんだ? 僕はただ君を救ってあげようと思っただけなのに、君には救いを必要なんだ、でもそれに彼女自身は気付いていない、僕はどうすれば彼女を救えるのだろう、目の前の男を殴り倒せばいいのだろうか? 彼女の手を引いてこの場から立ち去るべきなのだろうか? そうしたら男が追ってくるだろう、男をまず殴り倒すべきだろうか? だが男のほうが自分よりも恐らく13cmほど背が高い、パンチが届くだろうか? いやしかしやるしかない。男に殴りかかろうと足を一歩踏み出した時には男は視界から消えていた。どこにいったんだろう? と考える前に腰に強い衝撃を感じて気付いた時には僕は前のめりに床に倒れこんでいた。顎を床にしたたかに打ち涙で視界がにじむ。頭の上から男の溜息が聞こえた。その溜息を聞くだけで男がどんな顔をしているのかなんとなくわかった。腕で身体を支えて立ち上がり男の顔を見ると予想どおり、この世に楽しいことなんか何一つないというような、そんな顔をしていた。そんな顔をしている男の横には右目の上あたりに大きなアザのある女の子が寄り添うように立ち相変わらず軽蔑を込めた目で僕を見ている。 何故だ? どうして分かってくれないんだ? 僕は君以上に君のことを分かっているのにどうして君は分かってくれないんだ?

「あなたは何も分かってない」

 右目の上あたりに大きなアザのある女の子がそう呟いた気がして、僕は二人に背を向けほとんど駆け出すような勢いでアダルトコーナーを後にした。          了

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