雪
三題噺もどき―ななひゃくきゅうじゅう。
窓の隙間から、冬の空気が入ってくる。
芯から冷えるような冷たい風。
少し強い風が吹いているのか、唸るような音も聞こえる。
「……」
ここらがこの寒さなら、更にうえのほうなんてきっと凍えるように冷たいのだろう。
その証拠のように、どうやらこの国にも雪が降り始めたらしい。
テレビでは、道路や建物の上に降り積もる様子が映し出されていた。
「……」
しんしんと、なんて可愛らしいものでもなく。
ごうごうと、風と共に吹き付けているように見えた。
あんな中で、仕事に行ったり、学校に行ったり、雪かきをしたりするのだろう……。
「……」
まぁ、とは言え、だいぶ前から降ってはいたのだろう。
ニュースで取りざたされていなかっただけで。
雪国で暮らす人々は凄いなと、純粋に思ってしまう。
「……」
あんなところ……と言うと、住んでいる人々に申し訳ないが。
私には、到底生活もできそうにない場所なのだ。
ただでさえ、冷えた空気が苦手で、冬の季節はあまり好きではないのに。
さらに冷えるような風と、雪が積もるような毎日では……本当に生活している人は凄いと思ってしまう。人間の知恵は恐ろしいな。
「……」
テレビの様子とは打って変わって、我が家の外の景色は今日も変わらない。
所々曇ってはいるが、澄んだ空気のおかげで、星がよく見える。
風が強いのはもう、デフォルトになりつつある。夜はそんなものなのだろう。昼間は生憎知らないが……天気予報なんかを見ていると、それなりに温かいらしいが、どうなのだろう。
「……窓閉めましょうか」
程よく暖房のついていた部屋が、徐々に冷え始めたあたりで、そう声がかかった。
少し前まで、キッチンでお湯を沸かしていたはずだが、さすがに寒いと思ったのだろう。
コイツもコイツで寒さに耐性があるわけではない……ハズだからな。私も別に不耐性というわけではない。ただ苦手というだけだ。
「……どうぞ」
「ありがとう……」
窓を閉めに行くその前に、両手に持っていたマグカップの内一つを渡された。
もう片方に持っていた分は、机の上に置き、気持ち小走りで窓を閉めに行く。
渡された中身は、暖かなコーヒーだ。
「……」
冷えてしまった指先を、マグカップに沿わせる。
少々痛いくらいに、必要以上に、熱く感じてしまうが、寒いよりはましだ。
ジワジワと広がる熱に、ほう、と息を吐きながら、指先を温めていく。
「……暖房強くしますか?」
「いや、大丈夫だろう」
窓を閉めてしまえば、すぐに温まるだろうし。
あまり強くしても、こう、息がしづらくなるような感覚があるので、何でも程ほどがいいのだ。……その点雪国はどうなのだろう。よく家の中は温かい、むしろ暑いくらいだと聞きはするが。
「凄い雪ですね」
「そうだな……」
隣に座りながら、テレビを見て、そうつぶやく。
今年の初め頃、こちらも雪は降ったが、ここまでではなかった。
ほんの少し積もる程度で……まぁ、珍しくはしゃいで風邪をひいたのはいい思い出だ。
それも一日だけだったから、楽しめたのだろう。アレが続くとなると話は別になる。
「……今年も降りますかね」
「……どうだろうな」
お互い、手元に温かな飲み物を持ちながら、ぼんやりとつぶやく。
私はコーヒー。
コイツはココア。マシュマロが浮いている。
「……好きだな、それ」
「美味しいですよ、飲みますか」
「いや、大丈夫だ」
甘いものが苦手というわけではないが……先程も言ったが、何でも程ほどがいいのだ。
暑すぎず、冷たすぎず。
甘すぎず、苦すぎず。
「……降るといいですね」
「……そうかもな」
降る雪を見ながら、暖かなコーヒーを飲むのも、なかなかに乙かもしれない。
「……今年は風邪をひかないようにしないといけませんね」
「……お前もはしゃいでただろう」
「ご主人程ではないですよ」
「……はしゃいではいたんだな」
お題:コーヒー・雪・星




