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地方商人の王都訪問  作者: 三日月 帆立


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3/3

王都にて

 命がけで到着した王都。母親には感謝され金品を渡されそうになり、

「ぜひその小さき命に使ってほしい」と、断った。

食料は配給制がとられており、配給所が支払えるだけの食料をある程度の安価で卸した。

歓声を後ろに次の商売へ向かう。

 衛兵詰め所へ足を向け、中に入る。

「どうされましたか? 獣人のお方」

 衛兵はてっきり困っている獣人だと思って気さくに話しかけてくる。アズラは身分証を出す。

「正面門で肉を押し付けようとした商人だ。取引に来た」

「いまか、確認してきます!」

 王国の兵士は国民配給とは別ルートの配給のため、事情を知っている者は少ないから詰め所は慌しい雰囲気となった。確認をとった詰め所に正面門の衛兵が駆け込んでくる。かなり咳き込んだ後に、息を整えて姿勢を直した。

「先ほどは善意を無下にしたのにもかかわらず、来ていただき感謝する。我々が倒れてはいけないというあなたの言葉を全衛兵の教訓として先ほど伝令を出した。改めて礼を言わせてくれ」

 兜を外し、武器を床に置いた彼は敬礼をする。

「気にせず。それに取引とは言え食糧難なのに金をむしる趣味はないんだ。悪いが商談の値下げ交渉はこちらが主導でやらせてもらうよ」

「承知した。俺がやろう、今衛兵の予算を引っ張り出してきてる。商談に入ろう」

 正面門の衛兵で名前をクリスという。目の周りががっつり腫れているが、そこはあえて深く追求しないで置いた。

「じゃあ商談だが、鹿肉以外に何があるんだ?」

「地方から来たといったろ? 鹿肉、熊肉、干物に各種野菜。調味料と香辛料もここにある。この木簡を折れば中身を取り出せる」

「詳細は分かったが予算で買えるか…実は武器も不足していてね…」

「その話を待っていたよ」

 一つの木簡を差し出す。武器が書かれていた。

「これはドワーフ殿の…」

「おまけでこれをつけるから取引してほしい。いつも私たちの村にまで巡回に来るだろう?ささやかなお礼だ。値段だが、肉が100グラム230銅貨、野菜が全部で670銅貨、調味料と香辛料は合わせて100銅貨。合計で1銀貨でどうかな」

「まってくれ! 今相場で見積もって500銀貨はするだろう!? さすがに経済的にまずいだろうが」

 クリスは激しく動揺する。周りで聞いていた衛兵も中々に困惑しているようだ。

「まぁ待っておくれよ。さっき市場にこの倍の量を880銅貨で売ってきた。これでももっと儲けが出る算段があるから今は国がなくなるほうが困る。もし前線への配給が必要でペイロードがないなら私を頼ってくれて構わない。それに本題はこれだ」

 一つの木簡を折ると空間の扉を開き、中から次々に薬を取り出す。

「本命はこの薬さ。これは法律で価格が固定されているからこっちをまじめに取引したい」

 一人の衛兵が拍手し、それが伝播する。クリスはアズラの手を握り固く握手を交わす。

「ありがとう…君のことは上級士官に報告させてもらおう。だが王都に長居するのは良くないと思っているんだが、できれば取引が終わり次第雲隠れしてくれ」

 衛兵の言う理由はわかる。こんな商人がいて敵国のライフラインを支えているとなるとやることは一つだろう。

「わかった、売り払ったらすぐに王都を発つよ。自宅に戻るから必要があれば早馬をくれればいい。酒場で卸したら帰るから。じゃあ元気で」

 衛兵の敬礼に見送られ、詰め所を後にする。そのまま大衆酒場で高級酒を卸した。酒も酒造及び販売に関する取引額規制法の度数金額法で決められた輸送費を上乗せして販売した。

「酒場の金庫が体ぜ全く」

 オーナーは頭を抱えていたが、この酒は滅多に入らないので需要も高い。すぐに元が取れるだろう。

「じゃあ元気でね」

 帰りの馬車は街道警備隊の守護付き馬車になった。これはせめてものお礼だというクリスの言葉にありがたく好意を頂戴した。

 そうして家に帰った数週間後、早馬がさっそく来た。準備をして向かった王都ではクリスの上司で上級士官が歓迎してくれた。彼女は地方で余った食材を王都へ届け、時には治療薬を前線へ隠密で運ぶ仕事もした。こうして彼女は地方で有名な獣人商人ではなく、王国で有名な獣人商人となった。

 しかし、彼女が有名になったことには取引をしてくれた相手がいたという事実を忘れてはならない。

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