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14、継母メレディスのたくらみ

更新が久しぶりになりまして申し訳ありません。ゆるゆる再開させていただきます。

どうぞよろしくお願いいたします。

「……はぁあああカワイイ……」


 妖精メレディスは、深い森の奥にある棲家でそう呟いた。


 うっとりと頬に手を置いて眺めているのは、机の上に置いている大きな黒水晶。

 その表面に、黒い髪に赤い目の美しい女性の顔が反射する。


 それとは別に黒水晶の内部に映るのは、花が咲き乱れる温室だ。


 そこでは大人用の椅子に、銀の髪の愛らしい女の子が座っていた。

 小さく切ったパンケーキを一生懸命頬張っている彼女の周りには、妖精が飛んでいた。


「ふふ、そんなにほっぺたいっぱいに詰め込んで……」


 映像の中、隣に座る人物が女の子の口元を拭った。

 プラチナブロンドをゆるく結んでいる彼女は優しい表情で女の子に声をかける。


「うっ」


 映像を見て、メレディスは胸を押さえて机に突っ伏した。


「……うぅ」


 しばらく身悶えた彼女は水晶を抱きしめた。


「……でもエメリアはもっと可愛い……!」


 しばらく水晶を抱きしめていたが、その態勢だと映像が見えないことに気づいてきちんと座り直す。


「はぁ……」


 頬杖をついて、メレディスは黒水晶に映る母子を指先でつんつん突く。


「あのくそ妖精王の愛し子なんて殺すべき存在だけど、エメリアの子なら話は別よねぇ……」


 悩ましげに息を吐いたところで、映像の中の温室に一人の男が現れた。


 銀の髪の凛々しい男である。

 彼が母子のいるテーブルに近づいたので二人の姿が見えなくなった。


「――……邪魔よ、皇帝」


 黒く塗られた爪先が水晶に食い込み、音を立てて黒水晶は粉々になった。


「あっ! せっかく苦労して忍び込ませたのに!」


 毒気と瘴気があちこちで渦を巻く森の奥で、そんな悲鳴が響いた。




「……っ」


 同時刻、王宮の中庭にある温室でエメリアはふるっと体を震わせた。


 ――今ものすごく悪寒がしたような。


 風邪だろうか。思わず腕をさする。


「おかあさま、どうしましたか」

「ううん、なんでもないわ」


 隣に座る心配そうなフレンにそう返す。

 幸い寒気は一瞬で消えたようだ。ということで気を取り直し、エメリアは今しがた温室に姿を現した夫ギルフォードを見た。


「それで……なんでしたっけ」

「視察の件だ」


 端的に言ったギルフォードは、ちらりとフレンの食べているパンケーキを見て、空いている席に座る。

 すぐに侍従やメイドがお茶を淹れ直してくれた。


「国内の視察で二週間ほど王宮を出る。フレンも一緒に」


 イヴァンが国に帰ってから三ヶ月ほどが経った。妖精の通信により国に無事に戻り、元気に過ごしていると聞いている。


 その間にギルフォードの後押しもあり、すでにフレンは皇太子として承認された。

 妖精の愛し子としての素質ももちろん加味された上で。


 視察は、お披露目の意味もあるはずだ。同時にフレンに早めに国内を見せたいということだろう。


 そこまで考えて、そっとエメリアは視線を逸らした。


 ――フレンとギルフォードだけで視察……大丈夫かしら。


 とはいえ、幸い特訓のおかげで二人の距離は近づいている。

 皇帝と皇太子の視察なら護衛も、世話してくれる者も大勢付いていくだろう。


 心配は心配だが、フレンの将来のためにエメリアが止める理由はない。

 そんなことを腕を組みながら考えていると、ギルフォードが言葉を続けた。


「皇妃として、君も視察に同行してほしい」

「――へ?」


 まぬけな声が出る。

 そんなエメリアを見て、ギルフォードは息を吐いた。


「……今の話に自分を入れないところが、らしいというか……」

「で、ですが」

「おかあさまもいっしょに旅行ですか!」

「旅行ではなく視察だ」


 これは意外な展開である。


 原作ではギルフォードは一切エメリアに皇妃の仕事をさせなかった。もちろん視察にも連れていくこともなかったはずだ。


 ――どういう心境の変化かしら。


 思わず警戒してしまうエメリアだった。

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