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袁煕立志伝withパワーアップセット おい、起きたら妻がNTRされる雑魚武将になってたんだが。いいだろう、やりたい放題やってやる!  作者: 織笠トリノ
第二部 198年 北平平定 VS公孫瓚

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第六十六話 攻略、易京城砦③ 公孫の落日

――公孫瓚


 夢か幻か。

 天空から鉄の弾が降り注ぎ、金剛不壊を誇った易京の壁が、まるで土くれのように崩されていく。

 

「なんだ……この攻撃は。敵は如何なる妖術を使っているのか」

「殿、城壁には近づかれませぬよう! 危険にございます」


 側近であり、軍師である関靖の制止すら耳に届いていない。

 公孫瓚は目の前に起きている、未曽有の破壊に対して理解することを拒絶していたのだった。


「おのれ袁家の小せがれ。南蛮の術師を用いるとは、名門の栄光も落ちたものよ」

「お引きを! 殿、殿!」

「口惜しいが、城砦外部は放棄する。全軍を二枚目の壁に集めよ」

「ははっ!」


 易京城砦は二重の壁に守られている。

 最も外側にある壁を突破することすら不可能に近いうえ、内部にも最終防衛線が引けるようになっている。


 公孫瓚は愛馬を走らせながら、憤りの様子を隠せなかった。

 戦いとは剣と槍、そして馬術と弓で決するもの。怪しげな術理を使用するのは、外法の者が行うことだ。


「我が公孫こそが河北統治に相応しい。怪しげな戦法に身を委ねし袁家に、名誉はないだろう」

「左様にございます。ですが城壁が突破されるのは時間の問題でしょう。この関靖、最後までお供します故……」

「忠君大儀である。しかし中央部には我が精兵と駿馬が控えている。無敗の白馬陣にて一兵残さず討ち取ってくれようぞ」


 間もおかず、第一の城壁に『袁』の旗が上がる。

 寄せ手の将が誰であれ、迅速な行軍と占領は心胆寒からしめるものがあった。

 恐らくは妖術の力を信用し、確実に城壁を落とすことを予定していたのだろう。


 やがて公孫瓚は第二壁――最終防衛線へと到達する。

 城内には怒号と悲鳴が響く。公孫瓚に追随できなかった部下たちの運命は暗いものがあるのだろう。


「弓兵は城壁に昇れ! 盾兵と槍兵は方形陣を組んで待機せよ!」

「そのように伝を飛ばしまする。して殿は如何に……」

「聞くまでもないことよ。我が怒涛の進撃を阻めるものなど、この河北に存在せぬ。敵陣に肉薄し、袁家の小せがれを弓の的にしてくれよう」


 走らせた馬を交換し、公孫瓚は白馬で統一された部隊の先頭に立つ。

 第一城壁を取って調子に乗っている愚か者どもを、地獄の底に叩き落としてやると、気炎万丈の眼を持って。


「全軍、準備は良いな? これより袁の牙門旗を叩き折りに参る。それぞれに磨いた武勇を存分に奮うべし!」

「お任せください。北方の大地で鍛えられた精鋭五百騎、殿のご命令であれば炎の中にでも突撃しましょうぞ」

「うむ。我ら公孫は家族も同様。汗と血を流して励んだ日々は、決して諸君らを裏切ることはないだろう」


 鼓舞の声を受け、白馬義従たちは修羅の顔つきになる。

 眼前にいる袁の兵を皆殺しにすること。それこそが存在意義とでも言わんばかりに、強く弓を握りしめていた。


「開門せよ! さあ、行くぞ。我らの恐怖、敵に刻んでくれん!」

「応ッ!」



――袁煕

 

 よしよし。良い調子じゃないか。

 そう安堵するにはまだ早いのは分かっている。だが難攻不落と名高い易京を、半ば落としたというのは戦果がデカい。


「文醜将軍、残敵の掃討完了のご報告! 捕縛した敵兵は数千に及びます」

「魏延将軍、公孫瓚の嫡子、公孫続を確保とのこと! 退路を確保しつつ、敵将を後送するとのことです!」


「ご苦労さま。追い風は確実に袁家に吹いている。このまま制圧出来ればいいが」

 

 油断大敵なんてワードは、日本人ならば一度は聞いたことがあるだろう。

 油は無いが、敵の動向は最後まで警戒しなくてはならない。窮鼠猫を嚙むとも言うしね。


「もぐら部隊の潜入も完了……と。陸遜たちも配置についたか。あとは詰将棋であってほしいんだがねぇ」


 第一城壁の占領後、敵兵の動きは鈍重だったらしい。

 というより、統率する将がとっとと逃亡したためか、右往左往する敗残兵が寧ろ邪魔だったようだ。


「殿、この公則めに名案がございますぞ」

「……あ、うん。何だろうか」


 水を差す奴ってのは、どこにでもいるよな。

 今ガチで脳みそ使ってんだから、邪魔すんな的な。

 文章書いてるときにライン飛ばしてくるとか、そういう系よ。


「このまま破城槌を進ませ、敵の城門を破壊するのが吉かと。いかな公孫の易京と言えど、袁家の威風にかかれば紙屑も同然ですぞ!」

「参考にしとくよ……」


 つまり正攻法はアウトってことだな。

 これは敵の反撃が待っているってことなのだろうか。

 郭図の言うことは全てが逆。故に攻勢に出るのは危険か。


「伝令を飛ばせ! 文将軍は敵前面からの攻撃に備え、防備を固めよと。魏将軍は残敵を掃討しつつ、援護にまわるべし」

「ははっ!」


 しゃーない。

 切り札を使うか。


「陸兄弟に伝令。特技を発揮せよ、と」

「かしこまりました。急ぎ前線へ走ります!」


 史実によれば、易京の地下を掘ることで陥落させたという出来事があった。

 しかしねじ曲がった歴史では、トレブシェットの攻撃で出番を奪ってしまった感がある。無駄な犠牲が出ない分、結果オーライなんだが、ちょっと悲しい。


「さて、公孫瓚。ナチュラル・ボーン・放火魔の犯行、防げるかな?」


 俺の目には、まだ見たことのない夷陵の大火が映っている。

 劉備玄徳を敗走させた地獄の猛火を、時代先取りでぶっ放してみようか。


――公孫瓚


 城門が開く。

 馬の腹に足を打ち付け、走りだそうと力を込めた。

 白馬陣は速度と破壊力を兼ね備えた、攻勢の陣形である。

 公孫瓚は防御にまわった自分を悔いていた。故事にいわく、先手必勝と。常に攻め続け、敵の反撃を許さぬ戦いこそが、北方の雄に相応しい戦闘であることを失念していた。


「全軍、進め―――ッ!?」


 槍衾ならぬ、弩兵の連射が待ち受けていた。

 敵は破城槌を持ち出して、悠々と攻撃を仕掛けてくるものと思っていたのだが、完全に読みが外れたらしい。


 風斬り音とともに、苦楽を共有した仲間たちが朱に伏していく。

 公孫瓚自身も肩口に矢を受け、弓を取り落としてしまっていた。


 急ぎ馬の首を返し、城内へと撤兵しようとするが、時すでに遅し。

 精鋭五百騎は、見るも無残に討ち取られていく。命からがら脱出した公孫瓚の脳裏には、己の刑死がちらついていた。


「残存兵力を集めよ! 敵の攻勢を押し返すぞ! 関靖、準備は良いか?」

「整っております。しかし、このままでは……」

「張燕に出した使いは、まだ戻らぬか」

「恐らくは捕殺されたものと思われます。袁煕なる男、凡愚を演じていたのかもしれませぬ」


 狂人を演じれば狂人になると言う。ならば暗愚を晒している袁煕は、暗愚でなくてはならない。そうでなくては道理が通らない。


「いずれにせよ構わぬ……か。討ち取ってしまえば事は済む。今は耐えしのぎ、北平への道を開くのが最適か」


 公孫瓚は知る由もないが、現在北平の町は鮮于輔と烏桓の攻撃を受けている。

 援軍はおろか、今にも陥落する寸前であった。


「殿、一大事ですぞ!」

「ええい、今度はなんだ。関靖、説明せよ!」

「糧秣倉庫が炎上しております。あああ、武器庫も……」


 もはや血の気の失せ切った関靖は、擬音を発するのみになってしまった。

 肩を揺するが、頭を抱えてうずくまってしまうのみだ。


「関靖め……ぬかったか。このままでは炎に焙られるか、矢で蜂の巣にされるか……か。おのれ……は、そうだ!」


 公孫瓚は一つの打開策を見つける。

 北平に無事退却するには、時間を稼ぐ必要がある。それゆえに、この第二城砦を死守させるしか道はない。


「関靖、関靖。今より命令を下す。聞こえているか?」

「……は、はい。殿、我らは一体どうすれば」

「うむ。この第二城砦を何としても守り抜き、敵を足止めしておくのだ。その間に儂が北平に戻り、援軍を連れて参る」

「そ、そんな……。兵糧も武器も灰になってしまったのですぞ!」

「公孫の兵はそれしきでは屈さぬ。関靖よ、其方が指揮を執り、敵を釘付けにしておくのだぞ」


 目を見張る。目を剥く。目を疑う。

 迂遠なる処刑命令に、関靖は口から魂の尾が飛び去って行くのを感じていた。


「そうと決まれば、すぐに撤退だ。十騎ついてまいれ。北平へと転進するぞ」

 公孫瓚が馬を走らせようとした時だった。


「殿、この関靖に腹案がございます。上手くいけば犠牲を出さずに敵を引かせることが出来るでしょう」

「ほう……流石は公孫の軍師よ。して、その名案とは如何なるものか」

「では殿、お耳を……」


 公孫瓚は、背中に迫る槍に、最後まで気づかなかった。

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