表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
袁煕立志伝withパワーアップセット おい、起きたら妻がNTRされる雑魚武将になってたんだが。いいだろう、やりたい放題やってやる!  作者: 織笠トリノ
第二部 198年 北平平定 VS公孫瓚

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/187

第六十五話 攻略、易京城砦② 今だ、パワーをメテオに!

 物見の報告によれば、城門は開かず、寄せ手の将である公孫越はそのまま雑兵に討たれたそうだ。

 

 第二次世界大戦のときの話だ。

 敵軍に包囲された『テキサス大隊』を助けるために、日系人で構成された『442連隊』が犠牲を省みずに道をこじ開け、結果救出に成功したという逸話がある。


 数的な観点から見れば、損失が増えたのは否めない。

 だが、戦場に味方をおいて見捨てることはしない、という断固たる決意を示した一戦になった。

 単純な被害で論じるのは簡単だろうが、世間には『士気』という感情で測れない概念がある。戦局を左右するエッセンスなので、維持するには相応の覚悟と犠牲が必要になるのだろう。


「敵ながら……少し悲しい結末だったな」

 俺がぼそりとつぶやいたのを、左右に侍る陸兄弟は聞き逃さなかったようだ。


「籠城戦なればこそ、打って出た部隊の回収は必須でございましょう。敵軍に戦場を俯瞰できる者がおりますれば、高覧様の突入は阻めたはずです」

「兄上に同意です。彼我の戦力差大なる今、城砦内の結束こそが生命線かと。公孫は勝負所を逃してしまったようですね」


 流石江南名家の麒麟児たちよ。

 帷幕の中で策を巡らせ、戦場を理解する能力はずば抜けている。

 惜しむらくは、彼ら若者を戦場に駆り出さなければならなかったことだろうか。

 戦の無い世の中は、未だに遠く、高みにあるのだろう。


「敵がチョンボかましたからには、それに付け込まない手はない。続けて第二の矢を放つぞ」

「はっ、それでは工作開始の狼煙をあげるよう、手配してまいりまする」


 陸兄弟を送り出し、俺は簡易的な椅子に腰かける。戦場故粗末なものであるが、立ちっぱなしで指揮をしている各司令官に比べれば、まだまともな環境であろう。


「異民族……ねえ。どうもゲームだとクッソ強い設定がされてんだけど、実際はどうなんだか」

 概ね彼らは兵数や兵糧がマックス近くに盛られており、接近するだけで部隊が溶ける仕様になっているものもある。

 それでいて好戦的。定期的にご機嫌伺いに行かないと、問答無用で襲ってくるやべーやつらだ。


「さて、高柔先生はうまくやってくれてるだろうか」


 信じて送り出した高柔が、蛮族プレイに落とされて帰ってくるとかいう結果になったら、俺は憤死してしまうかもしれん。


 投降してきた田豫によれば、鮮于輔なる人物が北平の攻撃を企図しているらしい。

 北平に住む民には迷惑極まる話だが、戦場でメンチ切り合ってる立場としては渡りに船だ。


 いいぞ、もっとやれ。

 前門タイガーと後門ウルフ、どっちに掘られるのか決めておいた方がいいぞ、公孫瓚君よ。


「工作の結果が出るのはまだ日数がかかろう。時間を与えれば易京の防備が回復してしまうかもしれん。ならば攻めるは今か……」


 脳みそが郭図寄りに汚染されてきた気がするが、戦場の勘が囁く。

 心を攻め、のちに城を攻める。

 某登山家の言ではないが、やるのであれば一気呵成に進軍すべきだろう。


「高覧に伝達。『わざと見せた旧式の攻城兵器は放棄し、軍を帰すべしと」

 命令書をさらさらと書き、伝令に持たせる。

 馬で引かせるような、レトロ感ある破城槌なんぞ、これからの戦では弓矢の的同然だ。長く使えるわけではないので、いっそこの場で捨ててもヨカのロウだ。


「張郃将軍に任せておいた、遠投投石機の出番だな。郭嘉には悪いが、武官に任せる方が臨機応変に対応出来るだろう」


 俺はやがて降り注ぐであろう、中華版メテオに期待を馳せた。

 文醜の騎兵、魏延の歩兵も再編が終わり、いつでも突入準備が出来ている。

 

「出来れば降伏して欲しいが……そこは譲れんものもあるだろうな。武門に生まれるってのは、マジで難儀なことだよ」


 シリアルキラーの気質は無いと思っているので、徒に死骸を積み重ねる状況は見たくない。だが、やらねばやられるのがリアルワールドだ。

 

 一陣の風が、雪を纏って吹き抜けていく。

 曇天は重く、まるで深海魚にでもなったかのように体が沈みそうだ。


「覚悟……か。俺が時代に望まれるのであれば、それは天命ってやつなんだろうかね。だとすれば、いつまでも腑抜けているわけにはいかないな」


 迷いは有れど、視界には灯火が光る。

 行くぞ、公孫瓚。

 袁家が奏でるオーケストラに耐えきれるかな。


 遠投投石機部隊 張郃


 先の戦で負傷をした張郃は、後陣にある遠投投石機の責任者として指揮を執っている。傷は痛むが、汚名返上の機会が与えられた事は重畳の極みだろう。

 

「張将軍、殿よりご命令が届きましてございます! これより新兵器による攻撃を開始し、城砦を破壊せよと!」

「委細承知……ッピ。総員、これより敵が詰める易京を更地にする。殿が考案された、袁家の威信をかけた攻撃ッピ。決してぬかることなかれッピ」

「ピッ!」


 トレビュシェット。

 中世ヨーロッパではおなじみの、いわゆる回転式投石機だ。

 岩石などを詰めた重量によって、投石台に乗せた弾を遠心力とテコの原理を用いて飛ばす兵器である。


 カタパルトよりも遠く、強く。バリスタよりも防ぎ辛い。

 あえて難点をあげれば、故障しやすく、メンテナンスに時間がかかることだろうか。当然ながら近接戦闘には対応出来ず、安全地帯から一方的に攻撃することを想定して運用されるものだ。


「はじめは面妖さに驚いたが……殿の英知は天通しているのではなかろうかッピ」

 当初は半信半疑だった張郃であったが、従来の攻城兵器からは想像も出来ないほどの射程力と攻撃力を目の当たりにし、語尾がピではなくピョ、になるほどだった。


「張将軍、全部隊攻撃準備完了いたしました。お下知を!」

「よし、青の狼煙をあげよ。同時に攻撃開始だッピ!」

「応ッ!」


 高台に設置された遠投投石機二十台は、魔弾の射手と化す。

 地獄で待ち受けるのはザミエルか郭図か。

 カスパールたる張郃には、まだ未来は分からない。


 確実に言えることは――


「着弾確認ッ! て、敵城砦の一部が崩落しておりまする……」

「何という威力だ。さもありなん、鉄球を飛ばすという離れ業故、石材の壁など楮と同義よ……」


 プロトタイプなので、発射回数には限界がある。

 戦場で組み立てる必要性と、共通規格という概念の無さ。そして木材ゆえの耐久性の少なさによって、連続発射をすれば稼働率は低下していく。


 それでも打ち込んだ鉄球は少なからず命中し、都度城砦にダメージを与えていくことが出来た。

 恐らく城内は蜂の巣を突いたような大騒ぎになっているに違いない。


「将軍、最後の投石機が使用限界を迎えました。いかがいたしましょう」

「成すべきは成したッピ。金城鉄壁と謳われた易京が、今では蓮の花のように穴だらけになっているッピ」

 

 打撃力、まさに大なり。

 破壊されたものは城壁だけにはとどまらないだろう。

 公孫瓚がよって立つところ。つまりは自らの安寧と慢心を木っ端微塵に吹き飛ばすことに成功したのだ。


「投石機を解体し、我らも中軍に合流するッピ。やはり前線で手柄も上げてこそ、武士の本懐だッピね」

「ピッ」


 よく訓練されている兵士たちの動きはよどみない。

 郭嘉によって具現化され、徹底的に鍛えられた、中華初の長距離砲撃部隊だ。

 監督する張郃も百戦錬磨の猛将である。

 時代の変化とは斯くも恐るべきことなのかと、張郃は感嘆の吐息を漏らした。

 

 残りは、敵将の首のみ。

 手傷を負わせた趙雲はもういない。残りは名も知れぬ者ばかりだが、少しでも武勇を奮いたくなる衝動に駆られていた。


「ふぅ……」

 舞い散る雪が、ふっと張郃の鼻に落ちる。


「勘違いをしていたッピね。拙者の任務は果たし終えた。負傷した身体を引きずり、前線に出ても吉とはならないッピ」


 今、やるべきは何か。

 秘密の保全と、素早い撤収。

 何よりも、主たる袁煕の近辺を守るのが最善だろう。


 張郃は芽生えていた武功欲を摘み取り、総大将たる袁煕の護衛にまわることにした。旗頭が倒れられては、この先にある混迷の時代を乗り越えられないだろう。


「功なりて、身を引くは天の道なり……ッピ」

 

 補足情報だが、張郃が袁煕の周囲を固めたことにより、潜んでいた公孫瓚の暗殺者や細作を排除出来たという。

お読みいただきありがとうございました!

面白いと思われましたら、★やブクマで応援いただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] いいですとも!(投石セット)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ