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袁煕立志伝withパワーアップセット おい、起きたら妻がNTRされる雑魚武将になってたんだが。いいだろう、やりたい放題やってやる!  作者: 織笠トリノ
200年 春 第二次官渡の戦い

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第百五十七話 白馬へ

――袁煕


 機は熟した。そう評しても過言ではないだろう。


 斥候によると敵の兵数は六万近くに膨れ上がっているという。

 しかしこちらは鄴とその周辺に築いた支城も含めて十五万の軍勢を擁している。

 率いる将も現代日本で知名度抜群の勇士たちだ。


 これ以上を望むのは欲をかきすぎるに違いない。


袁家・曹魏連合軍 陣容


◇白馬侵攻軍・袁家 八万


総大将;袁煕

正軍師:郭図

副軍師:郭嘉

直営将軍:張飛


副将:張郃 補佐:許攸

先手大将:魏延 補佐:王威

右翼大将:顔良 補佐:蒋義渠しょうぎきょ

左翼大将:文醜 補佐:高覧


搦手乃将:趙雲 張遼 呂玲綺

従軍参謀:陸遜 陸瑁 


◇鄴守備隊 三万


総大将:袁紹

正軍師:田豊

副軍師:沮授


城塞指揮官:司馬孚 賈逵 審配 牽招

従軍参謀:辛毘 陳琳 


◇助攻部隊 三万


総大将:袁譚

正軍師:辛評

副軍師:徐庶


先手大将:黄忠

搦手乃将:太史慈


◇白馬侵攻軍・曹魏 一万


総大将:曹操

正軍師:賈詡(出向)

副軍師:


先手大将:夏侯惇

搦手大将:夏侯淵

従軍武将:史渙(出向) 呂威璜(出向) 



◇邯鄲守備隊


総大将:袁尚

正軍師:逢紀

副軍師:陳羣(南皮より出向)


守備乃将:周倉 裴元紹

奴隷:龐統



――再び袁煕


 うーんこの。

 ゲームだったら脳死で攻めれば勝てそうな軍容に舌を巻くしかない。

 

 しかして敵はこの身の怨敵である曹丕だ。

 寿命的には短かったと思うが、そんな時間なぞ待ってられん。

 このまま一気呵成に討ち滅ぼさせてもらおうか。


 陣太鼓が打ち鳴らされ、威風を纏った精鋭部隊が鄴より出撃する。

 歴史をこれでもかと変えてきたが、この一戦はその天王山と言えよう。

 

 手が震える。

 俺は未だ見たことのない景色を目の前に、きっと怯えているのかもしれない。

 だが踏み越えて行かなくては。

 

 保身だけで生きてきたのだが、今は乱世の終焉を心から願っている。

 引き返せない道ならば突き進むのみ。

 敵は中原にあり。地獄の沙汰も金次第のマネーロードだ。

 

 鐙に乗せた足で馬の腹に軽く合図を送る。

 さあ走ろう。

 どこまで進めるのかわからないが、やってみよう。

 人々の暮らしを守るために。家族を守るために。仲間を守るために。


 俺は風に身を同化させて翔けるのだった。



――曹丕


 時間稼ぎもここまでかと、曹丕は不機嫌に報告書をねめつける。

 田舎の片隅からでもかき集めた兵士たちだが、袁家の物量にはまだ及ばない。

 天の時・地の利・人の和。

 これらが揃わなくては戦いに勝てぬと説かれている。

 だが曹丕はゲン担ぎの一つであると、一笑に付した。


「仲徳、お前の采配を見せてもらおう。さぞや面白き仕掛けがあるのだろうな?」

「お任せあれ。袁家の者どもを埋葬する土地が足りるかどうか心配ですな」

「フッ、野ざらしで構わん。好きに差配せよ」


 白馬に揃った兵士は決して練度が高いわけではない。

 そして率いる将の絶対数も不足している。


「十面埋伏の『あえての』失敗は先の戦で見せた。敵の手法も覗き見る事が出来た故、再び同質の罠を設置すれば食いついてこよう」


 程昱は曹丕の天幕を辞し、迎撃の準備を指示していく。

 名将徐晃を失ったのは大きいが、これを逆手に取って劣勢を演出する予定である。


「先手には呂虔・徐商・李通・劉岱・王忠を当てる。各将ともに凡戦を繰り広げ、所定の位置まで敵軍を誘導せよ」

「はっ! しかし敵の主力に対して我らは各三千でございます。鎧袖一触で破られる恐れもあるかと……」

「構わぬ。演技でも本気でも良い。敗走することこそが重要なのだ」


 先手大将の代表である呂虔の意志はあっけなく否定された。

 集った将たちは疑念を抱いてはいるものの、主君であった曹操を討った袁家憎しの想いで動くしかないのだ。


「さて、曹家の一族は上手く踊ってくれるのだろうか。死の舞踏を最後まで演じきった者だけが帰って来れるのだぞ」


 程昱の仕込みは済んでいる。

 彼の頭脳では、戦場での勝利にこだわることは考えていない。

 戦略があり、戦術があり、戦場での戦闘がある。

 大目標たる戦略の部分で敗北していなければ、最終的に負けることはないと信じている。


 十面埋伏。

 程昱の中では二度目に潜む刃こそが本命である。

 

 文字通り十の埋伏をして、敵に波状攻撃を仕掛けることが表向きの戦い方だ。

 しかしこの芸術を完成させるには、一度敗北させることが必要なのである。


「我が生涯を賭けた絵画。さて、血化粧はどのように彩ってくれるのか」


 先手で出した将の半数は戻ってくるまい。

 撒き餌としては十分だろう。袁家も勢いづくに違いない。


「色めき立った馬鹿どもは埋伏の地に導かれる。しかして知恵者は気づくだろうて。これが罠であることに」


 袁家も粒ぞろいの名将・知将が雁首揃えている。

 故に必ず気づく。

 そこで軍を停止し、過去成功したように伏兵狩りを始めるだろう。


 そう、軍を止める。

 恐らくは敵の本隊は方陣を敷き、亀のように縮こまって防備を固めるだろう。


「さぞや派手に燃えるだろうて。終末の炎をとくとその身に受けるがいいぞ」


 死地と見せかけ、その奥に弱点がある。

 しかしその弱点こそが本当の死地だ。


 十面獄炎の計。


 程昱が数的劣勢を覆す一撃を狙うのは、必殺の火計だった。



――曹操


「孟徳様、へへへ、そろそろですかねぇ」

「うむ。儂の居ぬ間に散々遊戯したであろう、子桓。そろそろ後片付けをせねばな」


 夏侯淵の問いに応え、曹操は遠く白馬を見る。

 嵐の前の静けさとも言える状況において、僅か一万の兵を与えられた曹操は極めて冷静であった。


「元譲、妙才。子桓は何を狙うと思う?」

「フン、残念ながら俺たちは標的ではあるまい。袁家の子せがれを討ち取り、城を落とすことに注力するだろうな」

「へへへ、そうだなぁ……俺だったら敵の機動力を奪いたいところだなぁ」


 まだ足りぬか。

 曹操は可能性を一つ一つ吟味していくが、どうにも敗戦の目を消しきれずにいた。

 敵を詰ませるには何が必要なのか。

 まず勝利し、それから戦うべし。孫武の金言はどの時代でも通じると信じている。


「――敵の狙いは一つでしょう。孟徳公、一つ手のひらにお書きになられてはいかがですかな?」

「貴様は……ふむ、面白い。儂の答えはこれだ」

「では某も」


 従軍軍師に任じられた男、賈詡。

 稀代の英雄に筆を渡し、お互いに書かれた文字を見せ合う。


【火】


 古来より寡兵で大軍を屠るには、この方法が王道であると言われている。

 白馬付近には樹木が生い茂り、自然豊かな土地だ。

 そして兵を伏せられる盆地や林が数多く存在している。


「子桓めは短気だ。そして付き従う程仲徳は人心を解せぬ……故に長期戦は嫌うであろうな」

「左様でございますな。であれば我らは敵の目的を挫き、その計略を台無しにしてしまうのがよろしいかと」

「策士が策を失ったとき、さぞや子気味良い吠え面を見せてくれるに違いないわ」


 曹操は斥候の数を増やし、進軍の速度をやや遅めた。

 この戦いは情報を征した者が勝つ。

 特に鮮度の高いものが必要だと肌感覚で覚えているのだ。


「仲徳めの狙いを正確に把握せよ。彼奴のことだ、多数の捨て駒を用意していることだろうて」

「先手に出てくる将たちには同情いたしますな」

「儂が健在であることは間者に託しておるのだがな。中々に情報封鎖が上手い」

「孟徳公がおいでとわかれば、彼らの存在そのものが瓦解しますからな」


 袁・曹連合軍で最も早く敵と接したのは、図らずも曹操率いる助攻の部隊であった。


 夏侯惇の裂帛した気炎が叫びを上げる。

 対するは劉岱・王忠の軍。


 数にして三千対六千。

 倍する兵力を前にして、夏侯惇は普段隠し持っている野生を開放させた。


「皆殺しだぁあああああッ!! 俺に続けッ!!」

「おおおおっ!!」


 曹魏の大剣が、今鞘から抜かれた。

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― 新着の感想 ―
夏一族で一番有名な御仁が先手か・・・ 胸が熱くなるな! しかし、火計すか・・・こっちにゃレジェンド放火魔いるんだけどねー?w
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