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[完結]侯爵家の三男だけど能力板には大盗賊って出ちゃいました。  作者: 安ころもっち
第三章 アレスの新たなる力

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34 王様になれちゃうんじゃない?

翌朝、スッキリとした気分で目覚める。

すでに2人はバスルームのようだ。


時刻は朝刻を少し過ぎたところ。オークションは午後からなのでゆっくり支度して備えておこう。

その後、オークションまではダラダラとした時を過ごす。


そしてお昼時前に宿を出ると、会場となる大聖堂の近くの屋台で串肉を頬張ってお腹を満たした。


会場にはすでに人が集まっており長蛇の列ができていた。これは入れるか怪しいなって思っていたが、クラウに手を引かれた僕とリーゼがその列を素通りして歩いてゆく。


「オークション出品者用の入り口はこっちなんですよ」

クラウにそう言われて納得。


そう言えばリーゼさんに出品者は優遇がどうとか言っていたようだ気がする。クラウは昼間ダラダラしていた僕の隣で何かパンフレットのような物を読んでたので事前に確認ずみなのだろう。


「クラウはやっぱり凄いね」

そう言うと、クラウはふふっと笑い上機嫌になったようだ。


その出品者用の入り口でクラウに促され係員に冒険者カードを見せると、そのまますんなり中へと通してくれた。中に入ってびっくりしてしまう。

どれだけ金をかけてるんだ?ってくらい金ぴかで煌びやかな講堂の内装に若干引いていた。普段は教会の神官が回復や祈祷を行う場所と言うが…相当儲かっているんだろうなとため息をついた。


そして中にいた係員に再度冒険者カードを見せ、案内されるまま控室となる部屋へ通される。


「では、何かありましたらこの者たちにお申し付けください」

そう言って頭を下げる係員。


室内にはメイドさんが2人いて、自由に菓子や飲み物を提供してくれると言う。


「皆さんにこういった控室が与えられるんですか?」

「いえ、アレス様たちは今回の目玉となる商品の出品者様ですので…他の方々は大部屋を用意していますが、そちらの方が良かったでしょうか?」


そういう事かと納得しつつ「いえ、この部屋で大丈夫です」と返しておくと、そのまま係員は微笑み部屋を出ていった。そしてソファーに並んで座り、しばらくゆったりとした時間を楽しんだ。


「そろそろ開始となります」

メイドさんがそう言うと、部屋のカーテンが開く。


するとそこに隠されていた大きな窓から、会場内が見えるようになっていた。

どうりでカーテンの近くにカーテンに向かって豪華なソファーがあるわけだ。普段は何につかってるんだろう?


3人でその窓際のソファーへと移動するが、会場内には貴族や商人が集まっているのか皆豪華な服を着ている。ちょっと場違い感があるので若干恥ずかしくなるが、どうやらその窓、外からは見えないようになっているらしい。


メイドさんの説明を聞き、益々普段は何に使っているのかが気になってしまう。


そしてけたたましいファンファーレと共に開始されたオークション。

炎が付与された剣や2属性の耐性が付与されたローブ、風の魔石、高濃度魔法石なんて何に使うか分からない物もあったが、どれも白金貨以上で落札されてゆく。

今回の目玉だと言われてしまっている白魔石が、どのぐらいの価格になるのかある意味怖くなってしまう。


そして白熱する掛け合いを見ながら、美味しい紅茶を頂く…なんだかとんでもなく贅沢なことをしているような気分になる。実家でもこんな体験してこなかったからね。

両脇の2人も少し緊張しているように見えた。


「それでは、最後の品となります!」

司会のおじさんの言葉で始まった白魔石のオークション。


開始値が白金貨10枚からだった。

その時点で2人が口を開け思考停止していたようだ。

もちろん僕もかなり驚いている。


そんな僕たちを余所に金額がどんどん上がってゆく。

最終的には多分商人と思われる服装の男と、神官職であろうローブを着たおじさんなどが競り合っている。そして貴族のおじさんも「40枚だ!」なんて叫んでいる…あのおじさん、ちょっと見たことあるんですが…


「アレス、どうしよう」

「私たち、どうなっちゃうの?」

「いや、大丈夫だよ。これで色々買えちゃうね」

僕の言葉に2人はうなずいているが、どこか心ここにあらずになっているようだ。


結局、白金貨55枚で貴族のおじさんが競り勝ったようで、髪を振り乱してガッツポーズをしていた。やっぱりあのおじさんって…懐かしい人の顔を思い出してしまった。


こうして、初めてのオークションを体験した僕たちは、部屋にやってきた主催者だという執事のような格好の男性に1週間ほどで手数料の1割を引いた49,500,000ロズ、白金貨49枚と金貨50枚分をギルドの僕の口座に振り込むらしい。


戸惑いながらもその主催者さんやメイドさん、係員さんなどに見送られ会場を後にする。その姿を参加した人たちにジロジロ見られて何やらゴニョゴニョされているので、やっぱり良い服を用意しておくべきだったと反省し、恥ずかしさに悶えた。


「アレス、どうしましょう。どうしたら良いのでしょうか?」

「そうだよアレス!白い金貨がいっぱいだよ?王様になれちゃうんじゃない?」

クラウはともかくリーゼは何を言っているんだ。


「大丈夫だよ。とにかく、あれは3人の共有財産ということで、振り込まれたら良い魔法のバッグでも買おうよ」

僕の言葉にうなずく2人。


その日は宿に戻り、豪華な食事を取って寝ることになった。

もちろん寝る前には歌わされた。


手慣れたもので、今日は3人並んで布団に入った状態で何度か歌い、自分にも回復をかけて癒された後に眠りについた。こんな幸せな毎日が、何時までも続きますようにと願いながら…


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ユルモンド聖教会

ユルモンド王国の神官たちが集まった組織。神官職のほとんどが所属している組織で、主に怪我や病気の治療や祝福という運気を上げるおまじないであったり、悩み事相談、冠婚葬祭の儀式などを取り仕切る組織だ。その力は強大で、他国にも同様の組織があるが、ほぼ同一と言ってよい位連携をとっているようだ。王族と言えども敵対はしないほどの権力を持っている。

一般市民や冒険者などは教会の高いお布施が払えず、協会に属さない神官職の人や、回復や解毒持ちの冒険者などに治療してもらったり、薬に頼ったりするのが一般的。なので利用するのは主に貴族や大商人で、一般人も薬じゃ治らない大けがや重病の時に仕方なく利用するようだ。

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