18 今回は甘えちゃおうかな?
やっとたどり着いた13階層。
また少し強くなっている魔物達。
13階層であっても僕たちはそれなりに戦えていた。
だが正直体力の減りが激しい。
今日は一番多く狩っているであろうオーガ。
その固い表皮を裂き、汗だくになりながらも魔石を取り出すことで、体力が減ってしまう。当然ダメージを受けてはいないため外殻は減っていない。純粋に疲れによる体力の減少だ。
これはもうちょっと良い短刀を買うか、魔物の素材を放置するか選択しないと先に進むのがつらそうだ。
もちろんもう少し『力』が増せば問題は無くなるのだが、僕より力があるリーゼに全部解体を任せるわけにもいかす、やはり短刀の性能アップは急務のようだ。
オーガも死ねば表皮に纏った魔力が消えるため、少しは柔らかくなるはずなんだけど…『力』の能力玉がほしい。そのためにもオーガをもっと倒さねば…
結局夕刻前に戻ることにした僕たち。
勿体ないので帰還札は使わずに、道すがら狩りをしながら夜遅くに10階層の休憩ポイントまで、なんとか戻ってくることができた。遅い時間のためそのまま宿屋に直行して軽く夜食を頂いた。
翌朝には移動用にいくつかの魔石を残し素材を買取してもらったが、それぞれ金貨15枚とかなりの収入になった為、早速解体用に短刀を物色するため武器屋へと足を運んだ。
「これは!」
「あっ、良いかも。『魔石の欠片を嵌めると切れ味が上がる魔法の短剣』って書いてあるね!」
その『ハイグレード短剣[魔石補助付き]』という良さそうな名前につられて確認したその短剣は、金貨30枚と短剣としてはかなり高い部類に入るが、その分、効果は絶大なのだろう。
リーゼも目をキラキラと輝かせている。
「一応魔剣に属するものですね。魔短剣というところでしょうか。でも…ちょっと高額ですよね」
「そうだよね。でもこれがあれば…」
クラウの言う通り、効果が付与されている魔剣としてはそれなりなのだろう価格に、手が出ないことが悔やまれる。
「解体をアレスに任せてるんだから、私も出そっか?」
「そう言えばそうですよね。3等分でなら買えますし」
「えっ?悪いよ!それに2人だって剣とか杖とか、欲しいのあるんじゃないの?」
2人の提案に戸惑ってしまう。
「でも、解体のスピードが上がればもっと儲かるよ?」
「そうですよ。それに、その短剣でならアレスも小物だったら[疾風]だけで、戦えそうじゃないですか?」
確かに、魔力補助の切れ味があれば、斑蜘蛛やブラッドスネークであれば[疾風]で狩れそうな気もするが…甘えても良いのだろうか?
「そんなに悩んでないでさ、10枚ずつ出し合って他のはまた今度でいいんじゃない?すぐに稼げるよ。私たちならさ」
「そうですよ。そうしましょう。ひとり金貨10枚って考えたら、安く感じてしまいませんか?」
「たしかに…じゃあ、今回は甘えちゃおうかな?」
僕の返事に「そうしよう、そうしましょう」と金貨10枚を手渡してくる2人。
早速カウンターまで行くと、ついでに魔石の欠片の入手法について聞いてみた。
「ああ、それならウチでもやってるよ。買ってくれたんだから3個分ぐらいはサービスするし、普段も10個で1万ロゼだから、その時は声かけとくれ」
「分かりました。じゃあこれを…」
そう言って短剣とオーガなどから取り出した魔石3つをカウンターに置く。
「おっ、あんたら結構強かったんだね。これ、迷宮の中層あたりの魔石だろ?」
「まあ、まだ駆け出しですけどね」
店員さんの誉め言葉に少し照れる。
その後、「じゃあまた来ておくれ」と送り出され、軟膏や毒消し、食料などを買って迷宮に入る。
試しにと最初に遭遇したオーガに[疾風]で近づくとその勢いのままハイグレード短剣で太ももを切りさいた。
少し手に抵抗を感じ、僕の外殻が5削れたものの、切り裂かれた太ももを抑え膝をつくオーガ。これは狙いどころを考えたら意外と行けるかも、と思わざるえない。
その後、膝をついたオーガにリーゼが何度か切りかかり、弱ったところを背後から思いっきり短剣を突き刺してみると、それなりに深く刺さり倒し切ることができたようだ。
「これ、やばいね」
「さすが金貨30枚ですね」
「私もこんな剣ほしい!」
リーゼも興奮しつつそう言うが、こんな感じで切れ味を増した魔剣については、白金貨数枚からとなってしまう。いや、オークション後になら…そう思って少し興奮してしまう。
解体の方もかなり楽だった。オーガの胸がゴリゴリと音をたてつつ簡単に切り裂くことができている。
今はその胸から取り出したのと同じサイズの魔石を、20個ほどに砕いた物を入れているが、まだ少し色が薄くなった程度だ。色がくすんだ白に成るまでは使えるようなので、まだ暫くは使えそうだ。
それからも順調に狩り進むことができた。
オーガは脇腹付近を突くようにして構えながら切り裂くことで、かなりの傷を負わすことができるようになり、効率が上がった。相変わらず外殻が削られること以外は特に問題はないだろう。
ハイオークの方は鉄槍で[突く]しかないのだが、それよりもクラウの[火炎]で丸焼きするのが効率が良かった。クラウも[火炎]がLv2になったようで威力が増している。
スネークの方も短剣でバスっと首を落とすことに成功し、スライムは剣に持ち替えた僕とリーゼであまり労せず魔石を叩いて狩ってゆく。素材がどんどん集まってゆくのですぐに元が取れそうだと思った。
夕方前には15階層を突破したため、今日は余裕を持った夕食となった。
16階層へと続く階段に息をはきながら座り込む。魔法の袋から宿で買っておいたサンドイッチを取り出し食べ始めた。
ここからまた新たな魔物が出てくる階層となる。
また難易度が上がるようだが、それよりも新たなスキルの習得ができることを考えると、不安よりも期待が強い。その事は2人も同じようで、次に出てくる魔物について考察している。
その日はここで野営となり、以前のように交代で休むこととなった。
先に休むことになった2人をチラチラと眺めながら、毛布にくるまり眠さを堪え明日のことをひとり考え、空想の世界へ旅立った。
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アレス クラス:大盗賊 Lv37
体力40 魔力40 外殻30
力27 硬4 速9 魔4
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Up [毒耐性/Lv3+2/毒に対し一定の耐性]
Up [毒棘/Lv3/毒棘を飛ばす]
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ニーナ
ローラの同僚で受付担当。黒髪の美人さん。少し目つきがキツイが心優しき22才。最近彼氏と別れ、現在彼氏募集中。
サーシャ
クールビレの冒険者ギルドの鑑定係。黒いローブに身を包んだ女の子。いつも眠そうにカウンターの後ろの方で椅子にもたれかかっている。
ハイグレード短剣[魔石補助付き]
魔石の欠片を嵌めつころで切れ味の上がる魔法の短剣。金貨30枚ではあるが、ドワーフ作の廉価版製品。魔石の欠片を嵌めることで切れ味を増す魔剣の一種。
嵌めこんだ魔石の色が空(くすんだ白)になると効果を失う。
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