17 2人とはずっと一緒に冒険したいんだから
冒険者ギルドを出た僕たちは、まだ夕食までは早いため軟膏などを補充するため薬屋へ行ったり、魔法のバッグを身に雑貨屋も覗いてみた。
今回は1人金貨10枚近くになった素材買取報酬。
さすがに魔法のバッグは金貨100枚、白金貨になってしまうので中々手が出ないと思ったが、上の階層で暫く狩れば一つぐらいなら届くかなとも思っている。とは言え欲しい装備もあるので高嶺の花だ。
「オークション後なら…魔法のバッグだって余裕で3つ買えますよね」
クラウの言葉にリーゼと一緒にうなずく。
やはり大容量の魔法のバッグなどは冒険者にとって憧れなのだ。
僕はもちろん実家に寄生してのほほんと暮らすつもりだったので、冒険者になる気は全くなかったが、それでも物語に出てくる伝説級のスキルや、聖剣や聖杖、魔法の盾に魔法のバッグなどは憧れの対象であった。
今は当面の間は冒険者として生きて行くしかないので、やはり手が届きそうな魔法のバッグに強い憧れを抱いてしまう。
「それよりも、アレスくんはあの魔石、本当にオークションに出してしまっても良かったのですか?」
「え?なんで?」
僕はクラウの言葉の意味が分からず聞き返す。
「だって、[回復]とか覚えたのですし…いずれは他の聖魔法も覚えることだってありそうですよ?」
急にクラウが近づき耳元でそう話してくるのでドキドキが止まらない。
他の人に聞こえないようにということは分かって入るから変な感じはしない。とは言え確かにそうだ。レアな素材なら自分用に取っておいても良いのだ。一応は僕が獲得した素材だし…
「いや、あれはこのパーティで獲得した素材だからね。今の僕にはその分の対価を2人に支払う資金は無いよ」
「対価なんてそんな、アレスはもうパーティの一員なんだから、強くなってくれるなら、そんな事を気にしなくても良いのでは?」
「そうだよ!それとも、アレスは強くなったら私たちを捨てて、他の人と組んじゃうつもりなの?」
クラウの言葉に嬉しくなるが、リーゼが腰に両手をあてプレッシャーをかけてくるので、慌てて否定する。
「そんなことないよ?僕は、できればだけど、2人とはずっと一緒に冒険したいんだから…それに、いずれあれはまた手に入れることができる。そんな気がするんだ」
僕の返事に急に黙った2人。
何やらモジモジしてるけど…
僕、そんな照れるような様な恥ずかしいセリフだったかな?でもまたここには戻ってくることもあるだろうし、白スライムだって狩れそうな気がするんだよね。
そんなこともありつつも、明日の準備を整えた僕たちは、景気づけに宿屋の食堂で一番高いワイバーンのステーキを注文してお腹を満たした。さすが金貨5枚の高級肉。
大変ではあるけれど、やっぱり冒険者って良いなと思ってしまう。
そしてまた3人一緒の部屋へと戻ると浴室で汗を流す。一晩だけではあったが迷宮内で夜を明かしたのもあって、暖かい湯船に心が和らいだ。
お風呂上がりの2人にドキドキしながらも、一度[回復]を使ってみようという話になった。3人とも怪我もなければ体力も満タンではあるが、消費魔力だけでも確認しておこうと思ってのことだ。
まずは自分の胸に手をあて使ってみる。
緑色の暖かい光が数秒輝き、そして消えた。
「消費魔力は10か…それなりに使うから連発はできないね」
「そうなんだ!じゃあ今度私!私に使ってみてよ!」
「えっ?」
リーゼの言葉に驚く。
「アレス、なんか気持ち良さそうな顔してた!」
「そうですね。確かに治癒の光は心地よいと言いますし、教会での治療なんてめったに受けれませんし…」
リーゼはワクワク顔。クラウはなぜか恥ずかしそうにしている。
まだ魔力は余裕があるし、寝れば全快になるから良いのかな?そう思って2人に[回復]を使うと、とても気持ちよさそうな顔をしていたので、ちょっと…いや、かなりドキドキしてしまった。
このドキドキは[回復]で治るかな?
そしてほどなく、僕たち3人は何事もなく寝る時間となり、柔らかいベッドに幸せを感じながら目を閉じるとすぐに意識が無くなり、気付けば朝日の眩しさで目を覚ました。
◆◇◆◇◆
翌朝からは11階層からの攻略を進めた。
11階層からは森と浅い沼と深い森エリアがある13階層ぐらいまではすんなりと進むことができた。
草原エリアにはオーガの他にハイオーク、沼地エリアにはブラッドスネークとデッドスライム。残りの森林エリアには4種全てが出現するのでなるべく草原エリアを進む様なルートをとった。
オーガより素早さはないが脂肪が多く、中々剣が刺さらない大柄な豚顔のハイオークは、リーゼの剣が致命傷にならないので苦労した。ほとんどが僕の[突く]で倒すことになった。
初討伐で何も出現しないという事もあり、素材も安い肉ということもあったので、なるべく狩らずに進める場合には逃げるようにして、効率を優先した。
もちろん倒せば魔石だけは頂くし、もしかしたら何度も倒せばスキル玉なんかが出る可能性もあるが…3人で話し合い、その可能性は今は捨てて先に急ぐことにした。
沼地が隣接した場所など遭遇したブラッドスネークは毒持ちで、ここでも[毒耐性]がある僕がなるべく対峙するようにしているが、魔力の関係で中々数を狩ることができず、結局リーゼも何度か毒を喰らいながらも倒していった。
2~3mの黒に黄色い斑模様の太い蛇が沼地から鎌首を上げ攻撃してくる光景は、精神背的にもくるものがある。
スキル玉は[毒耐性]だった。僕は毒にどんどん強くなっていくな…まあ上がると言うなら上げておけば、きっと狩り以外にも役に立つ時もくるだろう。
もう1種類、赤と紫が交じった色合いの大きなスライムであるデッドスライムは、沼からそろりと上がって近づいてくるので、見落とさないようにしながら沼地付近を進んでいたが、何度か急に触手のように伸ばした棘を伸ばしてくる。
それを必死でリーゼが叩き切っていた。
僕も剣に持ち替え応戦するが、一撃では触手すら立ちきれずその度に何度か傷を負った。[毒耐性]がなかったらもっと苦労したことを思えば上出来であろう。
リーゼに負けずに[疾風]で近づき剣で魔石を叩き落として倒してゆく。
スキル玉は[毒棘]であった。
試しに使うと、手の数cm先から紫っぽい棘が飛び、目の前の木に刺さった。消費魔力は2と少なく、多分毒を付与するのだろうが、あまり使い道がないかもしれない。
苦労しつつも階層を進み、素材を適度に集めて行く。
やっとの思いで13階層までたどり着いた。
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アレス クラス:大盗賊 Lv36
体力40 魔力11(40) 外殻30
力27 硬4 速9 魔4
スキル [突く/Lv4][疾風/Lv3+2][物理耐性/Lv2+1][臭気耐性/Lv3][剣術/Lv2][毒耐性/Lv3][カマイタチ/Lv1][回復/Lv1][睨む/Lv3+1][毒棘/Lv2]
――――――
Up [毒耐性/Lv3/毒に対し一定の耐性]
New [睨む/Lv3+1/恐怖を与える威圧の瞳]
New [毒棘/Lv2/毒棘を飛ばす]
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モレノの迷宮/11~15階層
森と浅い沼と深い森エリアがある。
草原エリアにはオーガの他にハイオーク、沼地エリアにはブラッドスネークとデッドスライム。残りの森林エリアには4種全てが出現。
オーガ
3m近い筋肉隆々の青い巨人で、布の服に各々が作成したと思われる石を切り出したような太い棍棒を持ってたりする。
固有スキルは[睨む]。消費魔力は1。力の能力玉も得ることができる。
素材は心臓部に魔石と角、睾丸部分。
ハイオーク
オークの上位種で素早さは無いが脂肪が多く中々剣が刺さらない大柄で豚顔。オークと違い肉がとっても不味い。
固有スキルは今のところなし。
素材は心臓部に魔石と睾丸部分。
ブラッドスネーク
毒持ちで2~3mの黒に黄色い斑模様の太い蛇。沼地から鎌首を上げ一気に噛みつき攻撃をしてくる。
固有スキルは[毒耐性]。消費魔力は無しのパッシブスキル。
素材は頭あら50cm付近も有る魔石と喉の毒袋。
デッドスライム
赤と紫が交じった色合いの大きなスライム。沼からそろりと上がって近づいてくる。触手のように伸ばした棘を伸ばしてくる。麻痺毒持ち。
固有スキルは[毒棘]。消費魔力は2。手の数cm先から紫っぽい毒の棘が飛ぶ。
素材は魔石のみ。
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