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[完結]侯爵家の三男だけど能力板には大盗賊って出ちゃいました。  作者: 安ころもっち
第二章 アレスと新たなパーティ

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14 リーゼ…ちょっと痛い、かな?

ひたすら斑蜘蛛の魔石を抜き取っている僕。


途中まだ死んでいなかったのか、短刀で背中を開いたとたんスキル玉がでて一瞬頬が緩みそうになった。だがさすがにこのタイミングで喜ぶ顔をみせれば怖いだろうと思って耐えた。

幸い目の前の光景にすぐに顔が苦痛に歪む。


「きゃ!」

「クラウ?」

そんな解体作業中の僕はクラウとリーゼの声に視線を向ける。


クラウの背後の木に斑蜘蛛がいたので、とっさに[疾風]を使うと、クラウと斑蜘蛛の間に体を入れつつ目の前の斑蜘蛛の胴に短刀を突き刺した。


非力な僕でも[疾風]を使えば斑蜘蛛であれば、それなりに刺さるようだ。再度体重をかけて短刀を突き刺すと、どうやら倒し切れたようだ。

そして急いで袋から毒消しを取り出しクラウに手渡すと、首筋にそれを押しつけてつぶし塗り込んでいった。もう大丈夫だろうけど暫くクラウも動けないかも。そう思って周りを警戒する。


警戒を強めていた最中、僕の視線の先に森の出口付近から走ってきている、ガタイの良い冒険者たちの姿を見つけた。


「なんだあれ?」

「アレス!後ろにウルフもいる!」


リーゼの声に目を凝らすと、冒険者が3人こちらに必死の形相で向かってきており、その後ろには迷宮ウルフが数えきれないほど迫って見えた。


「アレス、(なす)り付けかも…」

クラウが弱々しい声で絞り出した言葉に背筋が寒くなった。


「そんな…」

リーゼも弱々しい声を出すが、どうしたものか…一応魔力を確認すると、32まで回復している。だが[突く]だけでは厳しそうだ…


そして、鉄槍を3本取り出し身構えた僕たちの横を男たちがすり抜け…


「すまんなガキども!」

すれ違いざまにそう叫ばれたので、その場で男たちを突いてやろうかと思った。


「[火炎][火炎][火炎][火炎]…」

消え入りそうな声で4連発を放ったクラウ。真っ青な顔だが必死に魔法を使ってくれたのだろう。暫くは立ち上がれそうにはないことは理解した。


目の前の木々が燃え、迷宮ウルフたちの勢いが止まる。


「アレス!」

「えっ」

それを見ていた僕は、気付けばリーゼに突き飛ばされていた。


視界には上から降ってきた斑蜘蛛に噛まれるリーゼの姿が映った。

そのリーゼもすぐに腰の袋から毒消しを塗り込むと、ふらふらとした足取りながら斑蜘蛛を切り裂き、迷宮ウルフたちに向かって身構えている。


「アレス、大丈夫?」

「リーゼの方が大丈夫じゃないよ!なんであんな無茶を…」

ふらつくリーゼを見ながら歯を食いしばる。


「仲間だもん。防御が貧弱だって言ってたでしょ?だから私が守るのは当たりまえでしょ?」

「そうですよ…アレスこそ何言ってるんですか?」

リーゼの言葉に胸が苦しくなる。そしてクラウも同じように優しい声をかけてくる。僕から見たらどう見ても2人の方が重症じゃないか…


そうか、今までずっと線を引いていたけど…

2人とはまだ出会ってそんなに経っていないけど…

すでに2人は信頼できる、仲間…


信じても、いいよね?


「2人とも…今までごめんね」


僕は[カマイタチ]を3発。

減った魔力は魔力は15で残り17になったのを確認する。まだいけるな。初めて使った[カマイタチ]により迷宮ウルフがかなりの数に傷を負い、膝を折らせることに成功した。

充分戦意を喪失させることはできただろう。


僕は[疾風]を使おうとして思いとどまった。

そして全力で駆け、[カマイタチ]を迷宮ウルフが密集している3方に打ち込みんだ。


その攻撃によりさらに多くの迷宮ウルフを戦意喪失にし、残った個体と睨み合う。


数十秒の睨み合いの後、対峙していた迷宮ウルフたちは動けぬ個体を残して、左右に分かれ森に溶け込むように逃げて行った。

冷や汗を全身に感じながら、地べたに座り呼吸を整える。


危なかった。

あれで逃げてくれなきゃ後は剣を使って肉弾戦だ。

[剣術]はあるが正直2~3匹残っただけでもまともに立ち向かえる自信はない。精神的な疲労で暫く動けそうにないと思っていた僕の肩に、重みがかかったのはその時だった。


「アレス。説明、してくれるよね?」

「リ、リーゼ…ちょっと痛い、かな?」

キッと睨まれた。


僕は話した。


リーゼに促されて戻った僕は、2人に僕が魔物をスキルを得られることを自分の出自とともに話し、黙ってたことに謝罪した。経緯を知った2人はすぐに許してくれた。そしてリーゼに抱きしめられた。


とても柔らかかった。


クラウがこれからはなるべく僕が止めを刺すことを提案してくれたので、早速短刀で置いて行かれた迷宮ウルフたちに止めを刺しつつ解体していった。計30体。汗が全身に噴き出るほどの重労働であった。

1つだけ出現したスキル玉が唯一の救いだった。


そして一旦毒からの回復のために3人で開けた草原に戻る。辺りを警戒しつつも固まって座ると、話題はさっきの男たちの事へ移った。


「故意の(なす)り付けだもんね!ギルドに報告でいいよね!」

「そうですね!悪質ですし戻ったらすぐ報告しましょう!」

僕とクラウはまた思い出してつい語尾が強くなる。


「そういえば私知ってる。あれ『力の根源』とか言う痛い名前の奴等だったはず」

僕はリーゼの言葉に思わず噴き出した。


本当に痛いパーティ名だな。


「どんな卑怯な根源だよ…」

ため息をつきながらつぶやく。


(なす)り付ける力!」

「「ぶふっ」」

リーゼが立ち上がり僕に腰をするりとこすり付けるような動作をしたので2人で吹き出した。だめだ。本人たち見たら思い出して笑ってしまう自信がある。


「やめてよ。本人見たら笑っちゃうじゃない」

クラウもどうやら同じの様だ。


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Dランク冒険者パーティ『力の根源』

クールビレのモレノ迷宮を中心に小銭を稼ぐ万年ブロンズ級冒険者パーティ。10階層付近でウロウロしては危なくなったら階段へ逃げ込むか、周りに(なす)り付けるのでそろそろ冒険者ギルドを出禁になりそうな迷惑パーティ。


トンデマス

リーダーで戦士クラス。大剣使いで力はそれなり。ゴツイ体で上裸に軽鎧。金髪で薄い頭がもじゃってる。酒癖が悪くギルドの食堂で飲みすぎてはギルマスに殴られる。


チンダルク

こちらも戦士クラス。ハンマーを使ってひたすら叩く。中肉中背で茶髪。左側が少し長めの気持ち悪いシンメトリが自慢。スタミナ自慢でいざとなったらタンク役もこなす。


カンジバルク

盗賊クラス。[風の恵み]という仲間の速度アップできるレアスキル持ち。2人にくっついて新人冒険者に絡むことも多い。たまに返り討ちにされる。

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