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[完結]侯爵家の三男だけど能力板には大盗賊って出ちゃいました。  作者: 安ころもっち
第10章 アレス、里帰りしてみる。

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118 足が止まってるわ!根性見せなさい!

ウイクエンドの魔物暴走(スタンピード)が報告された帝都の中央ギルドでは、数組のAクラスパーティが緊急招集され、ギルドの手配した大型の荷馬車に乗り込み出発するところであった。


「ウイクエンド領の迷宮なら、20階層程度なら余裕だったよな」

「ああ。だが小さな魔石ばっかりでうま味はなかったからな。放置されて魔物暴走(スタンピード)っていうのもうなずける」

「その奥だとちょっと本気狩りしなくちゃならないしね。でもそれだと大赤字になっちゃうから、こんな時にしか行く場所ではないわね」


ザックたちAランク冒険者パーティ『風の旅団』の3人が話すことは事実だ。

正直Aランクであれば30階層ぐらいまでは何とかなりそうではあるが、正直そこから先は危険が伴ってくる。それなのに素材は小さな魔石ばかり。とても冒険者としてはやっていけないだろう。


今回は緊急招集として5組のAクラス冒険者たちが集められた。


報酬はパーティごとに白金貨50枚。

Aランク冒険者達にとっては決して高くはないが、魔物暴走(スタンピード)の対処に赴くことは冒険者としての知名度も上がるというもの。それぞれが適度に事態を治めれば良い。


他の領からも応援がくるだろう。それまで現地の兵士たちと持ちこたえ、最終的に多数の冒険者と一緒に物量で異界のボスを倒せばよいだけだ。

ほとんどの者がそんな思いで現場を訪れるのだ。


◆◇◆◇◆


「まだか!まだ応援はこんのか!」

あれから24時間はたっただろうか?


兵士とともに仮眠をとりつつ迷宮から溢れ出てくる魔物達をなんとか倒し続けている。嘗ては剣鬼と言われた俺も衰えた体に鞭を打って耐えていた。


本来であれば目の前の魔物を屠ることは簡単であったはずだ。だが自堕落な生活と加齢により能力値は大幅に下がっている。一種の状態異常のようなものでここ最近の生活により全盛期の半分程度までは回復していた。


だがそれでも体が悲鳴を上げ、自分でもそろそろ限界が近いと感じる。


「ラルフ!足が止まってるわ!根性見せなさい!」

そう言いながら愛妻であるカルシュが魔術師の魂という21階層より上の階層の魔物の群れを自慢の[雷撃]で焼き尽くしている。


愛妻が頑張っているのだ、ここで踏ん張り耐え凌がなければならない。

耐え凌がねば……きっとサルシュの説教が待っているだろう。


疲れた体を恐怖で奮い立たせ、愛剣をかまえ迫りくる魔物に叩きつけていった。


「あれはなんだ!」

そんな中、兵士のひとりがそう叫ぶ。


「助けが来たのか?」

「そうじゃないか?そうにきまってる!」

その指差した先の上空には丸い飛行物体が存在していた。


助けが来た?あれに人が乗ってたりするのか?新型の魔物じゃないのか?困惑する俺は、視線をひとまず目の前の魔物に戻し、集中することに専念した。


「おーい!こっちだー!」

「助けてくれー!」

兵士たちが叫んでいる。そして歓声まであがっている。気になる……気になるが、よそ見をしてたら目の前の包帯ぐるぐるの魔物に食い殺されそうだ。


そのかなり怖い見た目の魔物が目の前に迫ってくる。その恐怖に何かが漏れてしまいそうになってしまうが、侯爵としての沽券にかかわると股間に力を入れる。

その瞬間、足がもつれふらついた。


目の前には薄汚れた包帯まみれの魔物。それに頭からダイブしそうになった俺は、恐怖のあまり目をギュッと閉じる。次の瞬間、誰かの手により肩をささえられ態勢を整えることができた。


「誰かは知らんが助かった。礼を言うぞ!」

そう言って目を開く。


目の前には1人の背の小さな冒険者の背中が見えた。そしてすでに周囲の魔物が肉片へと変えられていたことも確認できた。

すごい!凄腕の冒険者だろう。ドワーフかホビットか?いや、どうでも良い!この者なら、我が領土を救う救世主と成りうるだろう。


そう思って声をかける。


「素晴らし力だ!我が領土の専属騎士としてやろう!俺の為に尽くすが良い!」


俺の言葉に反応し、その冒険者はこちらを向いた。


◆◇◆◇◆


スカイシップ・アニー号でベイシ村からウイクエンド領にある迷宮へと急ぐ。

すでに最初の知らせから、かなり時間が経っているようだ。


父上はともかく、母上が心配だ。

もちろんユリアたちとの思い出の場所がたくさんある生まれ故郷だ。そんな場所をめちゃくちゃにされたく無いのは当然であろう。


「兄ぃ…ママは大丈夫かな?」

「ユリア……」

操縦席から不安そうな顔を向けるユリアを優しく撫で、「大丈夫だよきっと…」と根拠のない願望を口にする。


「でも、魔物暴走(スタンピード)の兆候などなかったのでしょうか?」

「兆候?」

「はい。通常なら魔物暴走(スタンピード)の前には徐々に魔物の動きに変化があったりすると聞きます。ギルドから何か聞いてないでしょうか?」

クラウの言葉になんとなく魔物暴走(スタンピード)について思い出す。たしかに何かしらの変調があるって聞いたことがある。


「ギルドも今回は全然把握してなかったみたいだよ。でも過去にそう言う突然起こる魔物暴走(スタンピード)の事例が無かったわけじゃないから、って言ってた」

ユリアがギルドから受けた連絡について補足する。


とにかく到着したらすぐに魔物を一掃しなくては…

そう思って準備を整えた。


流石のアニー号。1時間程度で現場へと到着し、その光景に震えがくる。

すでに何百と魔物たちが溢れている。


周りの兵士も

兵士の居ない場所へと着陸する。


「あれは…」

視界に母上と父上の姿が見えた。


そして父上が必死に目の前の魔物と戦っている。


「父上……少しやせた?」

そう思いつつ他のみんなに助力を任せ、苦戦している様子の父上の元へと駆け付ける。


父上が体勢を崩したのを見て[疾風]で近づき、[結界]で魔物を弾き飛ばした後、[不可視の風]で薙ぎ払う。この程度の魔物なら一発で十分であった。有効範囲上の魔物がすべて肉片と化していた。


「素晴らし力だ!我が領土の専属騎士としてやろう!俺の為に尽くすが良い!」


背後からの声を聞き、呆れたように振り返えった。


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魔物暴走(スタンピード)について

未攻略の異界については常に魔物暴走(スタンピード)の危険性がある。そうならないために適度な間引きを行う必要がある。魔物暴走(スタンピード)の前兆として、魔物の数が増えたり階層を跨いで移動しようとしたりする行動が見える。一度魔物暴走(スタンピード)が起こると、上層から入り口を目指して次々に魔物たちが階層を降りてくる。

最後には貯まった魔素により強化された異界のボス部屋の魔物が出てくることで、近隣の街に大きな被害を出すことになる。そのボスを倒すことで魔物暴走(スタンピード)は治まるので、ボスが異界を出る前に見つけ、倒し切ることが求められる。

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