11 鉄槍くーださい
街へ戻ると解体所に大量のオーク肉などを吐き出した。
解体所に11匹分のオーク肉などを出すと、リーゼとクラウの2人と解体所のいつものおじさんが驚いていた。特に一番大きなオークはハイオークに進化一歩手前では?と言われてビビった。
そしてローラさんの元に戻り、また驚かれる。
気分の良いまま2人とパーティを組むことを伝えると、さらも喜んでくれた。僕がいつまでもソロだったので心配してたのかもしれない。
二度目のリンク機能。
僕は今回のオークの納入によりEランクでアイアン級の金属っぽくなった冒険者カードを出して2人とリンク登録するが、どうしても顔がにやけてしまう。アイアン級…カッコ良すぎる!
「じゃあ、私たちは実家から通ってるから」
「明日も朝から森に行きたいですけど、良いですか?」
「ああ、いいよ。明日もよろしくね」
そうしてギルドを出ると、武器屋へ寄った。
今回は金貨が8枚以上になった。一応あの薬屋さんで軟膏も買っておこう。鉄槍も予備の槍は多い方が良いな。あの時も槍が3本あれば一人で片付けられたのだから…
そう思って武器屋に入り、カウンターで惚けていたおじさんに向かって言うのだ。
「鉄槍くーださい」
◆◇◆◇◆
「いつもありがとうございます」
私はおばさんにそう言って二階へと上がってゆく。
リーゼの実家、宿屋の二階にあるリーゼの部屋へ、おばさんの作ってもらった夕食をもって上がる。お土産には家の地酒を1本持ってきたのでいつもの様におじさんは喜んでいたが、多分今日も食堂で使われそうだ。
今日もそれなりに混雑してたし…
「で、リーゼはどう思う?」
「どうって?」
夕食を食べながらリーゼにそう話を切り出したが、やはりリーゼは分かっていないようだ。まあこういう部分では全く期待はしていなかったけど。
「アレスのこと」
「ああ、可愛いよね。同い年だけど弟みたいかな?」
予想通りの返答ではあった。そしてスプーンを咥えながら首をかしげるその仕草が相変わらずクソ可愛い。
「そうじゃなくて、盗賊クラスって言ってたけど普通は[偵察]とか[隠密]とか、後は[短刀術]なんかを覚えるんじゃないの?」
「そうなの?でも短刀は使ってたよ?解体も上手だったし」
「確かに解体は上手だった。でも短刀術ってそう言うのじゃないよね。だから私、本当はアレスって盗賊クラスじゃないんじゃないかって思った」
「ほー」
そう言いながらもリーゼはチャーハンをがっついている。頬がハムスターのように膨らんで可愛い。
「でも助けてくれたんだから、良い子じゃない?」
「それは、そうだけど」
確かにそうだ。それにクラスを偽る冒険者は良くいると聞いたことがある。自分を守るためだったり、他の人を欺くためだったり…
「なんにせよ、一緒に戦ってればそのうち分かるんじゃない?まだうちらが信頼されてないだけかもだし」
「そう、かな?でも一応気を付けててよ。アレスって、チラチラリーゼの胸見てたから」
「うっごふっごほっ」
急にむせこんだリーゼの背中を摩る。
「リーゼは大きいから、狙われてるかも」
「そ、それは…無いんじゃない?子供だよ?」
「同い年だよ。それに男は森ウルフみたいなもの。獲物があったら襲い掛かってくるに決まってる」
「クラウ…変な本の見すぎじゃない?」
そうなのかな?でもガードの甘いリーゼは私が守らなきゃだし、用心することに越したことはない。アレスが変なことしようと思ったら、私の[火炎]で丸焦げにしてやる。
「でもクラウがそう言うなら一応気を付けるから。でも明日から楽しみなのは変わらないよ?」
「そうだね。前衛が1人増えれば楽になる。それにアレスは多分私たちより強いよ」
「私もそれは思った!あの固くてでっかいオークを一撃だもんね。その後びゅーんってこっち来たし」
確かに私たちでは傷がつけられなかったオーク。ハイオークの一歩手前って言ってたからどう考えても格上だ。
「オークは不意打ちだったけどね。でもその後のは[疾風]って言ってたやつ。あんなスキルをリーゼが覚えたら凄そうだね。羨ましいよね」
「まじそれー」
そんなことを言いながら、食事を終え2人でお風呂を借りてから家へと戻った。明日はアレスと一緒。多少の不安はあるが私もそこまで警戒はしていない。多分良い子なんだろうと思うけど…油断は禁物だ。
私はいつものように彼是と考えながら布団に潜り込んだ。
◆◇◆◇◆
予想以上に早く起きてしまった。
ワクワクしすぎだろ。と自分の事ながら呆れてしまう。
僕は落ち着かせるためゆっくりと朝食を取った。
気付けば半分寝てたことに気付き、急いで目の前のご飯を掻き込み冒険者ギルドへ早足で向かった。
「おはよう!ごめんね。のんびりしすぎたみたい」
「おはようアレス。私たちも今来たところー」
「おはようございますアレスくん」
ギルドのエントランスの椅子に座って待っていた2人に挨拶しながら謝っておいた。リーゼは相変わらずフランクだけどクラウはまだ固い。
「あ、クラウも、アレスでいいよ?」
「そ、そうですか。ではアレス。今日はどうします?」
どうするとは?まさか一緒に行くのはやっぱり止めようと言うのでは…
「森に行くんじゃないの?」
リーゼも首をかしげているので言葉の意味は分かって無いようだ。
「いえ、せっかく3人パーティになったので、迷宮に行ってはどうかと思って…」
「ああ、迷宮ね。いいかも!」
「迷宮!行こう!」
確かにあの森の手前にはモレノ迷宮がある。
ザックさんたちとも何度も入ったあの迷宮。あの迷宮なら魔物もゴブリンやスライムも出るし、風巻栗鼠や迷宮ウルフだって出る。ブラッドスネークや斑蜘蛛といった毒持ちもいるけど、森とはまた違った魔物が多く出てくる。
新しい魔物なら初回特典でスキルも増える。
なぜ今まで気付かなかったのか…
そうだ、迷宮は隠れる場所が少ないから、一人では厳しかったからだった。長く森に入り浸っていたから忘れていたことを思い出す。とは言え今日からは3人だ。
「よし!行ってみようよ!」
「じゃあ、迷宮で決まりということで…」
「いざ迷宮ー!」
こうして、僕たちの迷宮探索が始まった。
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モレノ迷宮
クールビレの東に2km、その奥にはモレノの森が広がる。クールビレ領にある唯一の迷宮。迷宮自体の見た目は2階建て程度の作りに見えるが、入り口をくぐると見た目以上の空間が広がっている。上へと伸びて行く階段を探しては階層を登ってゆく。最奥は20階層で攻略済みのため、魔物は比較的緩やかに湧いているようだし、魔物暴走は起きない。
主な魔物はゴブリン、スライム、オーク、風巻栗鼠、迷宮ウルフ、オーガ、ブラッドスネーク、斑蜘蛛、岩蜥蜴 etc
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