7.雪
雪に焦点を当てたお話を3話連続で投稿いたします。
今日は、土曜日。本当だったら雪は休みのはずだった。
それなのに、朝早くに本部からの連絡でたたき起こされて、魔物の駆除に駆り出される羽目になるとは。
時計は朝5:30を指している。
せめて朝ご飯くらいは食べさせてほしかった。
本当に人使いが荒い組織だ。
洗面台の蛇口をひねる。
ジャー……。
流れ出る水を手ですくう。
「冷た……。」
思わずそう呟いた。
しばらく待っていればもちろんお湯が出てくるが、それを待っている時間さえ惜しかった。
10分で準備しろ、本部そう言われたからだ。
雪は魔法界ではかなりの実力を持った退魔師だ。
その実力は、魔法界に3人しか存在しない殿堂級と呼ばれる階級に分類されている。
そのため、雪は魔物の駆除要請に日夜追われていた。
それにしても……と、雪は顔を上げる。
目の前には鏡に映った自分の姿。
背中の中頃まで伸びた黒色の髪を無造作にヘアクリップで留め、部屋着を着崩した色白の少女と目が合う。
整った顔立ちであるからこそ、自分のクマがより一層浮いて見えた。
本部と呼ばれる退魔師たちを統率する「司令部」。
人員不足が大きな課題となっている退魔師と、それと比較して年々増加し続ける魔物。
その穴を埋めるためにも本部からの要請が増えることは、まぁ、まぁ許容できなくもない。
でも、それにしても、さすがに働かせすぎなのでは……。
はぁ……。
思わずため息が口をついて出る。
いや、さすがに私にも人権はある。
人間界にいたら労働基準法とやらで訴えられるぞ。
雪自身、お給料がたんまり貰えるから文句も程々に出動してはいるものの……。
お金たまったら、こんなところ絶対にやめてやる。
冷水を浴びながら、そう心に誓うのだった。