6.処理班
「処理班」と雪が言っていた人たちが到着するまでには1分もかからなかったと思う。
体感だが、雪が消えてから30秒くらいたったころだった。
「ささきりょうたさーん。どこですかー?」
その声に涼太ははっとあたりを見回した。
すると、奥の茂みから、ガサゴソと草を掻き分ける音が聞こえる。
「はい。ここ、ここです。」
涼太はそう言いながら大きく手を上下に振った。
すると、上下黒の服に身を包んだ小太りとやせ型の男2人と髪を後ろで1つにまとめた女1人の合わせて3人が涼太の視界に入ってきた。
そのうちの1人、小太りの男はきょろきょろとあたりを見回し、涼太の姿を見つけるが否や「いた!」とこちらの方へ駆け寄ってくる。
あとの二人もそれに続いた。
男は、近くまで来ると、涼太に目線を合わせるようにかがんで、ずいっと顔を近づけた。
「佐々木涼太さん、で間違いないですね。」
「え、あ、はい……。」
涼太はその圧に気圧されながらそう答えた。
「どうも、こんばんは。処理班です。涼太さんを保護しに来ました。」
奥の方では、若い女性が先ほどの雪の時と同様に、耳に手を当てて今着きました、と何者かと連絡を取っている。
「報告のとおりだ。足のけがは雪さんが応急処置してくれている。」
小太りの男の後ろから涼太をのぞき込んだやせ型の男は、そう言いながら涼太の足へと目を落とした。
「え……。手当って、俺何もされていませんけど……。」
そう言いながら、涼太も自分の足へと目を向けた。
確かに、言われてみると足の痛みがない。
さっきから痛みを感じないと思ってはいたが、それは「魔法」という非現実的な言葉に我を忘れていたからだと思っていた。
「いや、雪さんはね、相手に触れることなく痛みや出血を止める能力を持っているんだ。とはいえ応急処置に過ぎないからちゃんと人間の病院に行って診てもらうように。」
穏やかな口調でそう説明する男。
涼太が気づかぬうちに、雪は彼に魔法を使っていた。
「魔法ってすごい……。」
思わずそんな言葉が口をついて出た。
しかし、痛みは感じないが足に力が入らない。
「あの、足に力が入らなくて……。」
涼太がそう言うと、やせ型の男が涼太のそばによって来て足に手をかざす。
「んー。これは足首をひねったのかも。」
そう言いながら涼太の足を持った状態で足先を軽く動かした。
痛い?
そう聞かれて涼太は首を横に振る。
「痛みだけ取ったみたいだね。とりあえずコテージまでは僕が負ぶっていくから治るまでは安静にしているように。」
コテージ。
そうだった。
いろいろありすぎて忘れていたが、コテージへの帰り道が分からなくなっていたのだった。
「あの、俺、道に迷って……。」
不安そうにそう言う涼太に奥で誰かと連絡を取っていた女が大丈夫ですよ、と振り返る。
「涼太さんのコテージの場所が分かりました。今から向かいましょう。」