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雪の華  作者: おもち
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2.出会い

 あの化け物は……。

 視線を巡らす……までもなく、男の眼前で宙に浮いた状態で静止していた。

 まるで、鮭にとびかかるヒグマのような体勢だ。

 

 そこだけ時が止まったような気がした。

 

 うご……けないのか。


 よく見ると、化け物は体全体が薄い氷のようなもので覆われていた。

 さっきまで黒光りしていた皮膚は、きらきらと月明かりに反射している。

 

 おかしい。

 さっきまで俺を襲おうとしていた化け物が……。

 いったいどうして……。


 とっさにあたりを見まわす。

 

 視界の端に、一人の少女の姿が映った。

 白いワンピースに黒く長い髪。

 背丈は、150センチといったところか。


 男ははっとした。

 なんでこんなところに子供が!


 そんなことはどうでもいい。

 今は彼女を安全な場所に移動させる方が先だ。

 理由はわからないが、化け物は今氷漬けになっている。

 避難するなら、今しかない。

 

 「そこの君!」

 危ないから離れて……!

 そう言って、少女の元へ駆け寄ろうと痛みでいうことを聞かない足に力を込めた。


 そのとき、少女が宙へと高く舞い上がった。


 と、とんだ……。

 

 え……。

 かすれた声が口をついて出る。

 あまりのことに、開いた口が塞がらなかった。


 空にはまん丸な月が浮かんでいる。


 少女の姿が月と重なる。


 針葉樹よりもの高いであろうその場所から、少女はひゅるひゅると化け物の鼻先に落ちて行った。

 

 このまま落ちていったら、地面とごっつんこだ。

 何とか彼女を受け止めないと。

 その思いとは裏腹に、足に力が入らない。

 先ほど無理に足を動かそうとしたからだろうか。


 早く、早く立ち上がらないと。

 早くあの子を受け止めないと。

 死んじゃ……。

 

 そう思ったのも束の間、少女の瞳が、青く光った……。かと思うと化け物は粉々に砕け散っていた。

 

 少女の纏った白い布がみるみる赤黒く染まっていく。

 化け物の体を覆っていたであろう薄氷が、ダイヤモンドのようにきらきらと宙を舞った。


「倒したのか……。あの化け物を、あんな子供が……。」

 信じられない……。


 少女はゆるゆると地面に降りた。

 

 なんだ。ちゃんと減速できるのか。

 さっきまでの俺の心配は何だったんだ。


 地面に降り立った彼女が、ふわりと男の方を向く。


 その瞳は透き通った青色だった――。

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