8,新たな出会い
今回短めです(_ _*)
私に話しかけているのかどうか分からず、周りを見渡してみるも、特に近くに人はいない。
「……私ですか?」
「そうそう君だ。綺麗な人だから、こういったことには詳しいかと思って」
「ありがとうございます」
褒められて少し嬉しくなった私は、喜んで相談にのることにした。
「実はもうすぐ妹の誕生日だから、イヤリングを買おうと思ってここへ来たんだけれど……どうしても1つに絞ることができなくて」
彼の後ろにいる店員さんも、トレイに2つのイヤリングをのせ、困った顔をして立っている。
「妹さんは普段どのようなものをつけているんですか?」
「うーん……普段はシンプルなデザインのものが多いかな」
トレイに載っているイヤリングは、どちらもシンプルなデザインだ。
違いは色と、付けた時に揺れるかどうか。
「そうですね……私だったら、普段自分で買わないデザインを貰えたら嬉しいです。でもあまりに好みと違いすぎると、少し付けにくいかもしれませんね……だからシンプルなのはいいと思います。この2つだったらどちらを付けているイメージがありますか?」
彼は黙って、ピンクのパールが可愛い、耳元でしっかり固定されるタイプのイヤリングを指さす。
「それなら、こちらの揺れる方にしたらどうですか? この位なら、普段揺れるイヤリングを付けない人でもあまりに気にならないでしょうし」
「……確かに」
「それに、大好きな人から貰える、お兄さんから貰えるプレゼントなら、なんだって喜んでくれると思いますよ?」
私だって大好きな人から貰えるものなら、なんでも嬉しい。
……蛇の抜け殻は嫌だけど。
私の言葉に彼は安心したような顔をした。
「そうだね……ありがとう。それじゃあこれにするよ」
良かった。
ちゃんとアドバイス出来たみたい。
店員さんもホッとした顔でイヤリングを包んでいる間、彼は改めて私に話しかけてきた。
「本当にありがとう。良かったら、名前を教えてもらってもいいかな?」
「イェレナ・ラングドンと言います」
「僕はアラン・ウィルソン。ラングドン……聞いたことがないな。なんだかいい所のお嬢さんに見えるんだけど」
「私、今留学でこちらに来ているんです。それに、まだ来たばかりで」
「なるほど! だからこんなに可愛い女の子が1人で歩いているのか……ねぇ、良かったらなんだけど、お礼もしたいし、僕にこの街を案内させてくれない?」
彼はそっと私の手を取り、その手にキスをする。
……どうしよう。
今までこんな風に誘われたことなんて、舞踏会ですらなかったから、どうすればいいのか全く分からない。
でも、ここへ来た目的は新しい世界を見るため、そしてあわよくばこっちで良い人を見つけるため。
それなら、これはきっと絶好のチャンスだ。
「是非、案内してもらいたいです!」
「任せて! あと、もっとフランクに話そう?」
「わかったわ」
店員さんがアランの従者にプレゼントを渡すと、彼は私の手を取り外へ出る。
「あら? そういえば……」
私と一緒にいたはずのメイドの姿が見当たらない。
確かにお店の中まで一緒にいたはずなのに……?
私がキョロキョロと辺りを見渡していると、突然隣から彼女が現れた。
「すみません、少し席を外していました」
「大丈夫よ。気にしないで」
「それで……えっと?」
彼女は私の顔を見て、彼の顔を見て、最後に繋がれた私達の手を見る。
「彼に案内してもらうことになったの」
私がにっこり笑うと、何故か彼女はぎこちない笑みを浮かべた。
しかし、何も言わずにそのまま後ろに下がったので、問題ないということだろう。
「さて、そうだな……まずはこの街のシンボルでもある図書館に行こうか」
「シンボル?」
「あぁ、全ての大通りは中心の図書館に繋がっているんだ」
「なんだか素敵ね」
そんな話をしながら、私達は街を歩き出したのだった。
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