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6,決意を新たに

前半は姉妹作品、『何回告白してもダメだったので諦めたら、何故か彼が追いかけて来ました』と同じシーンをイェレナ目線で取り扱っています。

また後半は、ニック視点です!

お茶会で助けられた後、私は踏ん切りをつけようと思って最後の手紙を書いた。

これでニックに告白をするのはおしまいにしようと思ったのだ。


……その手紙の返事もやはりいつも通りだったけれど。

でも、直接会うよりも手紙だと優しい彼のことが、やっぱり好きになってしまいそうになる。


ダメダメ! こんな無謀な恋愛はあきらめるってこの間決めたんだから!


これではずるずる引きずってしまいそうな気がしたので、いっそのこと、『ニックのことは諦める』とマリーに宣言してみることにした。

よく、『好き』と自分の口で言うと、本当に好きになってしまうという話を耳にするが、それが本当なら逆だって可能なはずだ。


私は、マリーと第二王子フレドリック様の恋愛話を聞きがてら、彼女を家に招くことにした。


◇◇◇


「いくらその子が、自分の狙っていた侯爵令息に気に入られているからって、いじめは良くないと私は思ったのよ」


「そうね、それならその子をいじめるんじゃなくて、自分も侯爵令息に気に入ってもらえるように頑張るべきだわ」


マリーを招いたものの、いざ『諦める』と宣言するのがなんだか怖くて、私はとりあえずこの間のお茶会の話をしていた。

正義感の強い彼女は予想通り、私の意見に共感してくれる。


「マリーもそう思うわよね! それで私、そんなの見ていられないから、その例の侯爵令息が舞踏会に参加している時に、こっそり教えたわけよ。『あの子、いじめられているから、力になってあげてください』って」


「流石イェレナね。確かに、直接いじめをしている令嬢達に文句を言いに行くよりも合理的だわ」


「でも、一つ誤算があって……例の令嬢達の内の一人が、私が侯爵令息に告げ口をしたところ、見ていたのよ」


「……そうすると?」


彼女は人づきあいが苦手で、普段は家にこもって本を読んでいるため、なかなか人間関係の機微に疎い。

……だからフレドリック様もマリーを落とすのに苦労しているんだろうけれど。

でも、それがマリーのいいところなのよね……


私はそんなことを考えながら、話を続けた。


「今度は私が、この前のお茶会で裏に呼び出されて、紅茶をかけられそうになったって訳」


「大丈夫だったの!?」


私のことを心配してか、持っているカップをぎゅっと握りしめるマリーを見て、私はいい友達を持ったなと再確認した。

それでうれしくなってしまった私は、思わずいつもの恋バナのテンションで話し出してしまう。


「それがね……なんと、ニックが助けに来てくれたの!」


「よくイェレナが裏に呼び出されていること、気がついてくれたわね」


「たまたまだとは言っていたけれど……もう、顔に留まらず性格までイケメンなんだから!」


その時のことを思い出して胸が高鳴っていた私だったけれど、マリーの次の一言で今日の目的を思い出した。


「それで、何か進展はあったの?」


そうだった。

私は『ニックのことを諦める』って宣言しに来たんじゃない!


「助けて貰った後にお礼を言ったところまでは、まぁ、良かったとは思うの……でも、その後色々あって……」


「手紙はまだ送っているの?」


「まぁ……返事は同じだけれどね」


最後に送った手紙は二か月前。

今月はまだ……いや、もう送るつもりはない。


私は長い溜息をつき、テーブルに突っ伏した。

だが、顔だけはマリーの方に向けて話を続ける。


……そう、言うんだ。



「私、二ヶ月後に隣国に行こうかと思うの」


私が出した結論はこれ。

隣国に行って、一度他の世界も見てみること。


「……え、失恋旅行!? あ、隣国の貴族に求婚されたから嫁ぐ……とか?」


私の突然のカミングアウトに驚いて、そして唇をかみしめているマリーを見て、私は軽く笑った。


「悲しそうな顔をしてくれてありがとうね。確かにそんな話もあるけれど……今回隣国に行くのは短期留学としてよ。すぐ帰ってくるわ」


実を言えば、その貴族の方からの求婚は三か月前に断ってしまったのだけれど……

でも、向こうで結婚相手を見つけるのもいいのかもしれない。

なんて今は思っている。


「……なんだ、良かった」


マリーは安心したようにため息をついた。

そして、私はようやくマリーに『諦める』という事実を伝える。


「でも、一旦ニックのことは諦めて、もう少し外の世界も見て来ようと思うの。それでもまだ彼のことが好きなら、それはその時に考えるわ……」


少しごまかした言い方にはなってしまったけれど。

口にしたことで、決意は固くなった。


マリーは何を言おうか口を数回動かした後、眉を下げて私に笑いかけた。


「絶対にこっちへ帰ってきて頂戴ね。私、友達と呼べる友達、二人しかいないんだから」


心の中で『ありがとう』と思いながら、私はどうしてもとある言葉が気になってしまった。

自分の決意を伝えることは出来たし、私はマリーと第二王子の恋バナへシフトチェンジする。


「二人? 私と……まさか、フレドリック王子のこと?」


「えぇ、そうだけれど」


「マリーったら、まだフレドリック様のこと、友人だと思っているわけ?」


「えぇ、そうだけど……何かおかしいかしら?」


そこからは私が、可哀そうな第二王子のためにマリーに恋心を教えたのだった。


◇◇◇


「それで、イェレナは隣国に行くのか?」


「はい、来月の十日に出発予定とのことです」


「ふーん……」


今月はイェレナからの手紙はまだ届いていない。

いつもなら月初に届くのにもかかわらず。


「ありがとう、下がってくれ」


「かしこまりました」


一人になった部屋で、俺はそっとイェレナの姿絵を取り出す。


「あわよくば、俺の内面まで好きになってほしい……なんて考えていたのが間違いだったのか」


小さいころに参加したお茶会で、俺は天使のようなイェレナの見た目と性格に一目ぼれをした。

二人でドーナツを分け合って、その時は彼女も俺のことを好きになってくれたと思った。


だがしかし……


『こんなにイケメンな人と話せてうれしかったわ、また会いましょう!』


『何十回言ったと思ってるの? ニックほどのイケメンは居ないからよ!』


『ねぇ、やっぱりニック程のイケメンは何処を探してもいないわ』


イェレナが興味があるのは、好きなのは、俺の見た目だけだった。


最近は外見を理由に告白されるのが辛くて、冷たい態度をとってしまっていたが……まさか、彼女が俺のことを諦めるだなんて。


「……そんなの、絶対に許さない」


彼女が他の人のものになるくらいなら、外見だけを理由に好きになったとしてもいい。

そして、もし俺のことがもう好きではなくなったというなら……


それももう関係ない。

俺のものにするまでだ。


こうして俺は一か月後に隣国に旅立つ準備を始めた。

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